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182. 技領の魔人

「おーい。レロンチョ。何がいい作戦だ。すぐにバレたじゃないか。」


「バカーー。静かにしろーー。」


木々の隙間から声をかけながシープートさんが果実をいくつか両手に抱えてやってくるのを、レロンチョは慌てて声のトーンを下げるようにささやきかけるが、アスタロートには聞こえていない。


「ええ?なんて言ったんだ?聞こえウゴッ!!!」


さらに大きな声で返事をするアスタロートの口にレロンチョの舌が突っ込まれる。


カメレオンの亜人のレロンチョの舌は長く、木の上から地上にいるアスタロートまで届く。


かなり喉の奥のほうへ舌が入り込んだのか、シープートさんは両手に持っていた果実を放り投げて喉を抑えてのたうち回る。


「おい。いくら何でも、やりすぎじゃ・・・。」


ガイモンが隣にいるレロンチョを制止しようとしたが、それよりも早くアスタロートの近くまで音もなく飛んでいく。


シープートさんの耳元で技将の魔人が近くを通ていることを囁くと、冷静になり暴れるのをやめる。


冷静になったシープートさんは、レロンチョの舌が抜け少しえずいてから散らかった果実を拾い始める。


最後の1つを拾い上げようとしたところで下に降りた2人が周囲を警戒し始める。


アスタロートが周囲を確認すると最後の1つの果実を拾い上げるとすぐにガイモンがいるすぐ隣の木の枝までやってくる。


その後を追うように、レロンチョは手足を幹に張り付けて、するするとトカゲのように登る。


同じ高さまで上がってきた二人は、息をひそめてある方向を見つめだした。


ガイモンには何の気配も感じないが、魔人と亜人の感覚は人を凌ぐ。


何か来るんだろう。


ガイモンも息を殺しじっと待っていると、数人がこちらに来る気配をようやく感じ始めた。


レロンチョとシープートさんは木の幹に身を隠し、ガイモンは巣の中に身を隠す。






「おい。さっき、ここらへんで物音がしなかったか?」


しばらくすると、魔人が2人茂みの奥からやってくる。


「ソレクレンチョウか先に行ってる仲間だろ。」


「ソレクレンチョウ?いたか。そんなの?」


「あぁ。さっき、空を飛んでいるのを見かけた。」


「そうか、気づかなかった。なぁ、今日する総力戦ってどんなんなんだ?ちょっと休憩しようぜ。」


「あぁ。ベーゼル様が技将になってからは初めてだな。技領全員が群れになって戦うんだよ。」


「技領全員で?」


「あぁ。相手はドラゴン種2体だ。大勢死ぬだろう。側近たちも例外じゃない。」


「なるほど。じゃぁ、ここで俺が活躍したら側近になれるかもしれないな。」


「アハハハハ。俺たち程度では活躍できるはずないだろ。最前線にでたらまず死ぬ。」


「お前臆病だな。名を挙げるには絶好のチャンスだろ?」


「ふふ。そうやって欲張った奴から死んでいくんだよ。相手は、側近のバンバンさんを倒したドラゴン種だぞ。俺たちが出る幕じゃない。」


「でも、俺たちは戦うんだろ。」


「メインで戦うのはベーゼル様、側近の連中、あとは腕に覚えのあるやつかドラゴン種の実力を甘く見積もった馬鹿だ。それ以外の俺たちは、雑魚処理とサポートだよ。」


「なんだよ。サポートかよ。雑用じゃないか。そういうのは人間にやらせろよな。」


「人なんか連れてきても、役に立たんぞ。むしろ邪魔だ。毎回領に残しとくんだよ。それに、俺たちは技将の魔人だぜ?」


「技将の魔人?」


「なんだ知らないのか。今の3将になってから、群れの技領・個の力領・腰抜けの知領って言われている。腰抜けの知領くらいは聞いたことあるだろ?」


「負け犬の知領なら聞いたことあるぜ。知将も含めて雑魚の集まりなんだろ。でも、なんで弱い奴が知将なんてしてるんだ?強い奴が知将をぶっ倒して、自分が知将になればいいじゃないか。」


「誰も知将を倒さないのは、知将フルーレティが魔王様のお気に入りだからって説が有力だ。どうやって魔王様に取り入ったのかは知らないが、知将にはいろいろ噂があってな。実は実力を隠していて魔王様より強いとか、魔王様の嫁とか、西国出身だとか、元西国の特記戦力だとか、勇者の仲間だとかバカみたいなものまである。」


「キャキャキャキャ。全部デマだな。俺だって最近の話題くらい知ってるぞ。勇者パーティーに負けた知将をアスタロートっていう新しい側近に助けられてんだろ?」


「あぁ。だが、その知将より強いアスタロートが側近にいるのが不自然でな。アスタロートは特記戦力No.2のピィカを追い払った実力者だ。特記戦力と対等に渡り合ったのであれば、アスタロートは力将や技将に届く実力だ。そんなアスタロートが知将の下にいるのが分からなくてな。俺は知将が強いんじゃないかって疑ってるんだよ。」


「ふーん。お前弱いのに結構いろいろ考えてるんだな。」


「いや、お前はもう少し考えろよ。」


「知将が強いとかどうでもいいだろ。今日、ベーゼル様たちがドラゴン種を倒せば俺たちのベーゼル様が最強だ。」


「なんだよ。良いこと言うじゃねぇか。楽しみだな。もし、ドラゴン種を2体も倒せば、俺たちが3将の中で最強の領なのは間違いない。力領の奴らが束になってもドラゴン種2体は倒せないだろう。個々の戦力は力領のほうがあるが、ドラゴン種は個々の力で倒せる生物じゃない。勝つには群れの力だ。その中でベーゼル様は圧倒的な群れとしての力を持つ。3将最強はベーゼル様だ。」


「だな。ドラゴン種2体を倒せれば、あのいけ好かない力領の奴らにでかい顔ができるな。」


「悪いことは言わん。やめておけ。力将の奴らは粒ぞろいだ。どいつもこいつも嫌になるほど強い。悪いことは言わないから、あいつらには強く出ないほうがいい。」


「チッ。分かってるよ。言ってみただけだよ。ほら、先に行こうぜ。」







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