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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第30話:その魔王は絶望を叫ぶ。~砕けた頭蓋という名の希望~

【前回までのあらすじ】

 人類との共闘を選んだマクマリスに対し、魔界でクーデターが勃発。

 その糸を引いていたのは、死んだはずの宿敵・ディネルースだった。

 

 多勢に無勢、絶体絶命の窮地に立たされたマクマリスは、禁断の一手を打つ。


 それは、かつて自らが葬った先代魔王ガングダードの死体に「コア」を埋め込み、理性なき破壊兵器として蘇らせることだった。


 咆哮と共に、最凶のゴーレムが戦場へと解き放たれる――。

「な、なんだあの化け物は!?」

「ガ、ガングダード王!?」

 アズモとベルゼブの配下が、恐怖にすくむ。


 蘇った先代魔王の力は伊達ではなかった。腐っても魔王、その剛腕が振るわれるたびに、裏切り者の魔族たちが紙屑のように吹き飛ぶ。


「ヒィィッ! 逃げろ!」

 アズモとベルゼブ、そして二人の配下らは蜘蛛の子を散らすように逃亡した。


 ディネルースがその背中に向かって悪態をつく。

「魔族が敵前逃亡か! 恥を知りなさい!」


 残ったのは、ディネルースとレヴィアタンのみ。


 ディネルースは、ガングダードの背後に立つマクマリスに話しかけた。

「先代魔王を使役していたのね。……その胸部に見えるのは、もしかしてアルフィリオンが使っていたコアかしら?」

「ああ、その通りだ。ネクロゴンドから部下が持ち帰ったものだ」


 ディネルースは鼻で笑った。

「よく見たら『欠片』じゃない。そんな不完全な代物で、先代魔王の力を引き出せると思ってるわけ? やめときなさい。貴方を殺すのは惜しいわ。アズモやベルゼブより、よっぽど役に立つもの。手を組みましょう」


「どうにも解せないんだが」

 マクマリスは眼鏡の位置を直しながら言った。

「命乞いをするならまだしも、なぜ貴様が勝つ前提で話を進めている?」


 マクマリスのその問いに、ディネルースから笑みが消える。

「私の恩情を無下にしたら、どうなるか分かっているんでしょうね?」

「もちろん。貴様の死だ」

「言ってくれるじゃない……。死損ないの人形風情と共に死ね! レヴィアタン!」


 ディネルースが叫ぶと、レヴィアタンが高圧の水流ブレスを放つ。

「フンッ!」

 ガングダードは大剣を振り下ろし、その剣圧だけでブレスを真っ二つに切り裂いた。水流が左右に弾け飛ぶ中、弾丸のようなスピードで水竜に接近し、その首を狙う。


 ガギィン!!


 直撃。しかし、レヴィアタンの鱗が物理衝撃を無効化し、ガングダードの大剣を弾き返す。

 体勢を崩すガングダード。そこに、レヴィアタンの特大の尻尾が迫る。

「吹き飛びなさい!」


 バォォォン!!


 強烈な一撃を浴びて吹き飛ぶガングダード。だが、彼は吹き飛びながらもその剛腕で尻尾を鷲掴みにした。

「ヌンッ!!」

 空中で踏ん張ると、自慢の剛力で逆にレヴィアタンを振り回し、豪快に放り投げる。


 ズドォォォォォン!!


 レヴィアタンは居城の厚い壁を突き破り、遥か外へと投げ飛ばされた。まさに一進一退の攻防。

 ガングダードがゆっくりと後を追って壁の穴から外に出ると、レヴィアタンは既に体勢を立て直し、上空で待ち構えていた。


 荒野の上空に浮かぶ水竜と、地に立つ先代魔王。その規格外の戦闘を、魔界中の魔族たちが遠巻きに固唾を呑んで見守っていた。


 ディネルースは眼下のガングダードを見下ろしながら考えていた。

(ここには湖や海はない。水場のない荒野は、レヴィアタンにとっては不利な環境。……とはいえ、不完全な人形相手に互角とはね。腐っても先代魔王か)


 先に仕掛けたのはガングダードだった。


 ドォォン!


 大地を陥没させるほどの脅威的な跳躍力で、遥か上空のレヴィアタンの上に回り込む。

「オラァッ!!」

 大剣を振り下ろし、レヴィアタンの翼を切り付ける。


 ガギンッ!


 またもや弾かれる感触。だが、弾かれた直後、ガングダードはさらに力を込め、筋肉を膨張させた。

「砕けろォォッ!!」


 バリィィィッ!!


 無効化の許容量を物理的な馬鹿力が突破した。レヴィアタンの片翼が根元からへし折れ、切り落とされる。

「ギャオオオオッ!?」

「落ち着けレヴィアタン! 奴は空中では無力よ! 最大出力のブレスを浴びせなさい!」


 ディネルースの命令により、片翼でもがきながらも体勢を制御し、レヴィアタンは至近距離から高圧ブレスを放つ。

 以前の戦いで首に傷を負った経験が、痛みに多少の耐性をつけていたのだ。


 ズドドドドドッ!!


 空中にいるガングダードは避けることもできず、ブレスの直撃を浴びて、もの凄い勢いで地に叩きつけられる。

 すぐさまレヴィアタンは急降下し、倒れているガングダードに跨ると、その肩に深く噛み付いた。


「ガアアアアッ!」

 牙が肉に食い込む。


「……ふむ。あの竜の皮膚は硬いが、無敵ではない」

 マクマリスは戦場の隅で、冷静に戦況を分析し、術式を編んでいた。

「翼がもげたということは、力を受け止めるのにも限界があるということ。……理屈が分かれば対処できる」


 三百年前、ガングダードを葬った時空間操作術。その応用。

「ガングダード! 奴を掴まえて逃すな!」


 主の命令に従い、ガングダードが自身を咬むレヴィアタンの首を、万力のような力で掴んだ。

「離さんぞ!」


「馬鹿め! 至近距離からのブレスで終わりよ!」

 ディネルースが勝利を確信した、その刹那。


 古代時空間操作術の一つ、時間停止魔法――『クロノ・スタシス』。


 マクマリスが印を結んだ瞬間、ディネルースとレヴィアタンの周囲だけ、世界の色が反転した。

 ほんの数秒、時間の流れが完全に停止する。

 ブレスを吐こうとしたエネルギーも、強靭な鱗の加護も、時が止まれば機能しない。


「やれ」


 停止した世界の中で、ガングダードの大剣が振り上げられた。

 空間ごと断ち切るような渾身の一撃。

 時が動き出すと同時に、最強の盾を誇った鱗と、その上の女王は、斜めに両断されていた。


「……バ……カな……」


 ディネルースの体は二つに分かれ、レヴィアタンと共に崩れ落ちた。

 今度こそ、復讐の執念は断たれた。


    ◇


 戦いは終わった。

 逃げ出したアズモとベルゼブは、すぐにマクマリス派の追手に捕らえられた。


「慈悲を! マクマリス王、慈悲を!」

「我々が間違っていた! 忠誠を誓う!」


 マクマリスは冷ややかに見下ろした。

「裏切り者に与える慈悲はない。……伝統にのっとり、送ってやろう」


 広場には、かつてガングダードが作った処刑器具が並べられていた。

「苦痛の聖歌隊、演奏開始だ」


 二人の派閥の長の断末魔が響き渡る中、彼らの配下だった多くの魔族は、恐怖と圧倒的な力の前にひれ伏し、マクマリス派に下った。

 こうして、マクマリスは名実ともに魔界最大にして唯一の絶対権力者となった。


    ◇


 だが、居城に戻ったマクマリスの顔に、勝利の喜びは微塵もなかった。

 彼は荒れ果てた研究室に立ち尽くしていた。

 対「侵略者」用に準備していた精鋭アンデッドの大半は、この内乱で破壊された。


 だが、それよりも深刻な喪失が、彼の目の前に転がっていた。

「……嘘だろ」

 瓦礫の山の中に、アルフィリオンの「動く死体」があった。


 否。


 あったのは、首から下だけだった。

 レヴィアタンとの激戦の余波か、流れ弾か。最も重要だった「頭部」が、跡形もなく吹き飛んでいたのだ。


「……脳が……制御術式が……」

 マクマリスは崩れ落ち、首のない死体を抱き寄せた。


 「反魂の術」の実用化には、アルフィリオンの脳内にあった術式構成が不可欠だった。頭部を失った今、その解析は永遠に不可能となった。

 死者を蘇らせ、無限の戦力を得るという計画が愚かな内乱によって水泡に帰した。


「愚か者どもがァァァァァッ!!!!」


 普段は冷静沈着な魔王の、慟哭(どうこく)のような絶叫が、破壊された研究室にいつまでも響き渡っていた。

 最大の権力を手にした日に、彼は最大の希望を失ったのだ。

【次回の予告】

 「空からの侵略」への備え。だが、奴らが現れたのは足元からだった。」


 平和の象徴となるはずだった「魔導防壁」。

 しかし、その建設を嘲笑うかのように、海面が沸騰し、銀色の悪夢が上陸を開始する。


 感情なき殺戮者「機械生命体」。


 ガイアス王国の崩壊、そして砂漠での絶望的な総力戦。

 マクマリスの計算を凌駕する、真の地獄が幕を開ける!

 

 銀色の波、海より来る。エスペル島防衛戦。

 第31話は、明日の21時40分更新です!


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