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56. 人狩り開始

アスタロートが戦闘のリザリンにつかず離れずの距離でついていっていると、奥の方に村人がいる。


まだ、こちらの存在に気づいていないようだが、アスタロートは背の高いオオカミの亜人の後ろに体を隠しながら歩いていく。


これから悪いことをするのに、あまり周りの人に見られたくない。


リザリンたちを裏切って西国側で戦うにしても、最初東国側の人と一緒にいたと思われたくないし、そもそもこれから犯罪行為を行うのに白昼堂々町中を歩けない。


身を縮めながらオオカミの亜人の後ろについていると、ノーズルンが話しかけてきた。


「アスタロートさん、こそこそしてどうしたんですか?」


ノーズルンが、こちらを気にして話しかけてくる。


「俺からしたら、これから人狩りする町を堂々と闊歩している方が変だよ。」


「アスタロートさんも魔人の国の民なのですから、この場はカッコ付けてもらわなければいけません。」


ノーズルンは、カッコつけるためなのか「シャー」っと声を上げながら両手を上に挙げ、2本のナイフをそれぞれの腕に持ち威嚇する。


シャーシャー。


威嚇を続けるノーズルンは、腰に巻くように隠していた3本目4本目の腕を出し左右に広げる。


ノーズルンは、声は可愛らしいが、見た目がダントツで怖い。


声や着ている服からメスであることは間違いないのだが、ダントツで怖い。


シャーシャー。


両手を広げ切ったノーズルンは、左右に開いた口から管状の舌を出し、管の先からチロチロと舌が動いている。


「ひぃぃ。」


あまりの風貌にアスタロートは誰にも聞こえない程度の小さな悲鳴を上げる。


正直彼女の種族は、コミカルな異世界転生後の世界線にいるような容姿ではなく、ホラーゲームの世界線に出てくるクリーチャーだ。


意思疎通が図れる存在であることを知っているアスタロートは逃げ出さずに済んでいるが、夜道で彼女に出会ったら裸足で逃げ出しているだろう。


「お、ノーズルン今日はやけにやる気だな。」


ノーズルンの威嚇のポーズを見て、アスタロートの前を歩いていたオオカミの亜人が反応する。


「前回は失敗しましたからね。」


舌を出しているたノーズルンの声が低くなっている。


「へへ。なら俺も、すぅぅ~。」


オオカミの亜人は、大きく息を吸い込み、胸が大きく膨れ上がり


「ワォォォォォォ~~~ン。」


空に向かって遠吠えをした。


「なっ馬鹿。こんな町の端っこで遠吠えなんかしたら・・・」


アスタロートが驚いて止めようとするが、もう遅い。


遠目で見えていた人がこちらの存在に気づき、大きな声で叫ぶ。


「わぁぁぁ。人攫いだぁぁぁ。」


遠目で見えていた少年は、悲鳴を上げ、尻もちを突く。


そりゃ、こんな魔人の集団を見ると驚くのも無理はない。


少年は、すぐに立ち上がり町の中心の方へ人攫いだと叫びながら走りさってしまった。


「あーあ。こりゃ面倒ごとになるぞ。」


リザリンが踵を返してオオカミの亜人に声を掛ける。


「すっすまん。気持ちが高ぶってつい・・・。」


オオカミの亜人は気持ちが高ぶると遠吠えをしてしまうらしい。


リザリンは、その場に座り込み、みんなその場から動こうとしない。


このままでは、先ほど逃げた子供が町中に人狩りをしに魔人たちが来たことが知れ渡り、今回の計画は失敗しそうだがこのままでよいのだろうか。


アスタロートとしては、このまま何事もなく失敗で終わることはよいのだが・・・。


リザリンが面倒ごとになると言っていたが、何か行動を起こそうとしている様子はない。


もしかして、町の騎士団とここで一戦交えるつもりなのだろうか?


「おい、これからどうするんだ?」


隣で、威嚇のポーズをとっているノーズルンに声を掛ける。


「ここで待つしかないですよ。いつもなら、こじんまりとしているんですけど、今回は大勢集まるでしょうね。」


どうやら本当にここで、集まった騎士団と戦うつもりのようだ。


それもそうだ。今こうして留まっている間にも、少年が人狩りの凶報を町中に広げて、その凶報が人から人へとねずみ算的に広がっているのだろう。


町の騎士団は全員集まるだろうし、町民はどこかに避難していることだろう。


もしそうなった際は、アスタロートは騎士団側についてリザリンたちと戦うだろう。


少し後ろ髪をひかれる思いだが、ここは割り切るしかない。


リザリンも自分の信念に基づいて行動しろと言っていた。


彼らと行動を共にするのも彼らが戦闘を始めるまでだ。


アスタロートが反旗を翻すことを心に決めると少年が逃げて行った道の奥から大勢の人影が見えてきた。


ん?


なんだか様相が変だ。


この間いった町で戦った騎士団は、みな古プレートの甲冑を身にまとっていたし、バクマンやポメラニスも階級により違いはあるものの統一された制服を着用していた。


それなのに、向かってくる人影は統一された制服どころか、私服に見えるし、手には武器も持っていない。


我先にと走ってくる村人たちの表情が次第にはっきりと見え始めるが、彼らに危機迫るもは感じられない。


「人攫いが来たぞーー。」


戦闘を走っている男は、拳を上げながら先導するように走ってきており。


リザリンがいる元へと続々と人が集まってくる。


その列はとどまることなく町の奥の方へと点々と続いている。


「俺を連れて行ってくれーー。」


「今度こそ私を連れて行ってーー。」


「嫁が向こうへ行ったんだ、俺も行きたい。」


「行きたーーい。」


「連れてってくれー。」


リザリン一行の前まで集まった集団は、連れて行ってくれと口々に叫びだす。


アスタロートは、攫われに来た町人のことを、口を大きく開けてしばらく眺めていた。


開いた口が塞がらないとはよく言ったものだ。


本当に何から突っ込めばいいのか分からないが、この人攫いはフルーレティーの領にいた人間公認だったことを思い出す。







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