表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/37

第3話:その王子は海を渡る。~正義の天秤〜

【前回までのあらすじ】

 魔王討伐に向かった王子ロイと七人の仲間たちは、圧倒的な力の前に敗北し、絶望の中で意識を失う。


 だが、それは魔王マクマリスによる「演劇」だった。

 彼の真の目的は、宇宙から迫る脅威に対抗するため、島を強引に統一すること。


 目覚めたロイは、無傷で生かされた仲間たちと世界の危機を知り、かつての仇敵である魔王の手を取ることを選んだのだった。

 アレフ王国の円卓の間は、異様な緊張感に包まれていた。

 この島の指導者たちが一堂に会している。


 アレフドリア十五世、トーザの王、ゴンドラのドワーフ王、クリアのエルフの長老。そして、先日まで「敵」であったガイアスの王。


 彼らが視線を注ぐ先――玉座の隣に設けられた特注の椅子に、魔王マクマリスが悠然と座っていた。


「外敵、か。にわかには信じがたい話だが……」

 ゴンドラ王が太い髭をしごきながら唸る。


 会議の議題は、マクマリスがもたらした「世界の危機」についてだった。この世界の理の外から迫る、すべてを喰らう異形の軍勢。


「信じようが信じまいが、奴らは来る」

 マクマリスは冷ややかに言った。

「我々は、この島を難攻不落の要塞とせねばならん。だが、それだけでは足りん」


 マクマリスは円卓を見回し、問いを投げかけた。

「諸君に問う。この海の向こうに、何があるか知っている者は?」


 沈黙が落ちる。島の民にとって、海とは世界の「終わり」であり、その先を考える者は少なかった。


 だが、一人の男が静かに口を開いた。ガイアスの王だった。

「……我が国の古文書にのみ、記述が残っている。この海のはるか先、我らの島とは比べ物にならぬほど巨大な『大陸』が存在すると」


「その通りだ」

 マクマリスは満足げに頷いた。

「そして、その大陸は今、燃えている」


 マクマリスは、魔界の観測所が捉えた大陸の情勢を語り始めた。


「大陸は、大きく二つの勢力に分かれて永きに渡り戦争状態にある」


「一つは、八つの国が同じ理念の下に結束した『エレノア共和国連邦』。多様性を重んじるがゆえに、時に足並みが乱れる脆さも抱えている」


「もう一つは、東方を制圧した『アンドレア帝国』。覇王アンドレアという一人の男が、圧倒的なカリスマと軍事力で多くの国を従えている。苛烈な統治だが、それゆえの強固な結束を持つ」


 アレフドリア王が眉をひそめる。

「つまり、共和国連邦が善で、帝国が悪か」

「否」

 マクマリスは即座に否定した。


「どちらも、それぞれの正義を掲げて戦っている。帝国は『統一による恒久平和』を。連邦は『自由と多様性の維持』を。これは善悪の戦いではない。理念と理念の衝突だ」


 会議室の末席で話を聞いていたロイは、息を飲んだ。島の外に、自分たちと同じように、いや、それ以上に巨大な世界が広がっていたという事実に。


「マクマリス。その話が、我らの防衛とどう繋がる?」

 トーザの王が鋭く問うた。


「簡単なことだ。我々は、その大陸の勝者と手を組む必要がある」

 マクマリスは言い放った。


「外敵と戦うには、島の力だけでは足りん。大陸の力も必要なのだ。だが、泥沼の戦争を続けている彼らに、世界の危機を説いても聞く耳は持つまい。ならば――」


 魔王は、恐るべき提案を口にした。

「我らの手で、この戦争を早期に終結させる」


「正気か!」

 ゴンドラ王が椅子を蹴立てる勢いで叫んだ。

「他所の戦争に、我らが介入するなど!」


「正気だとも。このまま彼らが疲弊し、共倒れになることこそが最悪のシナリオだ。我々が介入し、どちらかを勝たせる。そして、勝利した側に『貸し』を作り、我らへの協力を約束させる」


 マクマリスの瞳には、一切の揺らぎもなかった。

「そのための使節団を編成する。いや、実力行使も辞さない『介入部隊』だ」


 マクマリスは壁際に控えていた者たちに視線を送った。

「ロイ王子。君のかつての仲間たち――ガガン、シルフ、アレフとトーザの者たちを再び招集する。これで八名」


 ロイは息を呑んだ。また、あの仲間たちと戦場へ?


「ガイアスからは、最新の魔導技術に精通した者を三名出す」

 とガイアス王が応じる。


「そして、我が配下からも二名加えよう。諜報と魔術に長けた、人の姿に近い穏健派の魔族だ」


 ロイ、ガガン、シルフを含む元別働隊の八名。

 ガイアスの技術兵三名。

 魔族の密偵二名。


 総勢十三名。それが、大陸の運命を左右するために送り込まれる部隊の全容だった。


「この部隊の指揮は、ロイ王子。君に一任する」

 マクマリスがロイをまっすぐに見据えた。


「待ってくれ!」

 ロイは思わず声を上げた。

「僕に、そんな大役が……。それに、どちらに味方するというんだ? 帝国か、連邦か。それを僕が決めると?」


「そうだ」

 マクマリスは静かに言った。

「私が決めてもいい。だが、それでは大陸の者たちは納得すまい。魔王に押し付けられた和平など、すぐに瓦解する」


「君が決めろ、ロイ。君のその目で、覇王アンドレアの掲げる『統一』と、エレノア連邦の守ろうとする『自由』、その両方を見極めてこい。そして、君が真に『島の未来のために手を組むべきだ』と信じられる理念に、その剣を捧げろ」


 それは、あまりにも重い責任だった。一つの大陸の歴史を、この若き王子の双肩に背負わせるというのだ。


 父であるアレフドリア王が、苦悶の表情で息子を見つめる。だが、彼は何も言わなかった。マクマリスの真意と、息子の成長を、誰よりも理解しているがゆえに。


 ロイは拳を強く握りしめた。かつて、魔王を討つという「物語」を信じて疑わなかった自分はもういない。現実は複雑で、泥にまみれていることを知った。


「……わかった。その大役、引き受けよう。僕の信じる正義が、島の未来に繋がると信じて」


    ◇


 一ヶ月後。ガイアスの港には、見たこともない形状の船が停泊していた。


 ガイアスの科学と魔族の魔術が融合した、空をも翔けるという魔導飛行艇『アルゴス』。


 甲板には、十三名の仲間たちが集っていた。


 屈強なドワーフのガガン。静かに弓を携えるエルフのシルフ。最新鋭の装備に身を包んだガイアスの兵士たち。そして、フードを目深にかぶり、魔族の気配を消している二つの影。


 ロイが最後の一人としてタラップを上る。

 港には、マクマリスが見送りに来ていた。


「一つだけ忠告しておくぞ、ロイ」

 マクマリスが、いつものあざけるような笑みではなく、真剣な眼差しで告げる。

「大陸の覇王アンドレアは、私が知る限り、この島にいた誰よりも狡猾で、誰よりも強い。……決して、油断するな」


「肝に銘じておく」

 ロイは頷き、仲間たちに向き直った。

「諸君、我々の任務は戦争の終結だ。犠牲は最小限に。だが、成すべきことは成す! 出航だ!」


 ゴオオ、と魔導機関が唸りを上げ、『アルゴス』はゆっくりと浮上する。

 目指すは、海の彼方、戦乱渦巻く未知の大陸。


 アレフの王子ロイの、本当の戦いが今、始まろうとしていた。

【次回の予告】

「王が畑仕事をして何がおかしい?」

 大陸で最初に出会ったのは、泥まみれの『農民王』だった。


 黄金の麦畑が広がるハーフリングの国。

 そこで語られるのは、綺麗事ではない「平和」の現実。


 ロイの青臭い「理想」が、現実の大地に根を張り始める第4話は、明日の21時40分更新です!


◾️面白かったら下の☆☆☆☆☆で応援をお願いします!次話執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ