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37. vs騎士団

「どうした?攻めてこないのか?」


バクマンの挑発に、ニヤリと笑うアスタロート。


たしかに、漂っているオレンジ色の靄は攻撃で爆破できないようだが、爆発直前の発光している状態では攻撃で爆破することが出来た。


バクマンの話を聞く限り、オレンジ色の霞はオーラで攻撃出来ないが、またオーラの状態では人を傷つけることも出来ない。


必ずオーラは魔法となる。


バクマンのオーラは強い光を発してから爆発する。


光源を切り裂くと爆発したことを考えると光を発して爆発する瞬間にはオーラから魔法に変わっているはずだ。


先ほどの全力の爆発を切り裂いて直撃をまぬがれたが怪我はしていない。


込めたオーラ量が少ない爆発も近くで爆発させてもたいした怪我にはならないだろう。


バクマンは、私が攻めないのをいいことにオレンジ色の靄を徐々に増やしている。


バクマンの表情に落ち着きが戻っていく。


バクマンに取ってアスタロートとの1対1は絶望でしかないが、起爆するオーラを周囲に配置できれば地理的な優位はたもてた。


その事実が、バクマンの心の支えとなる。


このテリトリーの中で立ち回れば、まだまともに立ち回れるはずだし、攻撃もいくつか当てられるはずだ。


「準備はもういいのかしら?」


アスタロートが尋ねてくる。


どこまでも、気持ちを逆なでする奴のようだ。

命をかけた戦闘で相手のオーラを回復する時間を待つなど、舐めているとしか考えられない。

いや、実際に舐めているのだろう。

ここまで、戦って分かった。

奴は強い。

10回戦って1回勝てればいいところだろう。

二人でどうにかなると思っていたが、どうも見当違いだったようだ。

だが、幸いにも相手はこちらを舐めている。


毎回こちらの準備が整ってから攻めてきているのもその証拠だ。


そこにつけいる隙がある。


四肢にオーラを集める。


その余裕がお前の敗因だ。

負けて後悔するがいい。


アスタロートが突っ込んでくる。


バクマンの返事を準備完了と受け取ったようだ。


バクマンは、オーラの靄の数をまばらにばらまいているように見せかけて、多い場所少ない場所を作り出している。


アスタロートといえど直撃して怯めば大きな隙となる。


多い場所ではなく、必ず少ない場所から攻めてくる。


はずだった。


アスタロートは、最もオーラが集まった場所から突っ込んでくる。


「クソ。」予想と違うところから攻めてきたアスタロートに戸惑うが、好都合だ。


奴が近づいた場所から順次爆破していき、隙が出ればそこを突いてやる。


両手を前にかざして集中する。


「バク。」


呪文と共に両手を強く握る。


ドンドンと爆発が起こるが、バクマンが煙の中から姿を現す。


この程度の爆発で隙を突けるとは思っていない。


アスタロートは、バクマンを中心に大きく回り込むように攻めてくる。


最短距離で攻めるのではなく、大きく回り込むということはより多くのオーラに接近することになる。


「バク!」


また、いくつか爆発させていくが、アスタロートには届いていない。


いや、爆発するタイミングがおかしい。


俺が起爆する合図してから爆発するまでの時間が早い。


まさか。


「バク!」


バクマンとの距離をじわじわ詰めるように円を描くように走ってくるアスタロートの近くのオーラを爆発させる。


やはりそうだ。


バクマンの懸念が確信に変わる。


アスタロートは、爆発する直前に発光した魔法を斧で切り裂いて爆発させているのだ。


そんなことを思いついても、普通の奴はやらない。

魔法を切り裂き損なうと確実に爆発に巻き込まれるのだ。


アスタロートの狙いは、俺ではなくオーラの霞を安全に減らすことだ。


だからといって、自らオーラの霞に近づいて誘爆させるような戦法は普通の神経を持ち合わせた奴はしない。

狂気の沙汰だ。


「くそったれが。」


バクマンは、これ以上設置型の爆破魔法を減らされては勝機がさらに薄くなる。


バクマンはオレンジ色の霞でアスタロートの動きを牽制しながら、バクマン自身も攻撃しにいく。


アスタロートは、ジャンプでバクマンを回転しながら悠々と飛び越え走り去る。


アスタロートは、今この世界に来てから最高にほどよいスリルを味わっていた。


凍った大地を踏みしめ走り回り、近くにある強く発光し始めた霞を優先的に斧で攻撃して回る。


爆発の衝撃波はたいしたことはなく、氷の武装が守ってくれる。


縦横無尽に走ることは気持いい。


バクマンが何度か接触してきたが、ジャンプで避けたりフェイントを掛けたりして避けた。


アスタロートは、リラックスした状態で動けている自分に少し酔いしれていた。


楽しい。


走るのが楽しい。


オレンジ色の発光した霞を破壊するのが楽しい。


少しうるさいが爆音も楽しい。


爆風が体を押し追い風となって更に加速するのが楽しい。


この状態に陥ることは俳優の時からたまにあった。


大抵、このような楽しい感情に体をまかせているとよい演技が出来た。


その気持ちにあらがわずに身を任せることを選択する。


しばらく、斧で発光する霞を攻撃しているとオレンジ色の霞が発光しなくなり空振りする。


「あれ?」


斧が空振りに終わり振り返り、バクマンに振り返る。


バクマンは、拳を握りしめながらうつむいている。


あれ?


戦意喪失しちゃったのかな。


バクマンがオーラを練りながら話しかけてくる。


「認めるよ。お前は強い。身体能力も防御力も攻撃力もオーラ量もすべて上回っている。だが、身体的優位性が勝敗に直結するわけではない。私は、負けない。」


じわじわ削るように立ち回り戦おうと思ったが、やめだ。


小手先で挑んでも勝てる見込みがない。


命をかけ戦いだ。


勝ててもただでは済まないだろう。


ならば、攻めて悔いが残らない戦いにしよう。


俺の全力を出し切る。


アスタロートは戦意喪失したのかと感じたが、そうではない。

全力を大尽くすために、地面を四肢で踏みしめているのだ。


バクマンの体から右にためたオーラ以外すべてをオレンジ色の靄として放出する。


バクマンの身体に残るオーラは一発分の爆破魔法のみ。


空気中にばらまいたオーラは今までで一番多い。


「へへへ。いいですね。」


未だに戦意が衰えていないバクマンに喜びを隠せないアスタロート。


お散歩いくよと声を掛けた時の犬の尻尾ように斧を振り回すアスタロート。


「これが俺の全力だ。奥義 流星ボム。」


バクマンが、上半身を起こし叫ぶように唱える。





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