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110. 新種のトレント戦

「シープートさぁぁぁん!」


アスタロートに守られたことを知ったシキは感極まり、偽名を叫ぶ。


「私が、根を防ぎますから、頑張って走ってください。」


アスタロートが、根から守ってくれることを知ったシキは、落ち着きを取り戻し走り始めた。


シキの様子をみて、信頼と好感度アップを感じるアスタロート。


パシン、パシン、パシン。


連続して攻撃してくるトレントの攻撃を防ぐ。


トレントの攻撃は根を鞭のようにしならせて叩く単調な攻撃だが、一番しなる根の先は目で追うことがやっとの早さだ。


だが、ピィカと戦ったアスタロートにとっては、早いが対処出来ないわけではない。


根の付け根や中腹の動きで先端の動きがある程度絞れる。


その軌道さえしっかり見極めれば防ぐことは簡単だ。


パシン。


イテテテテ。


拳で打ち返すと、鞭で打たれたような痛みが走る。


オーラ武装で身を固めればこんな痛みに耐える必要なないのだが、自分で決めたアスタロート勘違いされないために決めたルールに反することは出来ない。


この痛みは、前世の小学生の頃を思い出す。


冬に縄跳びを失敗したときと同じような痛みが体に走る。


ちなみに俺は、ハヤブサ飛びがクラスで一番出来てハヤブサ太郎と一時期呼ばれたことがある。


この痛みには、慣れているとはいえ地味に痛い。


それに、攻撃の軌道からして、こいつシキを狙っている。


本能的に、一番動揺していた、もしくは一番捕食できそうな相手を狙っているのかも知れない。


そのことに気づいているのか後ろを気にしながら走るシキ。


「ねぇ。あいつ、必要にあたしのこと狙ってない?怖いんですけど。シープートさんも戦えそうだしここで戦っていいんじゃない?」


「だめだ、先手を取られているし、逃げ切れないと決まった分けではない。捕食できないと分かると諦めるさ。シープートさん、余裕は?」


「私は、大丈夫です。」


「よし、では、このまま逃げ切るぞ。シキは前に集中して走れペースが落ちてるぞ。後ろはシープートさんに任せろ。」


「そんなこと言ったって、狙われると気になるのよ。ひぃぃ。」


トレントも単調な攻撃では捉えられないと分かったのか、2本同時に根を振るってきた。


左右から同時に襲いかかってくる攻撃先は勿論シキだ。


「シッフッ。」


パンパシン。


アスタロートは、アクロバットな動きで右手と左足で根を打ち落とす。


「ありがとうございます。ありがとうございます。」


またも、根を打ち落としてくれたアスタロートに感謝の言葉を告げるシキ。


トレントは、2本の根でも駄目だったトレントは更に根の数を増やす。


6本の根が持ち上がる。


6本の根による連続攻撃だ。


移動するために使用している根を除けば、攻撃に使える根はあれですべてなのだろう。


その証拠に少しだけトレントの移動速度が落ちる。


「攻撃来るぞ。」


「ひぃ。シープートさまぁぁぁぁ。なんとかしてぇぇぇ。」


「任せてください。」


走ることしか出来ないシキは、神様に祈るのではなく、アスタのロートに祈りを捧げた。


アスタロートは、ファンに応援されることが何よりも好きだ。


そして、ファンの期待に応えることも大好きだ。


シキの祈りはアスタロートの琴線に触れたのだ。


もとより、シキやガイモンに怪我を負わせるつもりはないし、アスタロートであることがバレないために課したルールを破るつもりもない。


オーラ武装や氷の斧、氷魔法はアスタロートであることがバレる可能性が高いため、格闘家として仲間になることを考えたが今後、勇者達が強くなって行くにつれて、格闘だけでは足手まといになる可能性がある。


そんな時のために考えていたのが氷魔法ではない、何か別の属性の魔法だ。


この世界には、魔法の属性という概念はあまりないように思える。


火・水・土・風といった基本的な属性だけでなく、雷や爆破、睡眠属性とかもあった。


少し特殊な属性でも、特に気にされないだろう。


オーラを強く右腕に込める。


ヒュンヒュン、ヒュンヒュン。


次々と根の鞭が振り下ろされてくる。


オーラを込めた右腕に魔法を乗せて拳を突き出す。


「冷空衝撃波!!」


シキに琴線を刺激され適当に思いついた技名を叫びながら魔法を放つ。


突き出した拳から、トルネード状の冷気を纏った衝撃波がトレントの根をまとめて打ち返し、辺りは少し涼しくなる。


咄嗟に思いついた技名にしては良い技名を付けられたものだ。


冷気の魔法は、アスタロートのイメージ道理に放たれた。


アスタロートが、シープートというキャラクターに設定した属性だ。


冷気属性もちの格闘家だ。


勇者の仲間と旅をして強くなるにつれて、冷気から自然と氷属性も操れるように成長する算段だ。


「きゃー。神様、女神様、シープート様!一生付いていきます。」


「やったか?」


「いえ、分かりませんが、まだかと、ただの衝撃波なので。」


足を止めた2人に手応えを伝える。


後ろを振り返ると動きを止めたトレントがいる。


あれ、もしかして本当にやっつけたの?


「またまた、ご謙遜をトレントの奴動いてないですよ。寒いのが弱点だったんじゃない?」


「おい、シキ不用心だぞ。トレントの観察を怠るな。」


「はーい。いやぁ、一時はどうなるかと思ったけど、思ったより大したことないんじゃないこいつ。」


「トレントの亜種が普通のトレントより弱いなんて考えにくいが・・・。」


シキが足を止めて、ガイモンとアスタロートも足を止める。


確かにトレントが動く気配がない。


シキの言うように弱点だったのだろうか?


攻撃していた根は地面に力なく横たわっている。


移動のために足の用に使用していた根も・・・。


トレントの足として機能していた根が地面に突き刺さっていた。


このタイミングでただ地面に根を突き刺したとは思えない。


おそらく敵を油断させてからの死角からの攻撃だ。


シキとガイモンの近くの地面が少し蠢いたのが見て取れた。


「違う、地面だ避けろ。」






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