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120. 騒動の翌朝

ポロロポッポー。


あさつげ鳥が鳴き始める。


あさつげ鳥の鳴き声で目を覚ます。


「あー。朝になっちゃったか。」


もっと前に目は覚めていたが、昨日の戦闘の疲れにより、ひどい筋肉痛なのだ。


動きたくないアスタロートは、巣の上で寝転がり2度寝を繰り返して、あさつげ鳥が鳴かないことを願っていた。


あさつげ鳥が鳴いたから今はもう朝だ。


そして、二人との待ち合わせの時間はでもある。


二人も今から準備をしてギルドに向かうのだろう。


この世界では、あさつげ鳥が鳴いた時が朝で、あさつげ鳥が鳴かなければ休みなのだ。


昨日、シキ達と待ち合わせするときに学んだことだ。


準備に時間が掛からないアスタロートでも、知らない場所まで行くのにそれなりに時間が掛かる。


二人を待たせるのも悪いので、昨夜それなりの時間に出発してあらかじめギルドの場所を確認しようと思っていたのだが、朝起きると筋肉痛で体が重く動きたくないアスタロートは自分の巣の居心地の良さに負けてとうとう、あさつげ鳥が鳴くまで巣にいてしまったのだ。


巣の中で脱力していたアスタロートだが、上半身を起こす。


二人を待たせてしまうという罪悪感がアスタロートを動かす。


巣の中で大きく息を吸い込み、頬を叩く。


「よし。」


気合いを入れて、巣から飛び降りる。


一度動き始めた体は、徐々にほぐれていき筋肉痛が徐々にやわらいでいく。


ほどよい疲労感と筋肉痛はアスタロート自身の身体能力が向上した証でもある。


朝起きたときは、ひどい筋肉痛で、重りを取るか悩んだアスタロートであったが、この重りで動くことに慣れればフルーレティーに強化してもらった時と同等の身体能力を手に入れられると思うともう少し頑張ろうと思うものだ。





町は、昨日の喧騒が嘘のように静まりかえっているが、所々戦闘のせいか物が散乱していたり、壊れていたりする。


あと、ほんの少しだけ香ばしい香りが残っている。


そして、町に入ってから一番驚いたのは、町の人達の対応だ。


数日前は草食系の亜人だからという理由で闇討ちされ掛けたが、今回は昨日の亜人達が活躍したのだろう、すれ違う知らない人達から感謝の言葉を告げられる。


アスタロート自身は、何もしていないのだが、待ちの人と亜人達は仲直りしたようだ。


町の仲に亜人達が数多く見かける。


「やぁ。シープートさん。おはよう。」


町を少し彷徨ってからやっと、ギルドにたどり着いたアスタロートだったが、ギルドにたどり着くとちょうど、反対側の道からガイモンとシキがやってくる。


「おはよう。」


二人を待たせてしまうと思っていたが杞憂だったようだ。


チラリとガイモンの隣を明日いているシキを見ると、今にも倒れそうな、自分の弓を杖にして歩くシキがいた。


おそらく、昨日の戦闘で筋肉痛になったのだろう。


「待たせていないようで安心したよ。これが、いつまで経っても準備しないから・・・。」


「仕方ないでしょ。筋肉痛なのよ。体いたいのよ。ごろごろしたいのよ。」


「ははは。そうですよね。私も筋肉痛ですよ。」


「へぇー。亜人でも筋肉痛になるんですね。」


意外そうな声で返すシキにガイモンが答える。


「当たり前だろ。体の構造はそう変わらないんだから、激しく動いたら筋肉痛にもなるさ。少し考えたら分かるだろ。」


「えぇー。」


「あんまり脳みそを使わないと、脳が腐って何も考えられなくなるぞ。」


「えぇ!そうなの!」


勿論、そんなことにはならないが、ガイモンの嘘にすっかり騙されるシキ。


「そういうところだよ。脳が腐るわけ無いだろ。」


「もう。そんなんだから、ガイモンは友達が少ないのよ。」


「うっ、うるさい。じゃぁ、さっさと報告に行くぞ。」


「キャハハハ。楽しみね。難易度不明の調査任務達成に、新種のトレント討伐、それに将軍バッタの分断。きっといいお金になるわ。」


シキはこれからの報告を楽しみにしているが、どういう仕組みになっているのだろう。


ゲームだと、ギルドカードとかに討伐数が記載されていたりするんだけど、あいにくそんな便利そうなアイテムはなさそうだ。


あと良くあるのは、討伐した魔物の部位を切り取ったり、魔法石を提示するくらいだろう。


だが、トレントは、アスタロートが吹き飛ばしたし、将軍バッタは採取する余裕なんてなかったような気がするし、この世界の魔物からは魔法石は取れない。


「ギルドへ来るのは初めてなんですが、どうやって討伐証明するんですか?」


ギルドに入って行く二人の後ろを付いていきながら質問すると、ギルドの入り口でシキがずっこける。


両手を地面について起き上がると、シキの顔は今にも泣き出しそうな顔をしている。


「ガイモン。どうしよう。討伐証明の部位持ってきていない。」


「安心しろ。木の根の一部と葉っぱ採取済みだ。それに、今回は調査任務だ。報告が終わると状況把握のために、再度適切な体勢でギルド職員が調査に行くだろう。今回の場合は、調査任務成功の報酬が先に支払われて、ギルド職員の調査結果次第で、追加報酬が支払われるだろう。」


シキの顔に生気が戻って行く。


「さすが、ガイモン。頼りになるー。」


ガバッと、ガイモンの足に抱きつき頬ずりする。


「おいやめろ。離れろ。」


「もう、美女が抱きついているんだから、少しは喜びなさいよ。失礼しちゃうわね。」


「ハハハハ。仲がいいんですね。」


「「仲良くない!!!」」


アスタロートの問いかけに、息ぴったりで答える二人。


声がはもりお互いの顔をにらみつけ、今度は顔を背ける。


息ぴったりな二人の行動はもはや芸術的だ。


いや、絶対仲いいじゃん。







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