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19. 知将の町

「魔物ギルドって何をすることろなんだ?」


「あぁ。あなたは、知らないのね。魔物ギルドは、西国の騎士と戦ったり、西国の畑から作物を盗んだり、人を攫ったり、西国の人を驚かしたりするギルドよ。西国との戦時には兵士となるわ。」


「なんだよ。そのろくでもないギルド。」


「ろくでもなくはないわ。魔物ギルドは、奴隷を攫いに来る西国騎士から、奴隷を守ってくれるのよ。それに、足りなくなった労働力を補うために人攫いもしてくれるのよ。」


「やってること、ろくでもないことばっかりじゃないか。奴隷を騎士から守るって、攫われた国民を助けに来るのは当たり前だろうに。」


「あなた、綺麗ごとだけじゃ生きていけないのよ。奴隷がいなければ誰が作物を育てて、私たちの身の回りの世話をするのよ。それに、私の領には、奴隷となることを了承した人しかいないわ。」


すがすがしい程に、開き直っているな。


「そんなわけねぇだろ。それにお前、調和勢じゃなかったっけ?」


人が、自ら進んで奴隷になるなんて考えられない。


「そんなわけあるし、私は調和勢よ。私の領のギルドメンバーは、進んで殺しはしないわ。ほらついたわよ。」


魔物ギルドの入口には、人だかりができており、その中心には、背の小さい茶色い魔物がいる。

ツチノッコンだろう。

ツチノッコンの周りには魔人、亜人がいて遠巻きに人がおり気にしているようだ。


モコモッコ羊だと、紹介してないとよいのだが・・・。


近づくと入口の近くにいた筋肉モリモリの悪魔が声を上げる。


「おぉ。フルーレティー様と新入りが来たぞ。」


周りの魔人が一斉にこちらに注目する。

こちらに最初に気づいた男が、声をかけてくる。


「お前、魔王様と戦ったんだってな、ツチノッコンに聞いたぜ。この知将の領に魔王と戦った奴はいない。お前ならフルーレティー様の側近にふさわしい。」


「あぁ。ありがとう。アスタロートだ。よろしく頼む。」


男はアスタロートに声をかけると、男はアスタロートの肩に手を置き耳元でささやいて立ち去っていった。


「少しばかり我慢すればまた元通りさ。気にするな。」


ん? なんのことを言ってるんだ?

別に、何も我慢するようなことはないはずだけど・・・。


男は意味深なことを言いながら数人を引き連れて去っていき、入れ違いにひょろったした魔物が現れた。


「あんたが側近なら誰も文句は言わないだろう。これからよろしく頼むよ。」


ひょろっとした魔物は赤い髪をかき上げながらアスタロートの耳元でささやく。


「誰もお前を笑ったりしないさ。たった3か月の辛抱だ。」


いや、3か月の辛抱って何?


そういい終わると、背中をたたいてまた、数人引き連れて去っていった。

また、入れ替わるように今度はサキュバスがやってきた。


「あなたがフルーレティー様の側近ね。男どもが悔しがってたわよ。」


このサキュバスも、同様に耳元でささやいていく。


「本当のあなたの姿を見るのが楽しみだわ。それまで、このマントを貸してあげるわ。人から見られるのもいい気はしないでしょう。」


本当の姿を見るのが楽しみって、これが本当の姿なんですけどね。

だいたい、状況が呑み込めてきた。

おおよそ、ツチノッコンが余計なことを言ったのだろう。


そういって、サキュバスは、身に着けていたマントを外し、私の体に掛けた。

サキュバスは、募金箱にお金を初めて入れた小学生のような顔をしながら出て行った。

最後に、オオカミの顔をした亜人が出てくる。


「亜人が知将の側近とは、同じ亜人種として誇りに思うよ。これからよろしく頼む。」


そういうと、亜人も、耳元でささやきだす。


「毛の件聞いたぞ、残念だったな。だが、落ち込むことはない。魔王と戦って生き残ったのだ。名誉の負傷だよ。」


そういうと、オオカミの亜人もこの場を去っていった。


この場には、アスタロートとフルーレティー、ツチノッコンだけが残り、人間がこちらの様子を遠巻きに見ている。


「ねぇ。ツチノッコン。あなた、私のことなんて紹介したの?」


「魔王様と戦ったことのあるアスタロートっていうモコモッコ羊の亜人がフルーレティー様の側近になるんだって紹介したよ。」


ですよね。そうですよね。

モコモッコ羊って紹介してるでしょうね。


羊は毛を刈られても、また生えてきますもんね。

それまで辛抱するしかないですもんね。

モコモッコ羊は、3か月に一回毛を刈ってるんですね。

初めて知りましたよ。随分と成長の早い種ですね。

毛が生えた俺がどんな姿なのか見たかったんでしょうね。


でも、それだと、小声でこそこそ言っている意味が分からない。


「で、それからなんて言ったの?」


「あとはねぇ。アスタロートは、魔王様との戦いで毛が無くなっちゃったことを気にしているみたいで、自分のことをモコモッコ羊の亜人じゃないって否定するんだ。だから、あんまりいじめちゃだめだよって、いったよ。」


こいつ、ぶん殴りてぇぇぇぇ。


「キャハッ、キャハッ、キャハハハハ。」


隣では、フルーレティーが爆笑している。

ふぅぅ。

深呼吸をして落ち着こう。


「そうか、私に気を使ってくれたんだね。でもね。確かに、私の角はモコモッコ羊だけど、それ以外はモコモッコ羊じゃないんだよ。」


「うん。分かった。そういうことにしておくね。」


いや、分かってないじゃん。

でももういいよ。そういうことで。

3か月がたって、毛が生えていないことを知れば、みんなもモコモッコ羊の亜人ではないことを理解してくれるだろう。


アスタロートが、諦めて遠い目をしていると、ツチノッコンは、モコモッコ羊の毛を刈りに行くといって走ってきた道を引き返していった。




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