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75. 完治までの日々 町の人々

アスタロートは、今後どのように立ち回るべきか考えながら手に持っていた果実の寄生虫を取り除いていたが、妙案が浮かぶこともなく寄生虫をすべて取り除き終わってしまった。


よし、すべての寄生虫は撤去した。


慎重に、寒天のような果実をスプーンですくい、中に寄生虫がいないことを確認する。


「全く、何がきれいな果実だ。よく見ると寄生虫だらけだったじゃないか。」


アスタロートはリザリンへの文句を独り言のようにつぶやきながら、果実を一口食べる。


「んん!?おいしい。」


前世を含めて今まで食べてきた果実の中で一番甘味が強い。


もう一度果実をスプーンですくい、頬張る。


「うん。おいしい。これで、寄生虫いなかったら最高なんだけどなぁ。」


アスタロートは、寄生虫が多いことを根檄ながら果実を食べ続ける。


この果実はリザリンの言うとおり、寄生虫はもっと多く、今回は比較的小さめの寄生虫一種のみだったが、多い実だと数種類の寄生虫が寄生し果実の体積の半分は寄生虫で埋め尽くされていることもある。


アスタロートが、そのことを知るのはもう少し先の話である。


また、今までのアスタロートであれば、寄生虫をすべて取り除いたとはいえ、何匹も寄生していた果実を食べることはなかった。


すこしずつ、この異世界にアスタロートも順応してきたのである。


果実を食べていると、戦闘前のバクマンとの会話を思い出す。


アスタロートが、勇者を撃退した亜人であるかどうか判断するために、勇者達が療養している隣町まで一緒に来いと言われたことだ。


そんなことされては、アスタロートがアスタロートであることがばれてしまうので、断ったが、断ったことが逆に自分がアスタロートであることを認めたことになって戦いになってしまったのだが・・・。


「そうか。勇者は、あの町の近くの町にいるんだ。」


いまもまだいるかどうかは分からないが、行ってみる価値はある。


残りの果実を食べきり、とりあえずの大まかな方針が決まったことに満足するアスタロート。


まだ、会ってからどうするかまでは、全く考えていないが、勇者の近くにいた方が今後動きやすいだろう。


会ってからのことは、勇者を見つけてから考えることにしよう。


何か具体的な方針が決まったわけではないが、アスタロートはそれで満足してしまう。


アスタロートは、かなりの楽観主義者でもあるのだ。


なんとかなる精神で、前世では人気俳優まで登り詰めたのだ。


その成功の秘訣は、何度失敗しても、なんとかなるとトライする折れない心であるが、アスタロートに取っては普通のことなので、自分の強みとして知って認知していない。


果実を食べきったアスタロートは、まだ、昼にもなっていないが、傷がズキズキするため、その日は、何もせずに巣の中でじっとしていることにした。


巣の中でいるアスタロートは、暇だが時たま、氷で体を冷やしたり、魔物ギルドや広場の様子を眺めたりしていた。


魔物ギルドは、天井付近の壁が取り付けられていないため、木の上からだと良く中の様子が見える。


アスタロートが、ギルドを眺めていると、昼過ぎにフルーレティーがギルドにやってきた。


受付嬢と何かを話していると、そのままどこかへ飛び立ってしまった。


愛しのフルーレティーは今日もかわいい。


また、しばらくすると、ツチノッコンがギルドにやってきた。


ツチノッコンは、受付嬢に何か訴えかけているが、受付嬢には断られているようだ。


地団駄を踏みながら抗議しているツチノッコンだがやはり、断られている。


地団駄を踏んでいると、自分の靴に脚が引っかかり転んでいる。


クス。


相変わらずのクソガキだな。


クソガキに天罰が下るのを見ていると少しスカッとする。


ツチノッコンは、一瞬何が起こったのか分かっていないのか目を大きく開けているが、床に仰向けて倒れていることに気づいたのか、両手両足をバタバタして抗議しているが、受付嬢は、ギルドの奥へと帰って行った。


そのことに腹を立てたのか、ツチノッコンは寝転んだまま、手脚をバタバタさせて回転し始めた。


ツチノッコンは苦手だが、こうして外から眺める分には面白い。


3回転ほどしたら疲れたのか、ピクリとも動かなくなるツチノッコン。


奥から受付嬢が木の実を持ってきてツチノッコンに手渡す。


ツチノッコンは、機嫌を良くしてそれを両手に受け取る。


受付嬢に何かを言われて、そのままギルドの外に出て行き、待ちの入り口の方へと走っていった。


ギルドで働くってのも忙しいんだな。


その後も、何人かがギルドに来ては、ご飯を食べたりしてくつろいだりしている。


そのまま、ギルドを眺めているとうとうとし始めた。


はっ。


気がつくと、辺りは夕暮れになっている。


どうやら、寝落ちしていたようだ。


異世界に来て、こんなにゆっくりしたのは初めてだ。


外を、見るとリザリンがギルドに入って行くのが見えた。


なかに入ると、そのままギルドの奥の方へと入って行った。


受付嬢が何か止めているようだが、リザリンは知らん顔だ。


受付嬢の圧が、遠目から見ても全く感じられない。


なぜだ。


朝は、あんなに凄かったのに・・・。


受付嬢は、リザリンに少し甘いような気がする。


しばらくすると、リザリンがギルドの奥から出てきて、入り口が見える椅子にドカンと座る。


初対面のクリームケーキを投げつけられた時にリザリンが座っていた椅子だ。


手には、何も持っていいないから、クリームケーキを投げるようではないが、リザリンは口に何かを含んでいるのか、頬を大きく膨らませている。


その様子を見た、受付嬢が慌ててギルドの外へ出ていき、木の板で出来た看板を裏返す。


裏返された看板には、リザリンの似顔絵が描かれており、何か文字が書いてある。


どうやら、中にリザリンがいることを知らせる看板のようだ。


初めて見たときには気づかなかったが、今後、ギルドに入るときはあの看板が立っていないか確認してから入ろう。


夕食を食べに来たであろう人もギルドの外で立ちんぼして中にはなかなか入れておらず、中から誰かが出ていくときに合わせてギルドの中に入っている。


どうやら、ギルドの中から外に人が出るときに合わせて入って来る人には何もしないようだ。


そして、ギルドの外から中にはいると、リザリンは口の中に含んでいる水を水鉄砲のように噴出して、人に欠けて遊んでいる。


上手く避ける人もいれば、避けられずに濡れている人もいる。


初対面の時に、料理を投げるなと言いつけたことはどうやら守っているようだが、今度は水を吹きかけているようだ。


今から、ギルドに行って一発やめるように行ってこようかと思ったが、体に力を入れると肩の傷が痛んだため、動くことをやめた。


夕方になってから分かったが、あの薬の中には良くきく物もあったのだろう、中には真逆の効果の物もあったような気がするが、時間と共に痛みがひどくなってきた。


しばらくは、ここにいて、痛みがひいてから行動しよう。






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