表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/37

第21話:その女王は水底へ沈む。~暴かれた無敵の鱗~

【前回までのあらすじ】

 源流が最期の瞬間に握りしめた短刀『なぎ』。そこには、あまりにも残酷な真実が秘められていた。


 かつて「常凪とこなぎの里」を襲った悲劇。それは帝国の仕業ではなく、全てディネルースが「連邦」を結成させるために仕組んだ自作自演だったのだ。


 親友・藤堂は死の淵でアンデッドへと変えられ、源流は真実を知らぬまま、彼女を救うためにディネルースの手駒となることを誓った。


 そして現代。源流は藤堂の魂が宿る短刀で自らの腹を貫き、呪縛から解き放たれて散った。


 悲劇の過去編が終わり、物語は再び決戦の地、白亜の巨塔へ――。

 白亜の巨塔、最上階「天覧の間」。


 ディネルースは玉座に座し、側近のララノアは巨大な監視水晶に映る戦況を冷静に分析していた。


「……オウカ方面、アンドレア本隊と源流の部隊が交戦を開始しました。計画通りです」


「アルゴスらの陽動部隊は獣人族の混成軍団が足止め中。こちらも問題ありません」


 全てがディネルースの描いた脚本通りに進んでいた。


 ララノアは、魔導砲管制室のオペレーターに指示を飛ばす。

「魔導砲、エネルギー再充填率六十%。砲塔、オウカ方面へ。アンドレア本隊が源流の部隊と完全に膠着した瞬間、一気に焼き払います」


 唯一の懸念は、挟撃の合図を送るべきアルフィリオンからの通信が途絶えていることだった。


「アルフィリオンは何をしている……。まあいいわ。あってもなくても、この戦い、詰みには変わりありません」

 ララノアは勝利を確信していた。


 その、瞬間だった。

 ウウウウウウウウウウッッ!!

 塔全体に、これまで聞いたこともない甲高い警報が鳴り響いた。


「な、なに!?」

「ば、馬鹿な! 結界が……結界が突破されました!」

 オペレーターの絶叫が響く。


「あり得ません!」

 ララノアが叫ぶ。

「紋章なしに結界を通過するなど……!」


「ララノア」

 ディネルースが、初めて玉座から静かに立ち上がった。

「……あの時の魔族の密偵。彼らが『盗んだ』のね」


 ララノアの血の気が引いた。あの時、船に残った魔族の目的。それは、魔導砲の調査と、この結界の「鍵」の強奪だったのだ。


    ◇


 監視水晶が、塔に急接近する四つの影を映し出す。

「敵影! ドラゴンです! 四天王……ウルスヌス、ザルティム、ガエサル、カーラ! 全員です!」

「塔の最上階へ、一直線に!」


「ララノア!」

 ディネルースの鋭い声が飛ぶ。

「魔導砲をここへ向ける時間はありません! 塔の防衛結界を最大に! 獣人部隊を戻しなさい!」


「だ、駄目です! 間に合いません!」

 ララノアは自ら魔導砲の管制席に駆け寄った。

「せめてオウカに一撃……!」


 だが、四天王はそれより速かった。

 塔の四方を、ウルスヌスのリントヴルム、ザルティムのブリトラ、ガエサルのティアマト、カーラのワイバーンが包囲する。


「「「「今だ!!!!」」」」


 ガエサルの号令と共に、四頭のドラゴンが、塔の最上階――ディネルースのいる天覧の間と、ララノアのいる管制室――に向け、四方向から同時に最大出力のブレスを放った。


 炎、毒、雷、風。

 四つの属性が塔の中心でぶつかり、無敵を誇った白亜の巨塔は、内部から凄まじい爆発を起こした。


「ディネルース様……!!」

 ララノアは、自らが絶対の信頼を置いていた魔導砲の砲身が、天井の崩落によって折れ曲がり、自分に向かって倒れてくるのを、スローモーションのように見つめていた。


 それが、彼女の最期の光景だった。


    ◇


 ゴゴゴゴゴ……


 轟音と共に、白亜の巨塔の最上階は完全に崩壊し、瓦礫となって眼下の湖へと沈んでいく。


「やったか……!」

 ウルスヌスが叫ぶ。

 だが、カーラは叫んだ。

「まだよ! 下を見て!」


 湖面が、沸騰したかのように泡立ち、渦を巻いている。

 そして、崩れ落ちた瓦礫の山が、湖の底から「何か」によって持ち上げられた。


「グオオオオオオオオオオッッ!!」


 水飛沫と共に現れたのは、塔に匹敵するほどの巨体を持つ、強靭な鱗に覆われた水竜。

 そして、その頭上には、純白のドレスに傷一つないディネルースが立っていた。


「……まさか……ディネルース、お前もドラゴンライダーだったとは!」

 ガエサルが戦慄する。


「おめでとう、四天王」

 ディネルースの声は、直接、四人の脳内に響いた。

「この姿を見せるのは貴方たちが初めてよ。光栄に思いなさい。私をここまで本気にさせたことを。我が愛竜、レヴィアタンのお披露目よ!」


 ディネルースは、ララノアが死んだことなど気にも留めていないようだった。


    ◇


「囲め! 一斉攻撃だ!」

 ガエサルの号令と共に、四頭の竜がレヴィアタンの四方を囲む。


「燃え尽きろ!」

「砕け散れ!」

 炎、風、雷、毒。四方向から放たれた最大出力のブレスが、水竜の巨体に直撃した。


 ドオオオオオオン!!


 凄まじい爆発が湖面を揺らす。だが、煙が晴れた後、そこには無傷のレヴィアタンが悠然と浮かんでいた。避ける素振りすら見せていない。


「ど、どういうことだ!」

 ウルスヌスが驚愕する。


「無駄よ」

 ディネルースの声が響く。

「レヴィアタンの鱗は、全ての魔力と物理攻撃を無効化するの。貴方たちの攻撃では、私には届かない」


「何か裏があるはずじゃ。……お前たち、三頭で攻撃を続けよ。わしが分析する」

 老練の魔導師ザルティムが後方に下がり、残る三頭に指示を出す。


「了解した!」


 カーラのワイバーンが超高速で接近し、鋭利な爪で切り裂く。ウルスヌスのリントヴルムが渾身の力で噛み砕こうとする。ガエサルのティアマトが多頭からブレスを浴びせる。


 だが、その言葉通り、四天王の攻撃はレヴィアタンの鱗に当たると、まるで水を打ったように弾かれ、傷一つ付かない。


「無駄だと言っているのが分からないの?」

 ディネルースが冷ややかに笑う。

「今度は私たちの番よ。……消えなさい」


 ズドンッ!!


 レヴィアタンの口から、鉄をも貫く超高圧の水流ブレスが放たれた。


「しまっ……!」

 ワイバーンの翼を(かす)め、カーラが体勢を崩す。


「カーラ!」

 ウルスヌスが庇おうとリントヴルムを突進させるが、レヴィアタンの巨大な尾がしなり、リントヴルムを横薙ぎにする。

「ぐわぁぁぁっ!?」


 ティアマトが体当たりをしてリントヴルムを間一髪助けるが、逆に強烈な尾の一撃を浴びて吹き飛ばされる。

「やってくれる!」


 ディネルースがレヴィアタンに命じ、湖全体を巻き込む巨大な渦潮を発生させる。

「さぁ、とくと味わいなさい!」


 ゴゴゴゴゴ……!


 天高く伸びた渦潮が三つに割れ、蛇のようにうねりながら三頭の竜に迫る。


「避けろ!」

 竜たちは間一髪避けるが、渦潮は意思を持つかのように向きを変え、執拗に襲いかかる。


「なっ、追尾だと!?」

「ぐあァァァッ!」

「きゃァァァーッ!」


 三頭の竜が次々と渦潮に飲み込まれ、湖面へと叩きつけられる。

 圧倒的な力で四頭に立ちはだかるレヴィアタン。


「さっきまでの威勢はどうしたのかしら? これで終わり?」

 余裕の笑みを浮かべるディネルース。勝利は揺るがないように見えた。


 だが、その時。


「……見切ったぞ!」

 離れたところから観察していたザルティムが叫んだ。


「怯むな! 奴の鱗は無効化ではない! 魔力の『分散』と『吸収』じゃ! 奴の鱗には許容量があるはず! 一点突破なら通じる! ガエサル、全竜のエネルギーを一点に集中させよ!」


「なるほど、そういうことか!」

 ガエサルが体勢を立て直し、即座に指示を飛ばす。


「カーラ、ウルスヌスは攪乱かくらん! 奴の首の付け根、鱗の繋ぎ目の一点を狙うんだ!」


「ザルティムは全魔力をその一点の『魔法防御』を剥がすために使え!」


「俺とティアマトで、奴の動きを止める!」


「何をしても無駄よ」

 ディネルースがレヴィアタンに命じ、再度湖全体を巻き込む巨大な渦潮を発生させようとする。

「沈めなさい、レヴィアタン!」


 だが、四天王の結束は、ディネルースの「個」の力を上回った。


「させるかァッ! 行くぞ!!」

 ガエサルがティアマトの多頭ブレスを四方に放ち、渦潮の発生源を潰すと同時にレヴィアタンの動きを封じる。


 その一瞬の隙に、ウルスヌスとカーラが左右の死角から同時に突っ込む。


「今じゃ!」

 二頭が攻撃を加える直前、ザルティムが詠唱した解除魔法がレヴィアタンの鱗に直撃し、防御力を一瞬だけ中和する。


 ドスッ!!


『ギャオオオオオオオオッ!!』

 初めてレヴィアタンに攻撃が効いた瞬間だった。痛みで絶叫し、巨体を悶えさせる水竜。


「なっ……!?」

 ディネルースの顔色が変わる。

「落ち着け、レヴィアタン! 致命傷じゃないわ!」


 しかし、傷を負うことに耐性のないレヴィアタンにとって、首の付け根の痛みは自身を混乱させるには十分すぎた。暴れる竜を、ディネルースは制御しきれない。


 ディネルースの完璧な計算が、初めて「仲間」という不確定要素によって上回られた瞬間だった。


「とどめだ!」

 無防備なレヴィアタンに対し、再びザルティムが魔法を詠唱し、首の付け根の一点の魔法防御を完全に中和する。


「「「これこそが、覇王の元に集う我らの力だ!!」」」


 三頭の竜の同時攻撃――爪、牙、ブレスが、レヴィアタンの首の付け根、その一点に深々と突き刺さる。


『ギ……アアアアアアアアアアアアッ!!!』

 断末魔の叫びと共に、強靭な水竜はその巨体を維持できず、ディネルースを乗せたまま、ゆっくりと湖の底へと沈んでいった。


「馬鹿な……。私の計算が……。この私が、このような……低俗な連中ごときに……」

 ディネルースの最後の言葉は、泡と共に水面に消えた。


 湖に静寂が戻る。

 白亜の塔は崩れ落ち、連邦を支配した孤独な女王は、水底へと還った。


 帝国の、完全なる勝利だった。

【次回の予告】

「完璧な『罠』を喰い破れ! 大陸最強の同時反撃作戦、開始!」


 ディネルースに作戦の全てが筒抜けであることを知った覇王アンドレア。

 しかし、その絶体絶命の状況で彼が浮かべたのは、凶悪で、心底楽しそうな笑みでした。


「敵が『知っている』と確信していることこそが、最大の勝機だ」


 敵の自信を逆手に取った、三方面同時奇襲作戦!

 ネクロゴンドの頭脳を潰すロイ、オウカの盾を砕くアンドレア本隊、そして水の都の心臓を狙う四天王。


 全ての歯車が狂い始めた時、ディネルースの「完璧な盤面」は崩壊の音を立てる!


 盤上の逆転劇。三つの刃が女王を貫く。


 帝国視点で決戦を振り返る第22話は、明日の21時40分更新です!


◾️面白かったら下の☆☆☆☆☆で応援をお願いします!次話執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ