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172. 再開

「で、誰なのその魔人は?」


ガイモンに無理矢理起こされて目を覚ましたシキは、最初不機嫌そうだったが、死んだかも知れないと思っていたアスタロートがいることに気づき表情を変える。


すぐさまアスタロートに飛びつきアスタロートの無事を一通り喜んだあとにレロンチョの存在に気付き質問する。


その声には、少し戸惑っていることが分かる。


つい先ほど、魔人から助けてくれたアスタロートが魔人と一緒にいれば困惑するだろう。


だが、アスタロートも考えなしではなく、この地に詳しいレロンチョに西国まで案内してもらおうと思って呼び止めているのだ。


アスタロートであれば、空を飛びある程度進むべき道を推測することは出来るが、勇者パーティーの前で飛ぶことは出来ない。


西国出身の勇者パーティーがこの場所に詳しいとも思えないし、レロンチョの案内が必要だと思っているのだ。


まだ、レロンチョにはまだ説明しておらず、勇者パーティーと仲良く話しているアスタロートを見て唖然と見つめている。


レロンチョの見た目は亜人と言い張るにはあまりにも人からかけ離れている。


亜人と言い張っても無理があるだろう。


そこで、勇者パーティーへのレロンチョの説明にしれっと嘘をつく。


「この子は私の同郷の友達で、あなた達を探すために一緒に来たんです。」


レロンチョに余計なことを言わないように、視線で釘をさす。


「えっ?何言ってんだ?アスゥンーー!ンーー!」


ガシ。


危ない。


後、もう少しレロンチョの口を塞ぐのが遅かったらバレるところだった。


「おい。レロンチョ何言ってるんだ?俺の名前はシープートで、お前は俺の友達のレロンチョだ。いいな。分かったな。次、変なことを言ったらぶっ飛ばすぞ。話を合わせろ。いいな。」


頭を2度縦に振り返事をするレロンチョ。


「魔族と一緒に?封印の祠まで?」


アスタロートはレロンチョと肩を組み笑って誤魔化すが、アスタロートの挙動は明らかに不振だ。


「アハハハ。」


その挙動に何かを察したシキは目を大きくして話始める。


「あなた、もしかして諦めずにホムラを追いかけて来たの?」


「ふぇぇえ!」


いや。確かに、前回分かれたときに、話の流れからホムラに告白して振られたみたいになったけど、そんな雰囲気になっただけで、俺が勇者に気があるわけじゃない。


シキの話ぶりだと、俺がホムラを諦められずに追いかけて来たみたいじゃないか。


「あぁ。そうだぜ。こいつは、その勇者を探し回っムグッツ。んーーんーー!」


隣で肩を組んでいたレロンチョがとんでもないことを言い出し、すぐに口を押えるが遅かった。


「おい。馬鹿、なんてこと言うんだよ。」


レロンチョの首根っこを捕まえて、シキとガイモンに背中を向けてこそこそ話をすると後ろから声が聞こえてくる。


確かに、レロンチョの言う通り勇者パーティーを探してはいたが、今の話の流れでは、ホムラを追いかけてきましたって公言したようなものだ。


アスタロートが抗議するが、事情を知らないレロンチョはなぜ怒られているのか分からない表情だ。


「お前が、話を合わせろと言ったんだろ。ちゃんと話に合わせたじゃないか。」


「そうだけど。俺の話に合わせるだけでいいんだよ。勇者たちの話に合わせてどうするんだよ。話が変な方向にいったじゃないか。」


レロンチョとアスタロートの背後で、ガイモンとシキが小声で話しているのが、耳の良いアスタロートに聞こえる。


「シキ。あのタイミングで、現れたんだ。ホムラを追いかけて来た以外に理由があるはずないだろ。もう少し考えろよ。」


「いや、だって、本当にそうか気になるじゃない。」


「あの反応で分かっただろ。」


「そうね。魔人と一緒にいたから一瞬怪しんだけど、あの魔人が言った通り、シープートさんはホムラを追いかけて来たみたいね。」


「そうだな。」


「違うから、違いますからね。」


盛大な勘違いをしているシキとガイモンに、アスタロートが振り向き訂正するが、温かい目で分かっていると言われるだけだ。


この人たち絶対に分かっていない。


「それにしても、シープートさんが無事でよかった。」


「えぇ。そうね。最後の水しぶきを見たときはもうだめかと・・・。」


「あぁ。それが、右腕を負傷してしまいましてね。実は、シキさんに直してほしいんです。」


骨が砕けてたれ下がっている右腕を見せる。


「ちょ。早く言いなさいよ。何も言わないから大丈夫なのかと思ってたじゃない。」


「いや、見た目ほど痛くはないんだ。」


「そんな訳ないでしょ。少し触るわね。」


オーラを纏いアスタロートの右手に両手を添える。


シキが恐る恐る両手を添えるが、アスタロートは表情一つ変えない。


「本当に痛くないの?」


シキがアスタロートの表情を確認しながら治療を開始する。


「はい。疲れているところありがとう。助かります。」


「驚いた。亜人は痛みに対する抵抗を強いと聞いていたが、ここまでとはな。」


「いいのよ。助けられたのは私たちの方だからね。」


「そうだな。シープートさんが来なければ今頃死んでいた。まさか、シープートさんがあそこまで強いとは思っていなかった。トレントの時は、実力を隠していたのか。」


「すみません。悪気はなかったんです。」


「いや、いいさ。実際、あの戦闘では怪我もなかったし、今回は命を助けられた。でも、まさか、3将の側近レベルと対等に戦えるほどとは、いまだに信じられない。」


「あんた人間だが、その気持ち分かるぜ、雌のモコモッコ羊の亜人が強いと思うはずないよな。」


「おい。レロンチョ。しばくぞ。」


「俺に対してなんか当たり強くない?」


「ガイモン。あなた寝ていないんでしょ。あたしは少し寝たからもう大丈夫よ。あなたも少し寝なさい。」


「あぁ。すまないが、少し寝かせてくれ。」


「すみませんが、休憩はここを離れてからにしましょう。」


「えっ。どうして?ガイモンもホムラもまだ目を覚ましていないわ。移動は明日の朝でもいいんじゃないかしら?」


「それがな。」


「技将が仲間を大勢引き連れて、封印の祠に来るんだよ。なんでも、ドラゴン種が2体現れたとか、騒ぎになっていた。朝には、この川沿いをさかのぼり封印の祠に向かうだろう。今動くしかない。」


アスタロートの説明を遮りレロンチョが説明する。


「分かった。すぐに移動しよう。」


「えっ。噓でしょ。まだここに漂着しているお宝の捜索もしていないのよ。」


「俺が見繕ってくる。シキはそのままシープートさんの治療を頼む。ムーンライト。」


ガイモンが、周囲を照らし辺りを散策しに行く。







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