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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第45話:その剣士は愛を叫ぶ。~二人旅の約束と老練な信頼~

【前回までのあらすじ】

 孤立したオウカの里は陥落したが、主戦場の湖では「雷のおり」作戦が成功し、敵本隊に甚大な被害を与えた。


 決戦の直前、ロイの純粋な言葉で結束を固めた四天王たち。


 そして、断腸の思いでオウカへの救援を断念し、サムライの死を無駄にしないと誓ったスーリンディア。


 それぞれの覚悟が決まり、ついに覇王アンドレアから「全軍突撃」の号令が下された。

 白亜の巨塔の北。

 魔法剣士部隊を率いる隊長のサイロスは、副官であるシルフと共に、覇王の合図を待っていた。

 だが、サイロスの顔色は蒼白だった。剣を持つ手が微かに震えている。


「……私のせいだ」

 誰に言うでもなく、サイロスが呟いた。


「え? 今、なんて言ったの?」

 隣にいたシルフが聞き返す。


 サイロスは、すがるような目でシルフを見た。

「第一次防衛ラインとオウカのサムライたちの武器へのエンチャントが……間に合わなかったから、こんなことに……」


「何言ってるのよ」

 シルフは驚いてサイロスの手を取った。

「ここにいるみんなで、寝る間も惜しんで精一杯準備したじゃない。限られた時間でよくやったと思うよ」


「違う! 隊長である私がもっと上手に指示できていれば……! もっと効率よく魔力を配分できていれば……!」

 サイロスは自分を責め続ける。

「武器が通用しなかったから、第一次防衛ラインは突破された。オウカだって……私がみんなを殺したも同然だ!」


 責任感の強い彼らしい苦悩だった。

 シルフは、震えるサイロスをそっと抱きしめた。

「サイロスのせいじゃないってば」

「し、シルフ殿……?」


「突破されたのは、敵が予想外に進化してたからだよ。まさか、こんな数日で進化するなんて、誰も思わないよ。誰のせいでもない」


 シルフの体温と、優しい声がサイロスの心を溶かしていく。

「……エンチャントのせいでは、ない?」


「そう、エンチャントのせいじゃない。貴方は十分にやったわ」

 シルフはサイロスの顔を覗き込み、微笑んだ。

「それに……全てが終わったら、二人で旅に出ようって約束したでしょ? 忘れた?」


「……覚えています」

「楽しみにしているんだから。絶対に勝とうよ、この戦い」


 サイロスは涙を拭い、シルフの肩を抱き寄せた。

「……シルフ」

「なに?」


「絶対に死なないって、約束して」

「だったら私を死なせないように、絶対に私を守るって約束して」


「分かった。命に代えても、必ず」

「ちょっと! 貴方が死ぬのはダメよ。二人で生き残るの」


「……分かりました。二人で、生き残りましょう」

 二人の抱擁は、戦場の喧騒を一瞬忘れさせるほど温かかった。


 そして――覇王からの通信が鳴り響く。

『総員、突撃ッ!!』


 サイロスはシルフから離れ、部下たちに向き直った。その顔に、もう迷いはなかった。

「君たちにも大切な人がいるだろう! それは父親かもしれない。お姉さんかもしれない。親友かもしれない」


 サイロスは剣を抜き放ち、高らかに叫んだ。

「私にとっては、ここにいるシルフだ!」

「えっ!?」


 シルフが顔を真っ赤にするが、サイロスは構わずに続ける。

「大切な人たちの笑顔を、明日も明後日も見るために! 友情を! 愛情を! 力に変えろ! 全軍、進軍せよ!」


 愛の力で奮い立った魔法剣士部隊が、青白い雷光を纏って突撃した。


    ◇


 指揮所近く。

 アレフ騎士の生き残りと、帝国の歩兵部隊をまとめるアレフドリア十五世は、作戦会議を終えて出てきたマクマリスと共にいた。


 湖に放たれた雷撃を見つめながら、老王が嘆く。

「進化、とはな……」


「想定外だ」

 マクマリスもまた、厳しい表情を崩さない。


「それでも貴殿は……あの鉄屑には負けないと言えるかね?」

 アレフドリア十五世が不安げに尋ねる。


 マクマリスはフッと笑った。

「どんなに進化しようとも、奴らは『勇者』ではない。……今日は負けるかもしれないが、最後に笑うのはこの私だ」


「最後……? お主、何を企んでおる?」

「言ったところで、信じられっこない。正直、私自身ですら半信半疑だ」

 マクマリスは肩をすくめた。その手は、懐にある『奇妙な印』が刻まれた魔道具に触れている。


「何か策があるのだな?」

「詳細は言えないが……考えてはある」


「ならばよい。私は貴殿を信頼しておる。この世界を頼むぞ」

 アレフドリア十五世は覚悟を決めた顔で頷いた。


 マクマリスは、そんな老王に冷徹に、しかし力強く告げた。

「安心して死んでこい」


 王は破顔(はがん)した。

「はっはっは、とんだエールだ」


 そこに覇王からの突撃命令が入る。


『敵はこの数日で驚異的な進化を遂げた! しかし、恐れることはない! 今しがたの『雷の(おり)』作戦により、雷属性が極めて有効であることが実証された!』


 北ではサイロスが、南ではスーリンディアが、王の声を聞き、剣を掲げた。


『我々の手に持つ物はなんだ! その手には、仲間たちが魂を込めてエンチャントした、雷属性の武器がある! 総員、突撃ッ!! 命ある限り、この地を死守せよ!!』


 アレフドリア十五世は剣を抜き、配下の兵士たちに向き直った。

「聞いたか、皆の者! ここにいるは魔王マクマリス! 魔王を倒すは勇者と相場が決まっておる!」


 その演説を聞き、マクマリスが失笑する。

「……それは私が言ったセリフだ」


 だが、王は構わずに叫び続けた。

「奴らは単なる鉄屑よ! つまり魔王がいる限り、我々は負けない! 最後に笑うは我々、人類軍である! 突撃せよ!」


「「「ウオオオオオオオオッ!!!」」」


 老王の号令と共に、人類最後の防衛線が、雄叫びと共に動き出した。

 それぞれの想いを乗せて、銀色の津波へとぶつかっていく。

【次回の予告】

 「見えない刃、ウォーターカッターの脅威。そして英雄が倒れる。」


 上空では四天王たちのドラゴンが圧倒的な力で敵を駆逐する。

 しかし、地上では惨劇が始まっていた。


 後方に控えるエルフ部隊、そして指揮官スーリンディアを襲ったのは、「何もいない空間」からの攻撃だった。


 海を渡る際に取り込んだ水を、超高圧の水刃として発射する敵の新機能。

 

 盾となるアンデッドすら切り裂かれる中、マクマリスは地上部隊の全滅を予見し、覇王へ警告するために戦線を離脱する!


 不可視の処刑鎌。血に染まる紅葉の長。

 第46話は、明日の21時40分更新です!


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