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38. vs騎士団

四方八方に浮遊している靄が発する光を強くしながら降り注いでくる。


流石奥義というべきか、すべて斧で切り裂くのは難しそうだ。


そう判断すると、アスタロートは、前方への回避を始める。


走り出したアスタロートに追従するように流星ボムが降り注いでくるが、追いつかなかったものはアスタロートの後方で爆発する。


前方から近づいてくるボムは、左右にステップを踏みながら斧で切り裂いていく。


爆発の威力が強いが、爆風にあおられて倒れるほどではない。


周囲の靄を確認しながら動き回るアスタロートに視界の端で動く者を捕らえる。


そんな、まさか。


とても動ける状態じゃなかったはずだ。


小さな影は、水しぶきを上げながら今だ爆発し続けているアスタロートの元へと走ってくる。


ポメラニスだ。


「海流断罪剣!」


アスタロートと打ち合うということは、バクマンの爆破魔法に晒されるということだ。


アスタロートは、回避もしくは斧で切り裂くことで直撃を避けていたが、ポメラニスの剣がアスタロートに届くとそのすべてを対処するのは難しくなる。


アスタロートはオーラ武装があるため爆発を近くで受けても問題はないが、ポメラニスは違う。


オーラ武装のない彼女は爆発を至近距離で受けるだけで火傷を負い直撃すれば生死すら危ぶまれる。


気でも触れたのかと思ったが、その瞳からは強い意志を感じる輝きを放っていた。


アスタロートを倒すためにすべてを投げ打つつもりなのだろう。


「馬鹿、やめろ!!!」


バクマンの焦った声が聞こえてくる。


もともと、アスタロートに戦う理由はなく、敵も含めてここで命を落とす理由もない。


ポメラニスの剣とアスタロートの斧が振るわれ、遅れてバクマンの流星ボムが降り注ぎ、炸裂音が響き渡る。


バクマンは、ポメラニスの働きでアスタロートの動きを止め流星ボムがあたっていることを理解している。


ポメラニスは、無事ではないだろう。


バクマンは怠い体に鞭を打ちポメラニスの騎士としての覚悟を無駄にしないために最後の追い打ちの攻撃のため走り出す。


ポメラニスのことを悔やむのはその後だ。


確実にアスタロートを仕留める。


アスタロートの姿は爆塵で見えないが、場所は分かる。


最後の流星ボムがその場所へ導いてくれる。


そこだ。


残りのオーラすべてをつぎ込みバクマンの最も得意とするシンプルなバクは魔法を施行する。


「バク!」


どうだ。やったか?


バクマンに手応えはあった。


アスタロートの体に直接爆破魔法をたたき込めた。


2回目の奥義の使用で、バクマンの疲労はピークに達していた。


本来であれば宙を舞っている粉塵が晴れるまでにオーラを纏い直すのだが、今のバクマンにその気力は残っていない。


パシャ。


ポメラニスが張ったウォーターケージの魔法が解け、水が雨のように降ってくる。


ポメラニスの魔法が消えた。


力尽きたのだろう。


バクマンも重度の疲労で膝をつく。


ウォーターケージの雨は、舞っていた粉塵を洗い流し視界が急激に晴れてくる。


「放せ。貴様、なぜ私を庇った。」


ポメラニスの激高する声が聞こえてくる。


霧が晴れるとそこには、アスタロートの片翼で包み込むように抱きかかえられたポメラニスがいた。


アスタロートのオーラ武装は全体的にひびが入っており、ところどころ氷が崩れ落ちている。


ポメラニスは、アスタロートの翼を振りほどき離れる。


「敵対するつもりはないと言ったはずです。戦いたいのであれば付き合いますが、あなたが死ぬ理由にはならないのです。」


ポメラニスが剣を振るい攻撃した際、アスタロートはノーガードで受け止めた。


ノーガードではあったが、オーラ武装していた部位で受けともたためアスタロートに大きな怪我はなく、オーラ武装が崩れ落ちた程度だ。


アスタロートが振るった斧は、ポメラニスに直撃しそうな爆破魔法を切り裂いた。


爆風は翼で受け止め、次々に襲い来る流星ボムからもバクマンの最後の技からもポメラニスを庇いながら耐え忍んだのだ。


アスタロートの翼から逃れたポメラニスは剣をアスタロートに向けているが、彼女の瞳に殺意はこもっていなかった。


ウォーターケージが消えたのは、ポメラニスが力尽きたからではなく、戦意がなくなったからだ。


「行きなさい。今だけ見逃してあげる。」


「・・・。」


「早く行きなさい。さもなくば私達は手段を選ばずお前と戦うことになる。さぁ。」


ポメラニスは剣先を東の方へ向けてアスタロートに帰ることを勧めてくる。


おかしいなぁ、追い詰めたのは俺の方なのだが、ちょうど良い頃合いかも知れない。


離れた場所からは、この町の騎士団が集まってきている。


「おい、まだ、戦ってるぞ。早く行くぞ。」

「いやだ、行きたくねぇ。死にたくねぇよぉ。」

「馬鹿野郎、明日、モコモッコ教に入信すればすくわれる。」

「早く行って、団長を助けるんだ。」

「おい。本当に入信すれば助けてくれるんだろうな。」

「間違いねぇ。モコモッコ教はモコモッコ羊への感謝の気持ちを伝えたりや懺悔を行う教会だ。モコモッコ羊に刃を向けても明日入信して懺悔すればいい。」

「よし。行くぞ。」


騎士団は、みんなで集まって、少し離れた場所からのそのそとゆっくりと近づいてくる。


「よぉーし、早く行って助けるぞ。」

「速く加勢するぞ。」

「おい。前の奴早く行け全然進んでねぇじゃねぇか。」

「バカ言うな。じゃぁ、前変われよ。恐怖で脚が動かねぇんだよ。」


騎士団の集団は、鎧を脱いで身軽な格好になって、各々鍋や包丁、桑、スコップなどを持って徐々に近づいてきている。


劣勢な二人を助けるという熱量はものすごく伝わってくるのだが、彼らの脚はそれを拒否しているかのようにガクガクと震え思うように進んでこない。


牛のようにゆっくり進みながら、農機具や調理器具で威嚇してくる様からはまともな神経をしているとは思えない。


相手もかなりヒートアップしてきているし、ここで引かないとかなりややこしいことになりそうだ。


攻撃を避けてばかりだったけど、有利に戦いを進めていたのは俺の方だから見逃されるのは少し違和感あるけど、アスタロートはここで帰ることを選択する。


西国民になって少しずつ勇者に近づこうと思っていたが、こうなってしまえばこの町の住民になれる気がしないし、情報伝達も速そうだから西国民になるのは諦めた方がいいかもしれない。


ちらりとバクマンの方を見るとオーラを纏わずに成り行きを見守っている。


オーラを纏っていないことから彼も逃げるなら見逃してくれそうだ。


ここは、さっさと飛んで帰ろう。


別れの言葉にいい言葉も見つからず。


アスタロートはそのまま黙って、東へ向かって走り大きくジャンプする。


ジャンプした瞬間に、体の違和感に感じる。


体が重い。


体中に氷の鎧を纏っているのだ。


必死に羽根を動かしふらふらふらつきながらもなんとか高度を保ち飛んでいく。


クソ。


華麗に立ち去ろうと思ったのに・・・。


これじゃぁ、命からがら逃げ去ったようじゃないか。


アスタロートの飛び姿から、騎士の面々は、喜び勇んで声を上げている。


「うぉぉぉ。俺たちの雄姿に驚いて逃げたぞ。」

「ヘヘヘ。腰抜けが、逃げるなんてそれでも戦士か!」

「俺たちの勝利だーー。」

「オイ、バカ。俺たちも逃げたじゃねぇか。」

「ハハハ。最後に立っていた者が勝利なのだよ。」

「この人数に臆して逃げたな。」

「いや。俺様のこの筋肉を見て逃げたんだよ。」

「いや。この俺の使い込まれた農機具に恐れをなしてだな。」

「誰か、塩もってこい。塩。」


飛ぶのに必死だったアスタロートは飛ぶことに必死で姿こそ確認していないが、バクマンとポメラニスが頭を抱えている姿が容易に想像できる。


アスタロートは、アスタロートの町へ向かってとんで行く。


日はかなり傾いており、辺りは夕暮れに染まりつつあった。



面白かった!

引き続き読んでみたい!

と思っていただけたら、

評価とブックマークをしていただけると大変嬉しいです。


勿論評価は、正直に感じた気持ちで大丈夫です。


何卒よろしくお願いします。

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