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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第33話:その覇王は絶望しない。~七日間の猶予と見出した勝機~

【前回までのあらすじ】

 海からの奇襲により、平和なエスペル島は一夜にして地獄と化した。

 無限に湧き出る機械生命体を前に、マクマリスは敗北を認め、島を捨てる決断を下す。


 自ら殿しんがりとなり死地に残るが、クリアの長老たちの命を懸けた守りにより、辛くも脱出を果たす。


 燃え盛る故郷、散った命。

 

 深い絶望と傷ついた英雄たちを乗せ、箱舟は最後の希望――覇王の待つ大陸へと飛び立った。

 帝都アンドレアの仮設空港に、黒煙を上げる三隻の『アルゴス』級戦艦が強行着陸した。


 タラップが下ろされると、そこから数多くの避難民たちが、ふらつく足取りで降り立った。

 彼らの表情は一様に暗く、(すす)と涙で汚れ、故郷を焼かれた絶望に打ちひしがれていた。


「怪我人は中央病院へ急げ! それ以外の者は準備した避難所へ案内せよ! 温かい食事と毛布を用意してある!」


 覇王アンドレアの号令一下、帝国兵たちが迅速に動き回る。仮設住宅への移住計画も即座に進められ、混乱は最小限に抑えられていた。


 マクマリスはその喧騒の中、一人の女性の姿を目撃した。

 着物の袖を(たすき)で結び、先頭に立って避難民を誘導している。


 かつて連邦が帝国に敗れた後、数名のサムライと共に武装蜂起を企んでいた、オウカの里長・暁月(あかつき)だった。


「こちらです! 足元にお気をつけて。オウカの収容施設へ馬車を出します!」

 彼女はサムライたちと共に、手際よく老人や子供を馬車に乗せていく。その横顔には、かつてのような暗い復讐の炎ではなく、指導者としての凛とした責任感が宿っていた。


 マクマリスが近づくと、暁月は作業の手を止め、深々と頭を下げた。

「……マクマリス様。その節は、お世話になりました」


「覇王とのわだかまりはないようだな」

 マクマリスが問うと、暁月は真っ直ぐな瞳で答えた。


「はい。私たちの真の仇は覇王ではなく、ディネルースでしたので。今は、民を守るために覇王アンドレアに協力しております」


「……そうか。ならば一つ報告がある」

 マクマリスは声を潜めた。

「ディネルースだが……奴は生きていて、私の前に姿を見せた」


「っ! それは本当ですか!」

 暁月の顔色が変わり、腰の短刀に手が伸びる。


「だが、私が息の根を止めた。……貴様のためというわけではないが、一応報告はしておく」


 暁月は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに表情を崩し、震える声で言った。

「……かたじけなく存じます」


 マクマリスは短く鼻を鳴らし、彼女に背を向けた。

 その背中に向かって、暁月はいつまでも頭を下げ続けていた。


    ◇


 避難民の輸送に目処が立った頃、城の深部にある作戦室では、人類の運命を左右する緊急会議が開かれていた。


 円卓を囲むのは、覇王、魔王、ガイアス王ら各国の王たちに加え、ロイやシルフ、四天王。そして、オウカ代表として暁月も席に就いていた。

 かつて大陸を二分して争った者たちが、今は一つの脅威に対し、膝を突き合わせている。


「まずは、国民の受け入れに感謝する、覇王」

 マクマリスが頭を下げると、アンドレアは短く頷いた。

「礼は後だ。今は敵を知らねばならん。……マクマリス、奴らの正体は?」


 マクマリスは、エスペル島で目撃した惨劇を淡々と、しかし正確に報告した。

「海中より現れた、十万を超える『機械生命体』の軍勢だ。個体ごとの自我は希薄だが、群れ全体で高度な連携を取り、老若男女を問わず無差別に殺戮を行う」


 彼は記憶にある映像を魔術で空中に投影した。

 腕をブレードに変える歩行型、空を飛ぶ飛行型。無機質な銀色のボディ。


「全身が鋼鉄のように硬いが、中心にある赤く発光する『コア』を破壊すれば停止する」

「なるほどな……」

 葉巻を噛み砕きながら、ヘギルが唸った。


「エルフみてぇな長命種は別として、俺たち生物は寿命には勝てねえ。科学技術が極限まで発展すると、行き着く先は『不老不死』、つまり脆い肉体を捨てるって考えに至るもんだ」


 ヘギルは投影された怪物を忌々(いまいま)しそうに睨んだ。

「今の俺たちの科学じゃ、どうやって精神を移すのか見当もつかんが……あいつらは、肉体を捨てて機械になった成れの果てかもしれん」


「捨てられた成れの果て、か」

 アンドレアは腕を組んだ。

「だが、奴らは既にこの星にいた。ならば、なぜすぐ襲ってこなかった? いつから海底に潜んでいた?」


「可能性の話だが」

 マクマリスが眼鏡を押し上げる。

「機械である以上、稼働にはエネルギーが必要だ。あれだけの数を揃え、一斉に起動するには、それ相応の『充電』期間が必要だったのではないか」


 ガイアス王が同意する。

「海中から現れたということは、奴らの母船は海の底にある。海水を取り込み、冷却や水力発電のような仕組みでエネルギーを得ているのかもしれん」


「母船に生産施設があった場合、材料とエネルギーがある限り、敵は無限に湧き出るぞ」

 ヘギルの指摘に、室内の空気が凍りついた。


「タイムリミットは?」

 アンドレアの問いに、ガイアス王が即答する。

「あの進軍速度だ。西の海岸線に到達するまで、一週間もかからないだろう。……再充電の必要性にもよるが、猶予はない」


 重苦しい沈黙が、作戦室を支配していた。

 無限の敵、圧倒的な速度、そして未知の技術。

 だが、覇王アンドレアは静かに目を閉じ、思考を巡らせていた。

「動かなくなるということは、機械に見えても我々と同じ『殺せば死ぬ』生命体だということだ。勝機はある」

 やがてカッと目を開いた時、その猛禽類(もうきんるい)のような瞳に絶望の色はなかった。

【次回の予告】

 「生者も、死者も。……この大陸に眠る全てが、剣となり盾となる。」


 帝都に集結した敗北者たち。しかし、彼らの目は死んでいなかった。


 オウカの里長・暁月の決意。ヘギルとガイアスの技術同盟。

 そして、かつての敵と味方が手を取り合う人類総力戦。

 覇王アンドレアは、禁忌とされていた死霊術の使用すら許可する。


「綺麗事では勝てない」


 その覚悟が、大陸全土を巨大な要塞へと変えていく!

 作戦名『大陸要塞化』。禁忌を超えた結束。

 第34話は、明日の21時40分更新です!


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