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74. 完治までの日々 受付嬢

「クッ、ふひぃぃ~。」


ものすごく染みる薬をもう一度塗り込まれ、耐えようと思ったが耐えきれず変な悲鳴を上げるアスタロート。


この受付嬢、やばい人だ。


アスタロートが痛がっているのを見ると、薬が効いていると思い喜んでいるようだが、アスタロートにはアスタロートが痛がっているのを見て喜んでいるサディストにしか見えない。


この薬、絶対に塩とか入っている、薬を塗るとき肌触りがざらざらしていたし、塗られた傷口が尋常なく痛い。


染みる背中の痛みに耐えていると、いつの間にか包帯を巻き始めていた。


あまりの痛みに塗り薬を塗られた場所が強く痛み続け、包帯を巻かれている感覚が無かった。


「良く我慢しましたね。明日もこの時間に来ますから待っていてくださいね。」


「いやぁ~、どうかなぁ~。」


明日もこんな薬を塗られるなんて、たまったもんじゃない、耐えられないものではないが、避けられるのであれば、避けたい。


適当にはぐらかして、明日はとんずらしよう。


「たまに言うことを聞かずに出かけてしまう方がいらっしゃるんですけど、アスタロートさんはいますよね。」


受付嬢は、にっこりと笑いながらアスタロートに顔を少し近づけてくる。


圧を感じる。


やはり、薬があまりにも痛すぎて身の危険を感じたから逃げ出した同士が数多くいるのだろう。


明日黙って出かけて次会った時が怖いから、断っておこう。


「アハハハハ。じゃぁ、明日からは来なくていいよ。このくらいの怪我なら薬が無くてもゆっくりしていればそのうち治るさ。」


「それは出来ません。私は領主様からアスタロートさんが復帰するまでの世話役を新たに仰せつかったのです。途中で放棄することなんて出来ません。もし、アスタロートさんに何かあれば、私はこの町から追い出されてしまいます。それに、あなたの怪我は、素人目に見てもひどいです。薬がいらないなんてことは無いです。」


受付嬢がさらに顔を近づけて話してくる。


あと少しで、額と額が当たりそうだ。


「いや。俺に何かあればって、受付嬢に何かされそうなんだけど・・・。」


アスタロートは誰にも聞こえない虫のさえずりのような声でアスタロートがつぶやく。


「え、何か言いましたか?」


受付嬢の額と額がぶつかる。


女性免疫のすくないアスタロートは、後ろの藁にもたれ掛かるようにして受付嬢から距離を取る。


本当は、面と向かって言いたかったが、アスタロートの理性がそれをしなかった。


「世話役って、もう大丈夫だし自分でするよ。フルーレティーには俺から言っておくから。」


前世でそれなりに成功を収めていたアスタロートだったが、独り身だったこともあり身の回りのことは常に自分でやってきていた。


自分でやってはいたが、ごはんは外食することがほとんどで料理に関しては全く身についていない。


アスタロートの返事を聞いて、受付嬢は再度、距離を詰めてくる。


「いけません。これが私の仕事ですから。町の英雄であるアスタロートさんの世話役を途中で放棄したなんて噂が広がれば、私はこの町にいられなくなります。いいですね。明日のこの時間にあなたはここにいる。分かりましたね。」


受付嬢の目と目が会う。


あっ、この人顔は笑っているけど、目が笑っていない。


「分かったよ。いるから、ここにいるから。」


受付嬢の圧に耐えきれず、返事をしてしまうアスタロート。


「はい。分かればよろしい。」


受付嬢は、良い返事を聞けて、顔をアスタロートから遠ざける。


この町の人間の肩書きは奴隷だが、立場が全然低くない。


いや、低く無いのは良いことだとは思うのだが、なぜ、俺に拒否権がなかったのだろうか?


「では、私はこれから、ギルドで料理の仕込みをしてきますので、アスタロートさんも何か食べたいものがあれば来てくださいね。」


受付嬢は、テキパキと薬を直しながら、そう言い残すと、はしごから下の方へと下りていった。


嵐が過ぎ去っていったようだ。


「はぁ。」


明日からも薬を塗られると思うと、ため息が出てしまう。


受付嬢から離れるために、後ろの藁に倒れかかっていたので、左手を突いて体を起こす。


体を起こしてから異変に気づく。


あれ、傷が痛まない。


塗られた場所は、未だに鈍い痛みが続いているが、体を支えたときの痛みは全くなかった。


いや、感覚が麻痺しているだけなのか?


塗られた薬の大半はアスタロートの活躍と怪我を聞いた村人が無い知識で気持ちだけはしっかり込めて作った独創的な薬である。


ほんの少しだけ、良く効く薬が入っており、痛みを和らげる効果のある薬や、菌を殺すような効果のある薬が入っていた。


その薬のおかげで、左手を動かしてもそれほど痛みを感じなくなっているが、真逆の効果の薬が数多くあり麻酔効果のある薬ではその痛みを打ち消せず、鈍い痛みが続いている。


アスタロートは考えても分からないので、とりあえず薬が効いていることにするした。


左肩の様子を確認しながら、リザリンが持ってきてくれた、果実を再び手に取る。


氷のスプーンを再び生成して、一匹ずつ寄生虫とその周りの果実を少し多めにすくって外に投げ捨てる。


「はぁぁ。」


アスタロートは、今後のことを思い再びため息をつく。


明日、もう一度塗り薬を塗ることも嫌だが、西国の勢力とどんどん対立して言ってしまっていることを考えるより一相深いため息がでる。


心地よく目覚めたはずだったが、塗りぐすすりを塗られてすっかり目が覚めてしまったアスタロートは、今後、どのように立ち回っていくべきか考えながら、寄生虫を1匹ずつ取り除いていく。


人攫いに、加勢することを決めたとき、簡単に最初的だったけどいつの間にか味方になっているポジションの見方になればいいって思ったけど、どうやったら見方になるの?


良くあるのは、共通の敵と戦う際に共闘して打ち解けるパターンが王道的な展開なんだろうけど、共通の敵は魔王しか思いつかないしなぁ。


魔王戦が始まる前に勇者パーティーの仲間になってしまわなければ意味が無い。


「はぁ。どうにかして、いい感じの仲間になれないかなぁ。おっ、こいつでかいな。」


ため息をつきながら、新たにすくった大きな寄生虫を外に投げ捨てる。





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