表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/223

162. スケリトルドラゴンスライム

「シャイニングスター」


ゼロ距離からの高火力魔法で、バンバンの腹部を吹き飛ばす。


「アレ。俺、負けたのか?マケ・・・。」


バンバンの声は尻すぼみに小さくなっていき、その場に倒れる。


ガイモンが、バンバンが息絶えたことを確認する。


腹部を吹き飛ばしたのに一瞬意識があるなんて、化け物かよ。


「ハァハァ。勝った。勝ったぞ。」


ガイモンがそう告げると、ホムラとシキがその場に倒れるように座り込む。


ライザーは、すでに寝転がっていた。


長かった。


そして強かった。


ガイモンの声に誰も答えないが、ガイモンは理解している。


喋るのも億劫なほど疲れ果てているのだ。


もう二度とこんな戦いしたくない。


最後の一撃だって賭けだった。


後一歩、あと一歩バンバンが走るのが速ければ死んでいたのは俺だった。


ガタガタガタガタ。


先ほどから地鳴りが絶えず聞こえてくる。


いったいどんな戦いをすれば、大地が揺れるほどの戦いになるのか・・・。


本当は、シープートさんの援護に行きたいが、ガイモンもまた激しく疲労している。


少し休んで体勢を整えてから援護に向かおう。


そう思いガイモンも腰を下ろす。


ガタガタガタ。


腰を下ろしてすぐに異変に気付いた。


振動が近づいてきている。


もう少し休ませて欲しいが、そうは行かないみたいだ。


ガガガガガ。


徐々に振動と音が大きくなるがシープートさんとマートルの姿が見えない。


おかしい。


どんどん音は大きくなってくるが、未だに音源の正体が姿を現さない。


もうすでに、人が戦って出る音を越えている。


異変に気付いたのか、他のメンバーも武器を持っていつでも動ける体勢をとる。


「おい。おかしいぞ。何かが近づいてくる。」


ガガガガガ。


地響きと共にアスタロートが多孔質の大地から現れ勇者パーティーの上空を通り過ぎる。


良かったシープートさんは無事だ。


シープートさんが通り過ぎたすぐ後、大地を削りながら青白い巨体が通り過ぎていく。


「なんだあれは?」


多孔質の大地が視界を遮りアスタロートが何に追われているのか分からない。


だが、ホムラは最適な判断を下す。


「下だ。逃げろ。」


アスタロートが何に追われているのか分からない。


だが、とてつもない生き物に追われていることは分かる。


それが、マートルなのか魔物なのかドラゴンなのかなど、後で考えれば良い。


確実なことは、今ここにいるアスタロート含めたメンバーが束になっても足下にも及ばない相手がいるということだ。


ホムラの指示を聞いて、瞬時に下に飛び降りていく。


「上じゃなくて良いのか?」


飛び降りながら大声で叫ぶようにガイモンが聞く。


ここで、アスタロ-トに加勢するという選択肢が出ないということは、全員が加勢しても足手まといにしかならないことを理解しているのだ。


アスタロートは、勇者パーティーから離れるように逃げ回っており、スケリトルドラゴンスライムはアスタロートを追い勇者パーティーから離れていく。


「地上に出られても蒔ききれない、追いつかれればそこで終わりだ。下に水が流れている音がした。多分そこから外に逃げられる。」


「多分って、外に繋がってなかったどうするんだよ。」


「それは、あいつから逃げ切ってから考える。」


体力的に負傷の激しいライザーと元々体力のないシキが、遅れ始める。


「あ~クソ。シキ、掴まれ、遅い。ホムラ、ライザーを。」


「あぁ。」


シキがガイモンに飛びつき、ホムラがライザーの懐に入り込み担ぐ。


「助かるわ。」


「すまん。」


「まずは、逃げ切るぞ。シープートさん下だ。下に逃げる。」






気絶したマートルを担ぎながらどこにいけば逃げ切れるのかそれだけを考えて走っていたが、全く距離が開かない。


信じられないが、あの巨体のスケリトルドラゴンスライムの方が周囲の多孔質の大地を吹き飛ばしながら動いている方が速いのだ。


信じられねぇ。


最初避けるだけなら余裕があったが、それでは追いつけないと感じたのか、ドンドンスピードが上がってきている。


徐々に上がってくる速度は、今やアスタロートをわずかに上回っている。


あいつまだ本気になってねぇ。


前世で動物によっては、相手を疲れさせてから狩りをする動物がいると聞いたことがある。


その方が、消費カロリーを抑えられるとか。


もしかしたら、狩りを楽しんでいるだけかも知れない。


まずいな。


逃げ切れる気がしない。


ホムラから下に逃げろと言われたが、そう簡単に進路を決めきれない。


後ろを確認しながら、スライムの攻撃を魔法で防ぎ逃げ切るだけで精一杯だ。


今も何とか追いつかれずに逃げられているのは、アスタロートの方が小回りで、スケリトルドラゴンスライムが外に膨れるように曲がるため追いつかれずにすむだけだ。


アスタロートは、スケリトルドラゴンスライムの触手攻撃が最も手薄かつ相手を外に膨らませる方向に逃げているだけで、自由に進路を決めて逃げているわけではない。


下方向を一瞬確認したアスタロート、その隙は取り返しの付かない致命的な隙となる。


しまっ。


「火山弾。」


マートルの魔法がアスタロートを守る。


マートルが意識を取り戻したのだ。


アスタロートにとって、逃げ切れる希望の光だ。


「俺が、攻撃を防ぐ。お前は下に逃げることだけ考えろ。草食亜人なら肉食獣から逃げるのは得意だろ?」


「今まで、寝ていたくせに偉そうだな。だが助かる。」


これで、逃げに徹することが出来る。


マートルはアスタロートの腰に足を絡め、左手で角を持つ。


ピシ。


「おい。そこは持つな!痛い。割れたらどうするんだ。」


「うるせぇ。我慢しろ、俺が角を倒そうとしたらそっちの方向へ飛べ、いいな。」


「割れたら許さねぇからな。」


やっぱり、こいつ振り落として囮にして逃げようかな。


一瞬頭をよぎる邪念を振り払い、アスタロートはマートルの指示のもと逃げ始める。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ