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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第15話:その覇王は咆哮する。~熱狂の赤と静寂の白~

【前回までのあらすじ】

 決戦が目前に迫る中、シルフは帝国の深い森で同胞のエルフ、サイロスと出会う。


 閉鎖的なエルフの常識を打ち破り、剣を取って戦うサイロス。彼から魔力を矢に宿す「魔法弓」の極意を伝授されたシルフは、仲間を守るための新たな力「魔弾」をその手に掴む。


 ロイの「翼」、ガガンの「斧」、そしてシルフの「弓」。

 すべての準備が整い、運命の一ヶ月がついに終わりを告げようとしていた。

 決戦前夜。アンドレア帝国の広大な演習場は、地平線を埋め尽くすほどの松明の海となっていた。

 帝国が誇る全軍が集結している。


 人間、オーク、エルフ、ドワーフ、リザードマン。多種多様な種族が、同じ「赤」の腕章を巻き、整然と列を成している。


 その最前列には、魔法剣士として主力部隊を率いるエルフのサイロスの姿があった。


 また、後方には、不敵な笑みを浮かべるヘギルと、その部下たちの姿も。彼らの視線の先には、完全に修復され、ドワーフとガイアスの技術の結晶である巨大な増加装甲を船首に纏った『アルゴス』が、鋼の要塞の如く鎮座していた。


 だが、兵士たちの視線を最も集めていたのは、演習場を見下ろす高台に並ぶ、神話そのものの光景だった。


    ◇


 高台の中央には、覇王アンドレア。彼が立つのは、漆黒の鱗と黄金の角を持つ最大最強のドラゴン、バハムートの頭上である。


 その右隣には、白く輝く翼を広げた白竜シャヴォンヌ。その背には、新たな契約者であるロイが、緊張した面持ちで立っている。


 そして彼らを取り囲むように、帝国の四天王たちがそれぞれの愛竜と共に控えていた。


 ハーフエルフのカーラと、疾風の如き飛竜「ワイバーン」。

 剛力の戦士ウルスヌスと、地を揺るがす地竜「リントヴルム」。

 老練の魔導師ザルティムと、禍々しい毒霧を纏う蛇竜「ブリトラ」。

 隻眼の将軍ガエサルと、多頭の威容を誇る海竜「ティアマト」。


 六頭のドラゴンが並び立つその光景は、まさに圧巻。兵士たちの士気は最高潮に達していた。


 アンドレアが手を挙げると、数十万の兵士たちが一斉に静まり返った。

「聞け! 帝国が誇る強者どもよ!」


 覇王の声は、魔道具を使わずとも、平原の隅々まで朗々と響き渡った。

「我らは長きに渡り、戦い続けてきた。流した血は川となり、屍は山となった。だが、それも明日で終わる!」


 アンドレアは隣に立つロイを指し示した。

「見よ! エスペル島より使者としてやってきた異国の王子だが、今は志を同じくする新たな兄弟だ。我が妹エレノアの愛した白竜シャヴォンヌに選ばれし男、ロイ!」


 兵士たちから、どよめきと歓声が上がる。伝説の白竜が新たな乗り手を、それもどちら側につくかもわからなかった異国の地の者を選んだという事実は、この呉越同舟の作戦に何よりも強い正当性を与えていた。


「俺は、お前たちに感謝している。種族の壁を越え、ただ『力』と『忠誠』のみで俺についてきてくれたことを」

 アンドレアの声色が、ふと柔らかくなった。


「明日、我々は歴史を変える。ディネルースを討ち、真の平和をこの手に掴むのだ。……これが最後の戦いだ」


 覇王はニヤリと笑い、悪戯っぽい子供のような表情を見せた。

「もう少しだけ、俺のわがままに付き合ってくれ!」


 その一言が、導火線だった。


「うおおおおおおおおおおッ!!」

「覇王万歳! 帝国万歳!!」

「付き合いますとも! 地の果てまで!!」


 大地を揺るがすほどの歓声。それは恐怖による服従ではない。王のカリスマと、その人間性に惚れ込んだ者たちの、魂の叫びだった。


 ロイもまた、胸が熱くなるのを感じていた。これが、アンドレアという男の「王」としての器なのだと。


    ◇


 一方、迎え撃つエレノア共和国連邦の中枢、水の都。

 白亜の巨塔は、死のような静寂に包まれていた。


 最上階の玉座の間。


 ディネルースは、眼下に広がる闇に沈んだ湖を見つめ、ワイングラスを揺らしていた。


 彼女の周りには、兵士への鼓舞も、熱い演説もない。彼女にとって兵隊とは、盤上の駒であり、数字に過ぎないからだ。


「騒がしい夜ね。虫たちが騒いでいるわ」

 その傍らに控えていたのは、側近のララノアだった。

「虫たちも、まさか自分たちが飛び込む先が蜘蛛の巣だとは気づいていないでしょう」


「ええ。ララノア、魔導砲の準備は?」

「万端です。初弾で盾を砕き、次弾でオウカに群がる愚か者たちを焼き払います」


 二人のハイエルフは、冷徹な微笑みを交わした。


    ◇


 時を同じくして、決戦の地となるであろう、オウカ。


 夜風に舞う桜の下、サムライの長、源流は一人、縁側で茶を点てていた。


 彼が守るのは、アンドレア本隊が侵攻してくる国境線。


「結構なお手前で……」


 誰もいない庭に向かって茶碗を差し出す。その所作には、明日、死地へ向かうという悲壮感は微塵もない。研ぎ澄まされた刃のような静けさがあるだけだ。


 源流は愛刀『桜花』を手に取り、月光にかざした。

「……明日は、桜がよく血を吸うでしょう」


    ◇


 そして、遥か北のネクロゴンドの森奥深く。


 ダークエルフのアルフィリオンは、自身の工房である巨大な墓地にて、魔力釜の前で呪文を詠唱し続けていた。


「足りぬ……まだ足りぬ……」


 彼の周りには、墓地から掘り起こされたばかりの新鮮な死体が積み上げられている。


「一体でも多く、一体でも多く……。オウカで足止めされたアンドレアの軍勢を、我が芸術品アンデッドで背後から埋め尽くしてやる」


 それぞれの将が、それぞれの場所で、獲物がかかる瞬間を静かに待ち受けていた。


    ◇


 東の空が白み始める。

 それは、運命の日の始まりを告げる光。


 アンドレアはバハムートの手綱を引き、抜刀した。

 その切っ先が、遥か彼方の白き塔を指し示す。


「全軍、進撃!!」


「行くぞ、シャヴォンヌ!」

『行きましょう!』

 ロイもまた、白竜を駆る。


 同時に、白亜の塔からも無数の獣人部隊が湧き出した。


 熱狂の赤と、冷徹な白。


 二つの巨大な力が激突する、大陸史上最大の決戦の火蓋が、今、切って落とされた。

【次回の予告】

 連邦の絶対的優位が、音を立てて崩れ始める!


 戦場を支配する女王ディネルースが南の戦場に目を奪われている隙に、ロイたちは北のネクロゴンドを急襲!

 待ち受けるのは、死体を継ぎ接ぎした不死身の怪物、アビス・ゴーレム。


 ネクロゴンドでの戦いを描く第16話は、明日の21時40分更新です!


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