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221. 技将と力将

「なんのつもりだ?」


突如、軍勢を引き連れてやってきた技将ベーゼルに力将バールは、オーラ武装を纏い臨戦態勢で質問する。


「ここは、力領の領土だぞ。お前が勝手に、それも武装してうろついていい場所じゃない。」


なんの先ぶれもなしに突如現れたベーゼルに、バールは警戒心を強める。


それに対して、ベーゼルは両手を挙げて戦う意思がないことを示す。


「おいおい。争いに来たわけじゃない。協力を仰ぎに来たんだ。」


「協力?脅しの間違いではないのか?」


力将バールを囲む大量の技将の複製体。


「まぁ。そう捉えてもらってもいい。お前と話をしに来たんだ、丸腰で挑むような人間じゃない。俺は魔族だからな。」


魔族とは、力の強いものが弱いものに従う。


ベーゼルは、バールの協力を仰ぐために自身の力を示しているのだ。


「随分と自身があるようだな。複製体をたくさん連れてきたら俺に勝てると思っているのか?」


だが、バールも弱くない。


多くの複製体を同時に相手にしても十分勝てる見込みはある。


「シュシュシュシュ。まぁ、そうあわてるな。何も俺だけで来たわけじゃない。今回は新しい仲間の紹介も兼ねているんだ。来い。」


ベーゼルの合図とともに、森の奥からスケリトルドラゴンスライムとそれを使役している側近のアラクルネが姿を現す。


「スケリトルドラゴンスライムか・・・。」


その強大な姿に、流石のバールも苦虫を噛んだような顔をする。


ベーゼルの複製体だけでも手がかかるのに、そんな中ドラゴン種2体など相手に出来るはずがない。


ドラゴン種2体が姿を現したタイミングで、姿を隠していた側近のウサギの魔人がバールの足元に姿を現す。


「バール様、どういたしましょう。流石に厳しいかと・・・。」


ベーゼルと戦闘になった際、他戦力が現れたらウサミが相手をする手はずで近くに控えさせていたのだが、流石に相手がドラゴン種2体だと相手が悪すぎる。


「ウサミか。まずは奴の話を聞く。お前は下がって、皆を集めて戦闘態勢を整えておけ。」


「はっ。ですが、よろしいのですか?」


「良い。皆まで言うな。」


力将バールが、技将ベーゼルの話を聞くということは、強さの序列が戦わずして決まったことを意味する。


最もバール自身は心まで屈服したわけではなく、ベーゼルの協力が飲めない内容であれば、戦う腹積もりである。


「では、お気をつけて。」


バールの心中を察して、ウサミは音もたてずに跳躍して森の中へと姿を消した。


ウサミと離れたバールは完全武装でベーゼルと向き合う。


気に入らないことがあれば今すぐに出も飛び掛かりそうな雰囲気なバールに、ベーゼルは声を掛ける。


「シュシュシュシュシュ。そう殺気立つなよ。何度も言っているだろう。俺はお前たちに協力を仰ぎに来たんだ。戦いに来たわけではない。」


「では、さっさと要件を話せ。内容次第では、分かっているな。」


「ありがたい。では、単刀直入に話す。俺はこの軍勢で西国を攻め滅ぼす。お前も一口噛まないか?もちろん、俺は技将、お前は力将としてだ。」


ベーゼルは、宙に浮きながら6本の手足を広げ、バールを自らの陣営に勧誘する。


ベーゼルが、自身とバールの立場を明確にしたのは、従属の要請ではなく対等な関係を望んでいることを示している。


「俺は、力将としてか・・・。いいだろう。協力する。だが、俺に何を求める?ドラゴン種2体にお前が相手だ。特記戦力が束になっても敵わないだろう。わざわざ、俺を勧誘しに来た理由が分からないな。好きにすればいいだろ。」


実力者のバールが味方に付いたことと、ベーゼルの戦力が評価されたことに機嫌を良くしたベーゼルは、機嫌を良くしバールの近くに腰を下ろして話を続ける。


「だが、1つ簡単に手が出せない理由があるんだ。」


「魔王様か。」


バールはベーゼルの悩みがすぐに分かった。


バールが呟くように話すと、ベーゼルが深く頷く。


バールにとっても西国と争う際は、常に魔王の動向を注視する。


今の魔王様は、西国に攻め込むことに消極的どころか、反対する。


西国とことを構えると、まず止めに来る。


無視して戦えば、西国と魔王を同時に相手にすることになる。


戦力が十分とはいえバールも、西国と魔王を同時に相手にしたくないのだろう。


「あぁ。そうだ。だからまず、目の上のたんこぶの魔王を処理する。お前には、俺と2人で魔王を討伐してほしのだ。」


「おかしいな。複製体は連れて行かないのか?」


「何を言っている、もちろん連れていく。」


「フハハハハ。では、2人ではないじゃないか。」


「シュシュシュ。そうだな。よろしく頼む。」


「あぁ。」


2人は腕を交わし、友好の誓いを立てる。


「それで、ベーゼルよ。魔王の座はどうする?」


「シュシュシュ。そう心配するな。魔王の座は、お前さんに譲る。」


「なんだ。ベーゼルは魔王の座を求めていないのか?」


「あぁ。俺は、西国の豊かな大地が欲しい。東国王都の気候は俺には合わない。」


技将のベーゼルは大食らいだ。


その分の食料を賄うためには豊かな大地と多くの奴隷が必要なのだろう。


「では、ありがたく魔王の座は、頂戴するとしよう。」


「シュシュシュシュシュ。あぁ。そうしろ。西国は俺がいただく。」


「それで、いつ魔王を討つ?」


「次の東国の首脳会議でだ。」







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