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124. 勇者パーティー

「そう、落ち込むなよシキ。」


「だってぇぇぇ~。あたし、あんなに頑張ったのに。グスン。」


ガイモンとアスタロートがシキの後を追って部屋を出ると、シキは赤髪と金髪の男2人に慰めらあれていた。


赤髪の青年を見てすぐに思い出す。


こいつだ。


この赤髪が勇者だ。


転生してすぐに戦って、一番最後まで立っていたやつだ。


金髪と赤髪の怪我が一番深刻だったが、見たところ2人はもう元気なようだ。


無事だとは聞いていたが、2人の姿を見て安心する。


「ホムラ、ライザー!待ってたぞ。」


「あぁ。待たせたな。あと1日待ってくれたら、俺たちも調査クエ一緒に行ったのに。」


「ハハハハ。復帰早々の2人を連れて行けるようなクエストではないさ。」


右手を顔の前に掲げ、ドアをノックするようにお互いの手首をぶつけ合う。


4人は代わり代わりにお互いの手首をぶつけ合う。


アスタロートにその意味は分からないが、4人の雰囲気で察しはつく。


前世でいうハイタッチやハグみたいな行為だ。


「へぇ。言うじゃないか。」


「本当にそうよ。昨日は大変だったんだから、」


4人は嬉しそうに話す。


「あぁ。心配を掛けたな。だが、もう大丈夫だ。」


「だな、準備運動は昨日の将軍バッタで済ませてある。いつでも戦えるぞ。」


「そう急ぐな。しばらくは、俺とシキが前に出て戦う。2人は勘を取り戻すまで戦線に出なくていいさ。」


「おいおい。言うじゃないか。2人とも俺たちが寝ている間に、随分強くなったんだって?町の騎士団長が話していたぜ。ライザー、俺たちも負けてられないな。」


「あぁ。前衛が後衛に守られていたら洒落にならん。」


「へへーん。素直に守られてなさい。あんた達が寝ている間に、あたし達すっごく強くなったのよ。昨日も3人で新種のトレントを討伐したんだから。4人で手こずったトレントを3人でよ。」


仲間が復帰し2人とも嬉しいのだろう。


ガイモンとシキがアスタロートに向けていた顔と今の顔では全然違う。


昨日の戦闘でそれなりに信頼関係は築けたと思っていたが、2人と比べるとまだまだだな。


あぁ。仲間っていいよな。


前世の俳優業でも、1本映画を撮りきると似たような友情が芽生えていた。


「あぁ。聞いたよ。で、そちらの亜人さんが協力者か?」


「あぁ。悪いな、シープートさん。紹介が遅れた。」


「いえ、お構いなく。格闘家のシープートです。」


「随分強そうだな。俺の仲間が世話になったようだな。ありがとう。感謝するよ。」


すっと、右腕を前に出すアスタロート。


アスタロートが、前世の癖で握手を求めてしまう。


「「「「ゆっ友好の誓い!?」」」」


勿論、握手の文化がない彼らにアスタロートの意図は伝わらず、本来の意味で伝わる。


友好の誓いは、共に生活を過ごす仲間同士で結ぶもので、契りを結んだもの同士は家族同然なのだ。


そして、この誓いは主に亜人や魔人間で行われている文化だが、人と亜人間でも行うことがあるが、少し意味合いが変わってくる。


群れ意識が強い亜人や魔人はいろんな人と友好の誓いをするが、人は違う。


人は一夫一妻制だ。


人が友好の誓いで家族となる相手は、亜人か魔人の妻か夫のみ。


つまり、アスタロートは初対面のホムラにプロポーズをしたことになる。


「ふぇぇぇ!おっ、俺!?えっ、俺たち今日が初対面だぜ?」


「キャハハハハハ。シープートさん、見かけによらずグイグイいくのね。ホムラ良かったじゃない。あたし、応援するわ。」


「プップロポーズだと!!!」


「なっ。」


周りの反応を見て、自分の失態に気付く。


「えっ、あっつ、すっすみません。」


ボンっと音が出て、アスタロートの顔が赤面する。


しまった。


つい、握手を求めてしまったが、友好の誓いを結びにいっていた。


ガイモンが、プロポーズといっていたが、そう捉えられても無理もない。


家族になる誓いなのだ。


一夫一妻制の人に友好の誓いをすれば、それはプロポーズになるのか。


くそ。うかつだった。


男に言い寄られたら身の毛がよだつと思っていたが、それ以前の問題だ。


まさか、自分から男にいいよってしまうなんて。


なんたる失態。


「えっ。あぁ。いいんだ。気にしないでくれ、その、俺たちは今日知り合ったばかりだ。その、もう少し時間をもらえると・・・。」


同じく顔を赤くしたホムラが返事に困っていると、シキがヤジを飛ばす。


「えぇ~。なによ。ホムラのヘタレ。ビシッと決めなさいよ。」


「いっ、いえ。すみません。こっこれは、握手といって、私の地元では初対面時の挨拶のようなものなので、その、友好の誓いとは・・・。」


「キャハハハハ。シープートさん、そんな文化聞いたことないですよ。あくしゅって、悪手の間違いでしょ。」


「あぁ。まさか、初対面の相手にいきなりプロポーズとはな。いや、人は見かけによらないとはこのことだな。お願いしたいことって、まさかこのことか?」


「いえ、違います。えぇっと・・・その、日本では・・・。あいさつのようなもので・・・。」


顔が真っ赤になっているのが分かる。


氷を操るアスタロートの体温は常人と比べて低く、顔の温度が上がると温度差で湯気が出てくる。


くそ。


気が動転して、上手くしゃべれない。


俺が男なんかに、それもほぼ初対面の知らないやつに、プロポーズだって!?


冗談じゃない。


本当は、声を大にして否定するところだが、なぜがこの場の雰囲気に合わせて、それっぽい女性を演じてしまっている自分がいる。


「友好の誓いがあいさつな文化なんてあるわけないでしょ。なに、今更照れているのよ。いいじゃない。あたしは、応援するわよ。ホムラは、奥手で恋愛には鈍感で少し青臭いところもあるけど、いい男よ。」


「シキ。冗談はよしてくれ。気持ちはありがたく受け取らせてもらうよ。だが、俺たちは今あったばかり、それに俺たちは旅の途中なんだ。」


ボン。


アスタロートの頭上に一際大きな蒸気が上がる。


「・・・。」


クソ。クソ。クソ。


何で俺が振られたみたいな雰囲気になっているんだよ。


「えぇー。いいじゃない。シープートさんも一緒に連れて行けばいいじゃない。間違いなく一番強いわよ。ね、ガイモン。」


「あぁ。強さは間違いない。」


「シープートさんも、一緒に行きたいわよね。」


まさかの質問が、飛んできた。


ずっと、仲間になりたかったんだ。


この質問にはハイとノータイムで答えたいが、今の話の流れで肯定するとホムラが好きだからついて行くみたいじゃないか・・・。


だが、この返事を断ることはできない。


誤解されることを覚悟して口を開く。


「はっはい。仲間になりたいです。」


「ヒュー。ホムラ、お前が俺より先に春が来るとはな。」


ボフン。


ライザーの一言で体中から蒸気が上がる。










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