61. 特記戦力 ピィカ戦
オーラ武装を装備したままでは、素早く飛行できないためオーラ武装を解除しジャンプする。
「よっしゃー。いけー。」
空に飛び上がると、リザリンが下から声を出す。
ジャンプ中に何度か羽ばたき高度を上げソレクレンチョウがいる高度まで飛ぶが、近づいてくるアスタロート確認したソレクレンチョウは逃げ始めるが、遅い。
アスタロートは、羽根で方向を変えて追撃する。
アスタロートにとって、速さを重視して飛ぶことは初めてだが、思ったより早く飛べている自分に高揚している。
逃げるならもっと早く行くべきだったな。
ソレクレンチョウを追い越しながら斧を振るう。
勿論、ペンダントも回収済みだ。
両断された、ソレクレンチョウが力なく落ちていくのを横に見ながら、高度を下げていきリザリンの元へと降り立つ。
「よくやったアスタロート。で、どんな奴なんだ?」
「どんな奴って?」
「何だ。まだ見てないのかよ。ほら、そのペンダントの中身だよ。俺もまだ、特記戦力1位の姿は見たことないんだよ。」
「お前、俺に取りに行かせたの自分が見たいからじゃないだろうな。」
「えっ、ちっ、ちっ違うわい。俺が人間の女に興味を持つわけないだろ。ただの興味本位だよ。」
「やっぱり、見たいだけじゃねぇじゃよ。」
「はぁ。見たら返すからな。」
「おう。早く見せろ。」
リザリンが、息を荒くしてのぞき込んでくる。
アスタロートも、ピィカが惚れるほどのおばあちゃんが、どんな容姿をしているのか気になるかといえば気になる。
「じゃぁ。開けるぞ。」
ヒュン。
2人でペンダントをのぞき込むようにしてみようとすると、雷光が横切った。
手に衝撃が走ると共に手の中からペンダントは消えていた。
「いてててて。」
手首を押さえながら雷光が走った方へ目をやるとそこにピィカが立っている。
「おい。見せてくれるんじゃなかったのかよ。」
リザリンが抗議する。
「俺が油断したばっかりに、お帰りなさいばぁさま。」
ペンダントを空に掲げて見つめてから、熱い抱擁を交わす。
「おい。無視をするな!取り返してやったのは俺たちだぞ。」
リザリンが声を掛けてやっとこちらに気づいたのか、こちらを向く。
「ペンダントを取り返してくれたことには礼を言おう。ありがとう。そして、俺は気が変わった。もう油断しない。ペンダントも見せない。」
ピィカは大剣を構え、オーラを纏い出す。
視線も鋭くなり、まるで先ほどとは別人のようだ。
本気で戦いに来るようだ。
「だから、言ったんだよ。逃げようって。森の中で見失えば逃げ切れるかも知れないから。」
「うるせぇ。俺はペンダントの中にを見たかったんだよ。」
文句を言いながらも、アスタロートはオーラ武装を再び装備する。
リザリンも体にツチの鎧を纏い出す。
「ん?リザリンもオーラ武装出来るのか?」
「いや、俺のはただ土を体に纏い防御力を上げているだけだ。お前らのオーラ武装と比べれば、無いに等しいがな。気休めだよ。それより、お前は俺を抱えて飛べるか。」
「やってみないと分からないが。なんとかするよ。」
「じゃぁ。なんとかしろ。足止めしたら飛んで逃げるぞ。それしか奴から逃げられる気がしない。」
「分かった。」
アスタロートが、リザリンの前で斧を構える。
先ほど、ソレクレンチョウに対しての攻撃手段が少なかった。
ペンダントを傷つけることが怖くて攻撃しなかった可能性もあるが、上空への攻撃手段が乏しい可能性がある。
逃げる際、それに逃げるのはいい手だろう。
おそらく、リザリンが面と向かってこいつと戦うことは厳しいだろう。
今回は、勝てなくてもいい。
時間を稼いでから逃げればいい。
ソレクレンチョウで分かったが、あいつは空高く飛べば攻撃する手段がない。
ならば、逃げるのは簡単だ。
ピィカとアスタロートがにらみ合う。
アスタロートは、自身よりも強い物に相対しているが、凄く冷静でいられている。
「ふん。俺の闘気に臆さず構えるとは、バクマンを下した実力は本物の様だな。だが、俺に会ったが最後だ。全員仕留めて国民は帰してもらうぞ。」
ピィカがアスタロートに向かって突っ込んでくる。
あまりのスピードにアスタロートは一歩も動けずに、その場で斧を振るう。
ガキン。
ピィカの大剣とアスタロートの斧が交差する。
ピィカの攻撃を受け止めると、腕に電気が走ったかのように痺れる。
ビリビリビリ。
ピィカの大剣は帯電しているのだ。
ピィカが斧を力強く押してくる感覚が斧ごしに伝わってくる。
「ハハハハ。寒くて息が白くなるぞ。」
ピィカの白い吐息がアスタロートにも届く。
力は拮抗しているが、ピィカにはまだ余裕があるように見える。
「俺が雷で、お前は氷か。」
そうつぶやくと、アスタロートを押し切り、ピィカは後ろに飛ぶ。
「チッ」
少しよろけたアスタロートは、舌打ちをしながらすぐに体勢を元に戻すが、ピィカが眼前に迫っている。
本当に、早い奴だ。
先ほど距離をとったのに、アスタロートの体勢が崩れたのを見て着地と同時に距離を詰めてきた。
初撃はなんとか対応するが、ピィカの攻撃は加速していく。
クソ防ぎきれない。
斧での防御が間に合わず、オーラ武装に被弾していく。
金属音が鳴り響く中、アスタロートに余裕はなかったが、冷静ではあった。
オーラ武装で守られている場所の防御は捨てるしかない。
ピィカの攻撃は、スピードを重視しすぎて、攻撃に重さがない。
オーラ武装で攻撃を受けることで、急所への攻撃は確実に防ぎ、隙を突いてはカウンターへでる。
オーラ武装で殴られた場所は、木刀で殴られたかのような鈍い衝撃が走り、また電気が流れたかのように体が一瞬硬直するが、耐えられない攻撃ではない。
少なくとも、オーラ武装が剥がれ落ちるまではこの攻撃には耐えられる。
「ほう。器用なものだな、そしてタフだ。このスピードに食らい付き、雷流にも耐えて致命的なダメージは避け反撃までするのか。」
2人は、お互いの間合いの中で壮絶な打ち合いを続ける、一方は喋る余裕もないが、もう一方は喋る余裕がある。
しかし、アスタロートは1人で戦っているわけではない。
「ブルァーッハッハッハ。アスタロートそのまま攻撃を引きつけろ。」
リザリンが、ピィカの背後から攻撃を仕掛けに来る。
大きく振り上げられた右腕には、土が纏わり付いており肥大化している。
リザリンの目には、2人とも互角に打ち合っているように見えたのかも知れないが、実際は違う。
猛攻をなんとか凌いでいるアスタロートには、自由に間合いから離れることは出来ない。
それに対して、余裕のあるピィカは違う。
吹き荒れる打ち合いのもとアスタロートはピィカの口角が上がるのを見た。
「リザリン来るな!!」
アスタロートの眼前にいたピィカが消えた。




