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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第35話:その魔王は復讐を禁ずる。~暴かれた黒幕と真実の演説~

【前回までのあらすじ】

 エスペル島を追われ、最後の砦・アンドレア帝国へ辿り着いたマクマリスたち。


 緊急軍事会議では、ヘギルが開発した「カートリッジ式の新型魔導砲」や、マクマリスが提案した禁忌の策「戦死者のアンデッド化」など、なりふり構わぬ防衛計画が次々と決定される。


 過去の遺恨も、騎士の誇りも、全ては生き残るため。

 かつての敵同士が背中を預け合う「人類総力戦」の骨子こっしが定まったのだった。

 会議の終わり際、暁月は席を立ち、エスペル島出身者たちの元へ歩み寄った。


「先ほどは……とんだご無礼を」

 彼女は深々と頭を下げた。


 ガガンはバツが悪そうに頭をかいた。

「俺も言い過ぎた。すまん。……お前も、故郷を失ったのか?」


「ええ。父も民も全て……。生き恥を晒すようで、生きた心地がしませんでしたが……仇を討つという復讐心だけが、私を支えてくれました」

 暁月の言葉には、隠しきれない悲痛な響きがあった。


 そこに、一人のエルフが静かに歩み寄ってきた。

「失礼。……私は紅葉の森のエルフを束ねる、スーリンディアという者」

 帝国の将軍サイロスたちを率いる、あのアンドレア領内のエルフの長老だ。


 暁月は顔を上げ、丁寧に会釈をした。

「存じております。オウカの長、暁月にございます」


 スーリンディアは、探るような、しかし慈愛に満ちた瞳で暁月を見つめた。

「貴殿は先ほど、ディネルースに故郷を焼き払われたとおっしゃっていたな」


「……申しました」

「そして暁月というその名。貴殿の故郷は……」

「『常凪(とこなぎ)の里』にございます」


 スーリンディアが小さく息を呑むのが分かった。

「やはり……。貴殿は里長、暁月殿の姫君ということか」

「左様でございます」


 スーリンディアは視線を外し、部屋の向こうで四天王と軍議を詰めている覇王アンドレアの背中を見つめた。

「つまり……かつて平穏な里として讃えられた地の虐殺劇は、覇王の仕業ではなかったのだな」


「はい。全ては連邦の議長、ディネルースの自作自演でした。私たちは、真の仇に騙され、利用されていたのです」


 暁月の告白に、その場にいた者たちが息を呑む。

 スーリンディアは深く頷き、独り言のように呟いた。


「これですっきりした。覇王殿は過去を語るお方ではないものでな。ずっと気になっておったのだ。信じてはいたが、心のどこかで疑念を払拭できない自分がいたのも事実……」


 彼もまた、帝国の支配下で民を守るため、覇王の「正義」を信じきれずに苦悩していた一人だったのだ。


 暁月も同意し、伏し目がちに言った。

「私はつい先日まで、覇王が仇だとばかり思っておりました。……お恥ずかしい限りです」


 重苦しい空気を変えるように、シルフが明るく話に入ってきた。

「でも、そのディネルースは四天王に倒されたわけですし、これこそ因果応報ですよ! 悪い奴は滅びる運命なんです」


 だが、暁月はシルフを真顔で見た。

「……あの時は、死んでいなかったようです」


「えっ……?」

 シルフの笑顔が凍りつく。周辺に緊張が走った。


 ロイが身を乗り出す。

「ディネルースは生きているんですか!? どこかに潜伏しているということですか!?」


 暁月は首を横に振り、部屋の隅で腕を組んでいたマクマリスに視線を向けた。

「いえ。……マクマリス様が、私どもの代わりに討ってくださいました」

 周囲がざわつき、一斉にマクマリスに注目が集まる。


 マクマリスは顔を背けたまま、ぶっきらぼうに答えた。

「貴様のためではないと、言ったはずだ」

「……」

「殺さなければ、こっちがやられていた。必要に迫られたにすぎん」


 冷たい言葉だが、暁月にはその裏にある何かが伝わっているようだった。彼女はマクマリスを真っ直ぐに見つめ、再び頭を下げた。


「それでもです。……感謝しております」

「勝手にしろ」

 マクマリスは吐き捨て、歩き出した。


 だが、扉の前で足を止め、背中越しに言葉を投げかけた。

「……ついでだ。貴様らに言っておく」


 マクマリスは振り返り、暁月とエスペル島のみんなを、そしてその場にいる全ての者たちを見回した。


「私からのアドバイスだ。復讐心に囚われるな。そこの姫は生きる活力になったのかもしれないが、復讐心は視野を狭める。飲み込まれたら破滅を招くぞ」


 その言葉には、かつて復讐に囚われ、破滅していったガングダードとディネルースを知る魔王だけが持つ、有無を言わせぬ重みがあった。


 そしてそれは、彼自身への戒めでもあったのかもしれない。

 マクマリスはそう言い残し、漆黒のマントを翻して部屋を出ていった。


 残された者たちの胸には、来るべき決戦への覚悟と共に、魔王の言葉が深く刻み込まれていた。


    ◇


 会議の後、アンドレアは城のバルコニーに立ち、全土に向けた演説を行った。

 今度は、何も隠さなかった。


「我が同胞たちよ。……危機は去っていなかった」


 宇宙からの侵略者。無慈悲な殺戮機械。その真実を告げると、民衆の間に動揺が走った。

 だが、覇王の声はそれを上書きするように力強く響いた。


「だが、恐れるな! 我々は先の大戦を乗り越え、かつての敵と手を取り合い、今ここに最強の『人類軍』として一つになった!」


 彼は、隣に立つマクマリス、ガイアス王、元連邦の暁月、そしてロイたちを示した。


「機械の悪魔がどれほど強大であろうと、魂を持つ我々の結束には勝てない! 今一度、一致団結し、この星を護り抜こうではないか!」

「「「「ウオオオオオオオオッッ!!!!」」」」


 絶望は、決意へと変わった。

 工場の煙突からは黒煙が上がり、魔法使いたちは杖を磨き、兵士たちは剣を研ぐ。


 人類の存亡をかけた、最後にして最大の戦いが始まろうとしていた。

【次回の予告】

 「死せる剣聖を、最強のアンデッドへ。」


 復興が進む白亜の巨塔。

 覇王アンドレアに対し、マクマリスは冷徹な決断を告げる。

「源流の遺体を回収し、戦力とする」


 そして、塔の最下層で発見された、ディネルースの隠し研究施設。

 記憶洗浄、恐怖の除去、非人道的な生体実験の跡……。

 無人のハズの闇の奥から、響く物音の正体とは?


 白亜の闇、地下実験室の怪。

 第36話は、明日の21時40分更新です!


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