45. ゼッキョウバードの鳴き声
リザリン達と共に、森を抜けギルドに向かっていると、多くの魔物がギルドを目指して森から出てきていた。
ぞろぞろと町へ向かうその様子は、これからフルーレティーの町を襲う魔物の集団にしか見えない。
アスタロートはリザリンとその修行仲間達と一緒に町へ向かっている。
「それにしても、他に招集を伝える方法はないのか?」
いまだに耳鳴りがする耳をさすりながら、リザリンの横を歩く。
名前の知らない他の魔族や亜人達はアスタロートとリザリンから少し距離を取り話そうとしてこない。
前世でも、大物俳優には近づきがたい雰囲気が出ていたし、それとおんなじなのだろう。
アスタロートは自身がこの世界でそれなりの実力者であることを理解している。
少し遠慮気味にリザリンとアスタロートの後ろをついてくる。
「ブルァーッハッハッハ。色々試したんだが、あのゼッキョウバードが一番招集できるんだ。」
「いや、あれはうるさすぎるだろう。近くで鳴かれたときは耳が聞こえなくなるよ。」
「まぁ。そういう鳥だからな。知ってたか? 人間があの鳥の鳴き声を間近で聞くと耳が聞こえなくなるんだぜ。」
「えっ!マジなの。」
驚異的な鳴き声で思わず聞き返してしまった。
「あぁ。そうだぜ、ギルドの人間に聞いたんだ。間違いねぇ。ゼッキョウバードは、帰省本能が強く、子育ては生まれた場所でするんだが、西国に帰る個体はもういないらしい。全く、自分たちに合わない種を駆逐するなんて、自然と共存できない野蛮人だな。とんでもなぇ奴らだ。」
「・・・。」
ぽつりとつぶやくように人間に対する不満を口にするリザリン。
前世の人間も同じようなことはしている。
この世界には、魔族や亜人といった同じ言語をあやつる種族がいるからこのような意見を聞けるんだろうな。
この異世界にきて数日だがなんとなく分かってきた。
この世界の魔人は自然と共に生きている。
日中町の近くにいたりすることはあるが、自然の中に自分の巣を作りそこで暮らしている。
きっと人間よりも自然を大切にしているのだろう。
あんな人騒がせなゼッキョウバードだって、きっと大切な仲間なんだろうな。
「まぁ。ゼッキョウバードは俺も嫌いだが同じ領地に生きる仲間だ。正直うるさくてかなわないこともあるが、俺たちは人間みたいに種を根絶やしにしようなんて思わない。馴れてしまえばあのうるさい鳴き声もかわいいもんさ。お前もそのうちなれるぜ。」
リザリンが親指を立ててギザギザの歯を見せてくる。
「ふーん。あの鳴き声になれるとは思えないけどね。」
「ブルァーッハッハッハッハ。心配いらないぜ、そのうちあいつの鳴き声を聞きながら鼻歌を歌えるってもんだ。」
リザリンは得意げに話しているが、アスタロートは先ほどゼッキョウバードの鳴き声を聞いて一緒に耳を塞いで耐えていたのを知っている。
「へぇー。」
リザリンの発言に半信半疑で返事をする。
あの鳴き声を聞きながら鼻歌を歌えるようになるのは盛りに持った話だろう。
だが、同じ領土に生きる生物として共存しようとする姿勢は本物のように感じた。
出てきた森のほうを振り返りどのくらい町に近づいたのか見てみると森のほうから見覚えのある緑色の鳥が近づいてくる。
ゼッキョウバードだ。
森の奥の方から鳴きもせず音を立てずに滑空するように町のほうへ向かって飛んでいく。
このコースならちょうど真上を通るようだ。
リザリンたちは気づいていないようだが、鳴いていないのであれば存在を伝えなくても問題ないだろう。
先ほどは鳴いていてじっくり見る余裕はなかったが、改めてみると美しい鳥なのだな。
赤いトサカに尻尾のほうに行くにつれて緑から黄色になっている。
滑空してきて近づいてきて頭上を通り過ぎそうなときに年のため耳を塞ぐアスタロート。
「ん?アスタロート、耳なんか塞いでどうしたんだ?」
リザリンが、私の行動に気づき聞き終わったか終わってないかくらいで、ゼッキョウバードが鳴いた。
ピーロロロロロロ。
「グワァァァ。」
ノーガードで頭上からの鳴き声にリザリンとその仲間たちが地面を転がりのたうち回る。
ゼッキョウバードはなぜか町のほうへ飛んでいかずにリザリンたちの頭上を円を描くように飛んでいる。
ゼッキョウバードは、憎たらしい目をこちらに向けながら飛んでいる。
あの鳥、分かってやってやがるな。
ゼッキョウバードの鳴き声をもろに聞いたリザリンたちは耳を塞ぎながら地面を転がっている。
あまりの音の大きさに脳がやられたのだろう。
のたうち回るリザリンの姿はとても鼻歌を歌っているようには見えない。
こんな鳴き声になれるわけがない。
馴れれば大丈夫などと言っていたが、実際になれることはないだろう。
こんなにも何度も頭上を回りながら鳴かれたらたまったもんじゃない。
鳴く前に耳を塞いだから何とかこらえているが、耳を塞がなかったらと思うとぞっとする。
バクマンの流星ボムの爆発音も霞んでしまうほどの音だ。
「うるせぇぇ。ぶっころしてやらぁぁぁぁ!!!」
その鳴き声に耐えきれなかったのか、リザリンが泥団子を全力で鳥に向かって投げる。
それに続いて一緒に修行をしていた面々も次々に泥団子を鳥に向かって投げる。
ゼッキョウバードは、投げられる泥団子を躱すそぶりも見せずに町のほうへ飛んで行った。
「くそったれめ。耳がいかれるじゃねぇか。」
「・・・。」
「あぁん。なんか文句でもあるのか?」
アスタロートが黙ってリザリンのほうを見ているとリザリンが話しかけてきた。
「鳴き声を聞きながら鼻歌歌えるんじゃ・・・。」
「うっせー。そんなもんできるわけねぇだろ。」
ゼッキョウバードも大切な仲間だと言っていたリザリンの威厳はなくなっていた。




