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43. 修行

バクと離れ、リザリンを探すアスタロート。


言われたとおり、太陽の方向へしばらく飛ぶとすぐに魔人が数人集まっている場所を見つけた。


空から様子を伺ってみると、戦闘の訓練をしているようだ。


各々が好きな場所で好きなように技を出したり、筋トレしていたりしている。


リザリンは、湖の近くで泥団子を投げて遊んでいる。


本当にあれは修行をしているのだろうか?


泥遊びをして遊んでいるようにしか見えない。


アスタロートは疑問を抱きながらゆっくりと高度を下げてリザリンのいる場所に降りていく。


高度を下げていくと、リザリンがこちらに気づいたのか声を掛けてくれる。


「ん?おぉ。お前は新入りじゃねぇか。」


「おはようございます。」


リザードンの前に立ち挨拶を返す。


改めてリザリンの前に立って話すとリザリンの体格の良さがよく分かる。


背はアスタロートより大きく、顔はトカゲと言うよりワニのようだ。


肩幅も広く、手は大きくアスタロートの顔と同じくらいのサイズだ。


顔を捕まれでもしたら卵のように潰されそうな気がする。


実際にはアスタロートの顔は硬くリザリンが握り潰そうとしても潰せないが、一般の人間相手には想像通りになる。


まじまじとリザリンを観察していると向こうの方から声を掛けてきた。


「俺の修行場まで来て、どうしたんだ?」


どうやら、ここはバクが言っていたとおり修行場で間違いなかったようだ。


泥団子で遊んでいたのは、ちょっとした息抜きだったのだろうか。


「え~っと。知り合った魔人に強くなりたいと言ったらお前を紹介されてな。ここで、人を集めて強くなる修行をしていると聞いた。その、私にも修行を付けてくれないだろうか?」


改めて人にお願いするというのは、照れるものだな。


「はぁ? お前が俺に? 昨日のオーラで気づいてるんだぜ。俺より強い奴に教えることなんてねぇよ。冷やかしなら帰ってくれ。ほら、シッシ。」


リザリンは、追い払うように大きな手で追いやるような仕草をする。


いや、ここで追いやられると教えを乞う人を失ってしまう。


「ちょ。少し待ってほしい。」


リザリンの行く手を阻むように移動する。


「あぁ。なんだ。まだ、何かあるのか?」


突如現れた私がリザリンに話しかけている様子を見て、各々修行をしていた数人の魔人や亜人が集まってきた。


「私の戦闘は我流だ。以前から一度きちんと師事を受けたいと思っていたのだ。だから、昨日のクリームケーキを投げた姿も素晴らしかったし、知り合った魔人に聞いてもやはりあなたの名前がでた。私が教えを乞うのであればあなたしかいないと思うんだ。」


アスタロートの言葉を聞き、周りの魔人がざわつく。


「おぃ。あいつって、最近フルーレティー様の側近になったって言う奴だよな。そんな奴が、リザリンさんに教えを乞うなんてやっぱり、リザリンさんってすげぇんだな。」


「あぁ。俺も、リザリンさんと一緒に修行出来ていて嬉しいぜ。」


私が行く手を阻んで来たことにうんざりしていたリザリンだったが、周りの会話が聞こえたのだろう。


おそらく顔をにやけさせている。


リザードンの生態には詳しくないが、口角が上がって、目も三日月形になっている。


ぱっと見ると、凶悪なリザードマンが不気味な笑みを浮かべているようにしか見えない。


はっきり言って、怖い。


「よし分かった。お前がそこまで言うなら俺様が教えてやろう。」


周りの声に気分を良くしてのだろう、周りにも聞こえるような大きな声で答えてくれる。


「おぉ!!!」


アスタロートがリザリンに師事を乞うことが決まり周りにいる魔人や亜人から声が上がる。


「ありがとう。」


「じゃぁ。早速教えてやろう。俺が教えると言えばこれしかないだろうな。特別に教えてやる。」


リザリンの代名詞とでも言えるような技を教えてくれるのだろうか?


泥団子を投げているところを見て少し不安だったが、声を掛けてみて良かった。


リザリンに付いていくと、他の魔人や亜人から見えない場所まで来た。


ここで、どんな修行をしていたのだろうか。


周囲の木々には泥がこびり付いている。


かなり前に付いた汚れなのだろう、泥は乾き薄い灰色のような色をしている。


泥の付き方からすると、この場所から全方向へ泥が吹き飛ぶような技を練習していたのだろう。


「この場所は、俺が使っている技を習得するまで使っていた場所だ。」


「へぇ。で、何を習得したんだ?」


「あぁ。そこでよく見ておけ。」


肩を大きく回して準備運動をするリザリン。


リザリンの側に立って固唾を飲む。


首を左右に揺らし、右手で土を取り握りしめる。


集中するように目を閉じるリザリン。


修行に魔法は使用しないようだ。


リザリンの体からオーラは見えない。


「おりゃぁぁぁ。」


目をカッと見開いたリザリンは、目にもとまらぬ速さで野球のピッチャーのように泥を木に投げつけた。


ベチャ。


真新しい水を含んだ泥は、木に命中し薄い灰色の泥の上に濃い色の丸い印を残した。


「どうだ。よく見たか?まぁお前なら見えただろうが、これが俺の泥投げだ。応用すればお前もパンケーキを投げれるようになるぜ。」


なんて、返せばいいのだろうか。


修行をつけてくれと頼んだら、泥を投げる姿を見せつけられてどうしろというのだろうか。


俺の期待を返してほしい。


「・・・。」


「おい。どうした?よく見えなかったか?もう一度やっていやるからよく見てろよ。ただ腕を振るうのではなくてだな、体全体を使うように腰を回しながらだな。」


私がただの泥投げを見て放心していると分からなかったのかと思ったのだろう、地面の土を掴んで何度も投げるリザリン。


「そんなことは、知ってるわぁぁぁ。」


アスタロートは、地面の土を掴んで脚を高らかに上げ近くの木に向かって投げつけた。






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