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59. 人狩り終結

「頼む。俺も連れて行ってくれ。無理も承知なのは分かっている。」


屈強な男が、リザリンの前に現れる。


戦士の風格だ。


「無理を承知しているなら、諦めてくれ。」


リザリンが、もっともなことを言う、無理を承知しているなら言うべきではない。


人狩りに同行してから気づいたが、リザリンってこんなにまともだったんだな。


パンケーキを投げたり、泥団子を投げたりと頭のイカれた魔人だと思っていたが、かなりまともだ。


リザリンの返答に納得がいっていない男は、オーラを纏いだす。


「そうか、なら力尽くで行かせてもらう。」


「お前の実力なら、1人でも十分森を行けるだろが、俺たちを相手にするには速すぎる。」


「市民権を得られなければ意味がないのだ。」


この男、奴隷になることを完全に市民権って言っちゃったよ。


「ブルァーッハッハッハ。俺たちは、奴隷を狩りに来ただけで、フルーレティー様の領で生活できる権利を与えに来たんじゃねぇぜ。」


男やリザリンが動き始めようとするよりも先に、ノーズルンが動き始めた。


深い緑色のオーラを纏ったノーズルンは、音もなく地面を這うように走る。


走行姿勢は、驚くほど低くアスタロートの膝くらいの位置に頭が来るほどの前傾姿勢だ。


4本の腕は水平に広げられている。


その姿は、完全に捕食者の姿だ。


シャァァアァーーー。


もし捕獲対象がアスタロートであれば、あまりのおぞましさから悲鳴を上げて何も出来ずに無抵抗で捕まることだろう。


屈強な男は、ノーズルンに気づくと、その屈強な体からは想像も付かない悲鳴を上げた。


「きゃぁっ。」


男は、武器を手放すと両手を顔の前でクロスさせ顔を背け、脚は内股だ。


さっきまでの威勢はどこへ消えたのか、男はこれと言った抵抗も出来ないままにノーズルンに捕らえられた。


捕らえられた男は、泡を吹いて気絶している。


その屈強な男にアスタロートは内心笑いながらも同情した。


アスタロート自身あんなおぞましい者に急に襲われたら何も出来ない自信がある。


「ノーズルンよくやった。そのまま寝かせておけ。」


続いて、リザリンは周囲の者に指示を出す。


「よし。これで、じゃんけん大会は終わりだ。勝者は荷台に乗り込め。」


勝者達は、手荷物も何も持たずに喜々として荷台に乗り込んでいく。


人狩りメンバーの皆が、人々が乗り込む荷台に気を取られていることに気がついた、アスタロートはふと周囲を見渡して見ると、一筋の雷光がリザリンめがけて飛んできている。


雷光に気づいたアスタロートは、リザリンに声を掛け瞬時に飛び出す。


「リザリン!」


雷光は、雷を纏った騎士だ。


リザリンがアスタロートの声に気づきのんきに振り返ってくるが遅い。


間に合わない。


纏っていたオーラで瞬時にオーラ武装を展開し身体能力を上げても五分五分だ。


このタイミングで攻撃を仕掛けてくるってことは、こいつは騎士団だ。


そして、俺よりも速い、間違いなく噂されていた特記戦力だ。


「はっ!」


走りながら斧を生成し直線移動する雷光に斧を振るう。


雷を纏った騎士、跳躍しそのスピードも相まってリザリンや民衆を大きく飛び越えていった。


リザリンは、突然の出来事に口を大きく開けて固まっている。


この隊のリーダーはリザリンだ。


リザリンが、呆けているとこのまま、あの騎士団と全員で戦うことになる。


実際に、ノーズルンやその他メンバーは戦闘態勢に入っているが、アスタロートの本能が警告をならしている。


あのスピードは完全にアスタロートを上回っていた。


危険だ。逃げるべきだ。


「リザリン!」


アスタロートは、呆けていたリザリンに二度目の声を掛ける。


瞬時に、我に戻ったリザリンは、アスタロートの期待に応える指示を出す。


「全員、即退却。この場にもう用はねぇ。全員で荷台を背負って全力で走れ!殿は、俺とアスタロートだ。行け。奴は、特記戦力だぞ。」


リザリンのかけ声を聞き、周囲の人たちは慌ただしく動き出す。


魔人達は荷台を担ぎに行き、町の人達は急いでこの場から離れていく。


リザリンが茶色いオーラを身に纏い近づいてくる。


「お前がいてくれて、助かるぜ。あの速度は特記戦力だ。相手に勝てるとは思えねぇが時間稼ぎをしないと全員おじゃんだ。俺が援護するから前線は頼む。」


いやいやいやいや。一緒に逃げないんですか?


特記戦力って力将とか技将と同等の強さなんでしょ。


もっとやばい奴だと、魔王と匹敵するって聞きましたけど!!


アスタロートは内心、リザリンを罵倒しながらも、答える。


「任せろ。」


まぁ、みんなで逃げても追いつかれることは分かっている。


ここは、腹をくくるしかない。


アスタロートは、オーラを纏い直し、斧を構える。


アスタロートは、期待されると簡単にそれに答えようとする。


その姿勢が、ファン獲得にもつながり一流の俳優へと登り詰めた要因の一つでもある。


「ブルァーッハッハッハ。頼もしいぜ。まだ味方でいてくれるってことは、人狩りは満足のいくものだったんだな?」


「ふん。」


人狩りという呼称には不満しかないが、それ以外に不満はない。


西国から東国へ民が移動することは両国間の決まり事とかで違法なのかも知れないが、当事者同士の利害は完全に一致している。


ならば、アスタロートにこの人狩りを裏切る理由はない。


だが、この数日悩まされたこともありアスタロートは素っ気なく返事する。


「アスタロートさんお願いします。」


魔神達はそう言い残し森の中へと、ここへ来る移動中とは比較にならない速さで走り去って行く。


人に頼りにされるのは悪い気はしない。


数日間の悩みもなくなり、アスタロートの体は今凄く軽い。


町民も逃げていなくなりこの場には、人垣を飛び越えていった騎士がよく見える。


騎士団の服装はバクマンやポメラニスが着ていたものと酷似しているが、マントが大きく文様も異なっている。


全身がビリビリと雷が帯電したかのような半透明の鎧を纏っている。


「当たり前だが、オーラ武装か。」


リザリンがぽつりとつぶやく。


騎士が、大剣を構えて身を屈める。


「来るぞ。」


リザリンが言うが速いか同時に、弓矢のように一直線に森の中の荷台の方へ走っていく。


アスタロートも瞬時に理解し、騎士を荷台の後を追わせないために騎士の進路を阻むように体を滑り込ませ、斧を振るう。


ガキン。


斧と大剣が交差する。


お互いの武器がはじかれお互いに多々良を踏む。


パワーは互角だが、スピードではアスタロートが完敗している。


荷台が消えていった茂みには、アスタロートとリザリンの立ち位置の方が近かったのに、騎士に突破され掛けた。


振り切れると思っていたのだろう騎士が、目を見開いてアスタロートを見つめる。


「まさかこの俺を二度も邪魔できる奴が知将の領にいるとはな。そうか、お前がバクマンとポメラニスを下した亜人だな。ここで消すとしよう。」


騎士が剣を構える。


「気を付けろ、アスタロート。相手は特記戦力ナンバー2の雷光がピカっだ。まともにやり合うな、撤退戦だ。」


「違う!!それでは、雷がまぶしいみたいじゃないか!私は、雷光のピィカだ。よく覚えておけ。」


リザリンが、相手の情報を教えてくれるが、騎士ピィカが剣を振り上げて抗議する。







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