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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第29話:その魔王は暴君を喚ぶ。~深淵の内乱と最強の傀儡~

【前回までのあらすじ】

 桜舞うオウカの地で、マクマリスは源流の墓前で復讐に燃えるサムライたちをいさめる。


 短刀に宿った藤堂の想いと共に、常凪の里を襲った真の黒幕がディネルースであったことを明かし、源流と遺族たちの魂を救済へと導いた。


 しかしその夜、マクマリスは冷徹な魔王の顔に戻る。


 帝都の闇に紛れ、埋葬されたアルフィリオンの遺体を掘り起こすと、感情なき「生体演算装置」として傀儡くぐつ化させ、自軍の戦力へと加えたのだった。

 初の外交を終え、エスペル島に帰還した連合使節団。


 ガイアス王へ魔導防壁に設置する迎撃システムの指示を終えたマクマリスは、表向きの公務を部下に任せると、誰にも告げずに隠密裏に魔界の居城へと戻っていた。


 研究室。

 そこには、土気色の肌をしたダークエルフ、アルフィリオンの「動く死体」が立っていた。

「解析を急ぐぞ。お前の脳内にある術式を全て引き出す」


 マクマリスは、大陸から持ち帰った石板と、アルフィリオンの頭部に魔力回路を接続し、「反魂の術」の完全解明に没頭していた。

 生前の記憶や技術を保持したまま死者を蘇らせるこの術が完成すれば、対侵略者戦において決定的な戦力増強となる。


 その静寂を破ったのは、乱暴な扉の開閉音だった。

 バーン!


「何用だ。アズモ、ベルゼブ」

 マクマリスは作業の手を止めずに問うた。

 入ってきたのは、マクマリス政権を支える二大派閥の長だった。


「マクマリス、人間どもと手を切れ」

 アズモが単刀直入に告げる。

「あんな下等種族に媚びるなど、魔族の恥だ。我慢の限界だぞ」


 マクマリスは冷ややかに返した。

「観測データを見せただろう。我々だけでは、来るべき『侵略者』には勝てん」


「勝てるさ。……強力な後ろ盾がいればな」

 ベルゼブがニヤリと笑い、背後の闇に向かって恭しく頭を下げた。

「お入りください、盟約者よ」


 ズズズ……。


 闇から現れたのは、巨大な水竜の頭部。そしてその上に立つ、死んだはずの女。

「久しぶりね、マクマリス」


「……ディネルース。生きていたか」

 マクマリスは眼鏡の位置を直しながら、動揺を見せずに応じた。

(水の都の結界が消えなかったわけだ。しぶとい女よ……)


 水竜レヴィアタンから降り立ったディネルースは、優雅に微笑んだ。

「貴方が島に巨大な壁を作っているのを見て、確信したわ。『侵略者』の話は本当のようね」

「ああ、本当だとも。それに、人類と手を組まなければ勝てないのも本当の話だ」


 彼女はマクマリスに歩み寄る。

「私の結界術は、古代エルフの叡智。誰にも破れない絶対防御よ。私と手を組めば、この魔界だけは救ってあげる」


「この魔界と地上を繋ぐゲートに結界を張るつもりか?」

 マクマリスは問うた。

「我々魔族は一生、この魔界に閉じこもって暮らせと?」


「絶滅するよりはマシだと思わない?」

 ディネルースは悪びれもせずに言う。

「魔族の本能は闘争だ。いつまでも檻に閉じ込めておけると思うな」

「大丈夫よ。時期が来たら攻勢に出るつもりよ。私と魔族が手を組めば、不可能はないわ」

「……見返りは?」


「復讐よ」

 ディネルースの瞳に、どす黒い憎悪の炎が宿る。

「アンドレア、ロイ、四天王……私をコケにした連中を皆殺しにする。全員死ねばそれでいい。全滅を見届けたら攻勢に出るわ。それまで魔界に結界を張ってあげるから、人類と手を切りなさい」


 マクマリスは深いため息をついた。

「復讐、か。……三百年前のガングダードと同じだな」

「なんですって?」

 ディネルースの眉がピクリと動く。


「視野が狭いと言っている。感情に任せた行動は破滅を招く。それに、用が済めば次は我々を消すつもりだろう?」

 マクマリスはアズモとベルゼブに向き直った。

「目を覚ませ。この女は信用に足る相手ではない。一時的に助かったとしても、いずれ殺されるぞ」


「黙れ、弱小派閥あがりが!」

 アズモが吠える。

「貴様が王になれたのは、我々の支持があったからだぞ! 恩を忘れたか!」


「私は魔族が生き残るために最善の手だと思ってやっている。せめて、共通の敵を倒すまで待ってもらえないか?」

 マクマリスは必死に説得を試みる。内乱を起こしている場合ではないのだ。


「勝つために人間どもに媚を売るなど、魔王として恥ずかしくないのか!」

 アズモは聞く耳を持たない。

「ディネルースの言葉を借りるようだが……絶滅するよりはマシだ」


「魔族の面汚しよ!」

 ベルゼブも唾を吐き捨てる。

「冷静になれ。人間どもとはあくまで一時的な共闘だ。全てが終わった後は、貴様らの好きにしてくれて構わない」


 騒ぎを聞きつけたマクマリス派の魔族たちが集まってくる。

「何事ですか、マクマリス様」

 側近が剣に手をかけるが、マクマリスは制した。

「見ての通りだ。だが、こっちからは手を出すな。これからという時に、なるべく同士討ちは避けたい」


 マクマリスは最後の望みをかけて、ベルゼブに諭すように言った。

「ベルゼブ。侵略者を倒すまでの辛抱だ。その後は疲弊した人類どもに本当の地獄を見せてやろう。……今は堪えろ」


 ベルゼブの目が殺気立った。

「……それが貴様の答えか。人間と馴れ合う軟弱な王はいらん。ここで死ね!」


 交渉は決裂した。


「やれェッ!!」

 アズモ、ベルゼブ両派の兵士たちが、一斉にマクマリスに襲いかかる。マクマリス派の魔族たちも応戦し、研究室は戦場と化した。


「やれやれ。派閥としては小さいが……戦力が低いとは言っていない」

 マクマリスが指を鳴らすと、床から無数のアンデッドが湧き出した。


 しかし、多勢に無勢。アズモとベルゼブの精鋭に加え、後方からのディネルースの強力な援護魔法もあり、マクマリス派は瞬く間に劣勢に追い込まれていく。


「チッ、分が悪いか」

 マクマリスは爆煙に紛れ、研究室の地下、秘密の安置所へと走った。

 そこは絶対零度に保たれた氷室。

 中央には、巨大な氷の棺に眠る、巨漢の死体があった。

 先代魔王、ガングダード。


「使うつもりはなかったが……背に腹は代えられん」


 マクマリスは懐から、密偵が持ち帰った「アビス・ゴーレムのコアの欠片」を取り出した。

 死霊術による蘇生ではない。強靭な肉体を器とした、最強のゴーレムとしての再起動。

 マクマリスはためらいなく、ガングダードの胸にコアを埋め込んだ。


 ドクンッ!


 死した肉体に、どす黒い魔力が奔流となって駆け巡る。

「目覚めろ、破壊の化身よ! 目の前の敵を殲滅せよ!」


 ズズズ……!


 巨体が身じろぎし、氷の棺が内側から砕け散る。

 虚ろな眼窩に、禍々しい紅い光が灯った。


「……ウ……オォォォォォッ!!」


 咆哮一閃。

 地下室の天井を突き破り、ガングダード・ゴーレムが戦場へと躍り出た。

【次回の予告】

 「敵は滅びた。……だが、人類の希望カードもまた、永遠に失われた。」


 最凶の暴力・ガングダードと、最強の防御・レヴィアタンの頂上決戦。

 それはマクマリスの時空魔法によるアシストで決着し、ついにディネルースの怨念は完全に断たれました。


 魔界の内乱を鎮圧し、絶対王座を手に入れたマクマリス。

 しかし、その勝利の代償はあまりにも大きすぎました。

 瓦礫の中に転がる、首のないアルフィリオンの死体。


 「反魂の術」という、来たるべき絶望に対抗する最後の切り札が、愚かな内乱によって永遠に失われたのです。

 絶叫する魔王の姿は、勝利者ではなく、ただの敗北者のそれでした。


 魔王の慟哭どうこく。失われた未来への鍵。

 第30話は、明日の21時40分更新です!


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