表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/223

2. 異世界転生

「おい。いつまで寝ておるんじゃ。早く起きんか!」


老人の声とともに、俺の意識が覚醒する。


目を覚ますと、また知らない場所だ。


真っ白な部屋に老人がいる。


まったく、生放送だからってそんなにきつく起こさなくてもいいではないか。


老人の佇まいは年の衰えを感じさせることはなく、背筋は伸び肉付きもよいものだった。


「お主のような珍しい死に方をしたのは久しぶりに見る。私は神。ようこそ新たな旅立ちの場所へ。」


はっ?


つい先ほど同じドッキリを掛けられたところだ。自称神のことなど信じられるはずがない。


最近は、おなじドッキリを立て続けにすることもある。


この部屋に連れてこられた記憶も無ければ、いつの間に眠らされて運ばれたのか分からないが、死ぬ要素などどこにもない。


きっと、あの協会に連れていったやり方と同じ手口だろう。


だが、よくできたセットだ。


真っ白な空間で部屋の広さがよく分からない。


一瞬、本当に死んでしまったのでは無いかと信じかけてしまった。


先ほど思い知ったではないか、異世界転生などと言った非科学的なことが起こるわけがない。


また、ドッキリなのだろう。


協会の前にこの部屋のセットを使うべきだっただろうに、一目で分かるお金の使われ方が違う。


「さすがに、わかりますよ。また、ドッキリですか! もう引っかかりませんからね!」


あたりを見渡して、カメラがありそうな場所を探してみるが、真っ白すぎて検討がつかない。


ドッキリを仕掛けられて、ドッキリ止めろと言うのは型破りかも知れないが、少しくらいいいだろう。


こっちは、俳優のイメージキャラをぶっ壊されたのだ。


自称神は、地面に届きそうな長いひげをなでながら喋る。


「ふむ、お主は自分の死をまだ理解しておらんのだな。たまにそういう者もおるのだ。」


「いや、くどいですよ。」


もうドッキリはうんざりだ。


できれば付き合いたくない。


そして、早く家に帰って、お気にの抱き枕を抱えて今日起こったすべて忘れて寝たい。


一週間くらい引きこもりたい。


「まぁ、まぁ、落ち着くのじゃ。」


この老人はドッキリを遂行しようとしているみたいだ。


生放送だと言っていたし、ここは付き合うしかないみたいだな。


そして、早く家に帰って、愛しの抱き枕ちゃんを抱きしめて寝よう。


「じゃぁ、俺はどうして死んだのですか?」


ここは、話を合わせてそうそうに終わらせよう。


オタクだとばれたのだし、もうばれて困るようなことはない。


どうせなら、開き直ってオタク全開でいって、キャラ変しようかな。


そうすれば、意外とアニメや漫画の実写映画の仕事が増えるかも知れない。


「お主の死因は、絶望死だ。」


老人は少しためを作って、顔を近づけ人差し指を立てて答える。


「何ですかその死因は。もう少ししっかりした死因は、無かったのですか?」


「ましな死因もくそもないわ!事実なのじゃから仕方ないじゃろう。どうやら、まだ自分が死んだことを受け入れられないようだな。ほら、落ち着いて辺りを見渡して見ろ。人知を超えた場所だろう。」


「えぇ。随分お金が掛かったセットですね。」


「はぁ。まぁ、お主の死ぬ直前の記憶から疑う気持ちはわかる。わしも長年、生を終えた人間を新たな生へ導いてきたが、お主のように秘密にしていたオタク趣味を自ら暴露してその反動で死んでしまった奴は初めてだ。」


「暴露させたのは、お前達だがな。俺の人生もうめちゃくちゃだよ。」


「だが、そう悲観することも無い。オタク趣味のお主に提案がある。4人目の勇者の仲間になって魔王をほしいのだ。お主の求めていた主人公とはいかんが十分興味のある話だろう?」


「いや、ふざけているんですか?なんで勇者の仲間なんですか?しかも4人目限定!?そこは勇者でよくないですか?」


なるほど、この老人は、俺のオタクをいじり倒して番組で笑いをとる予定なのだろう。


隠れオタクであることがばれたのだ、そこをいじってくるのだろう。


なんたる苦渋だ。


それにしても、誰だこのおじさん、メイクがよくできているのか誰が演じているのか全く分からない。


「勇者はもう誕生しておるのだよ。勇者の仲間しか空いておらんのだ。勇者の仲間だが異世界にいけるのであればいきたいだろう。死に際に願っていたように異世界にいけるのだぞ。」


くそ、やはりオタク趣味をいじり倒すのか・・・趣味が悪いぞ。


あと、俺の考えを勝手に読むな。


確かに、思っていたけど・・・。


後でこいつの所属事務所に文句を言ってやる。


それに、今後共演NGだ。


ただ生放送の番組であるのも事実、予定している時間まで尺を稼がないといけないのも事実だろう。


仕方ない、こうなればやけだ。


とことん協力して世間の笑いものになってやろうじゃないか。


「はいはい。すっごく、いきたいですよ。」


「なんじゃその返事は。まだわしのことを信じていないようだが、まぁ、よろしい。後で後悔しても知らんぞ。」


こっちは、何もよろしくない。


オタクであることがばれて、役者のイメージが壊れた。


なにもいいことなど無い。


こうなっては、後は開き直って、キャラ変するしかないなぁ。あぁ、早く帰りたい。


「では早速本題に入ろう。勇者の4人目の仲間になるために、お主にはこれから異世界に転移してもらう。だが、今の体では、異世界で魔法は使えず、世界に適応できず伝染病にかかって死んでしまう。」


「なにそれ怖いんですけど。」


「そのため、新たな体を授ける。お主の精神は、その新しい体に憑依することとなる。もちろん、記憶は前世のものを引き継いでおる。この会話を忘れられると使命が分からなくなるからな。お主には、新しい体が身につけている戦闘スタイルや種族、性別などの要望を伝えてくれればよい。見てくれくらいはサービスしてやるぞ。」


なるほど、どのような勇者の仲間になりたいのか、さらけ出せばよいのか。


これはなかなか難しい質問だ。


勇者なら簡単だが4人目の勇者の仲間だ。


適切な4人目の勇者の仲間をチョイスする必要がある。


オタク心がくすぐられる質問だ。


どうせ、さらけ出すならとことんこだわってやる。


異世界ハーレムものがいいから、性別は女だな。


だが、4人目の仲間となれば正妻ポジは無いだろう。


そうなると、お調子者ポジ、幼女、ロリババァ、獣人あたりだな。


全国ネットの番組的には獣人あたりが良いかな。


攻めすぎると、視聴者から苦情が来るだろう。


戦闘スタイルからだ。


4人目の仲間が加わるまでに、勇者はそれなりに冒険をしているだろう。


ゲームで言えば、魔王討伐までの道のりの半ばくらいだ。


つまり、それなりにパーティーとしてはバランスがとれている段階に似違いない。


その後に仲間になる4人目は、遠近ともに戦える魔法戦士あたりがよいだろう。


遠近どちらも戦える職だと仲間に組み込みやすいだろう。


魔法は勇者と対になる属性がいいな。


「性別は女性。勇者の周りにはできるだけ花があった方がいいからな。種族は、人族以外だな、身体能力の高い希少種の獣人種族がいい。戦闘スタイルは、遠近ともに戦える魔法戦士あたりかな。後は、主な属性は、氷だ。熱いキャラよりもクールな女性の方が、受けがいいからな。」


「ほっほっほ、注文の多い奴よ。よかろう。すべてかなえてやる。必ずや、勇者の仲間になるのだぞ。」


その言葉とともに、自称神は素早く両手を広げる。


自称神の周囲から光りの粒子が現れ、俺の視界は光の粒子に包まれホワイトアウトする。


「えっ!?ちょっと待って、マジですかこれ?」


理解できないことが起こっている。


光に包まれた世界で、平衡感覚が失われていく。


左右上下が分からないが、不思議と嫌な気はしない。


このような、暖かく心地のよい光も知らない。


ただ、光の粒子に包まれた瞬間、目の前の人が本当に神であることを信じられるような気がしてきた。


「ホッホッホ、ようやくわしのことを信じはじめたようじゃな。お主には多くの苦難が待ち受けるだろう。その苦難を乗り越えるかどうかはすべてお主次第じゃ。では、さらばだ。勇者の仲間となる者よ。」





面白かった!

引き続き読んでみたい!

と思っていただけたら、

評価とブックマークをしていただけると大変嬉しいです。


勿論評価は、正直に感じた気持ちで大丈夫です。


何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ