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その9


「なんで居るんだよ?」

「あ、ジュース買いに。 てか何したん?」

「俺が殴られんのはよくある光景だろ」

「まぁそれは確かに。 でも女子からビンタくらうのは初めて見た」




俺だってあんな風にくらったのは初めてだよ、いつも殴られてたからなんともないけどな。




「ゆいのこと好きだったの?」

「いや、面識そんなにないし」

「まぁ西澤に相手されないのあんたのせいにしてるくらいだからね、ちょうどいいサンドバッグされたんだね。 てかゆいに話し掛けるなんて田沼って意外とメンクイなんだねぇ」

「どこから見てた? そこまで知ってんなら好きだったの? なんてよく言えたもんだ」

「えへへ、実は結構最初の方から。 修羅場だぁー! ってワクワクして見てた」

「趣味悪ッ」




すると広瀬は後ろに回してた手を出して俺に何か投げてきたのでキャッチするとジュースだった。




「何これ?」

「あげる」

「ふーん、サンキュー」

「まぁビンタされたけど元気出しなよ」

「特に落ち込んでない、というよりさっさと部活に戻れよ」




「はいはーい」と言って広瀬は行った。




それから更に1ヶ月ほどが過ぎた……




鏡の前に上半身裸の自分を見詰める。




いやぁー、たった数ヶ月だけど結構肉体改造も効果出るよなぁ。 友人からもストイックだよなと言われてたけど頑張ったからなぁ。 弛んでた腹は見事な腹筋に生まれ変わり胸板も少しだけ厚くなっていた。




元が最低な身体だったからか鍛えるのもテンションが上がった。 髪もちゃんと美容室でセットしたおかげか顔付きもあの田沼とは思えない…… とはいかないが田沼にしては上々だろう。 田沼にしてはだが。




「あんた…… こんな頭良かったっけ?」

「勉強めっちゃしたからな」




心なしか田沼母は嬉しそうだ、俺はもうこの母親をとっくに自分の母親と受け入れていた。 




最初は田沼がこんな風になったのは家庭の問題とかが関係あるんじゃないかと思って警戒していたのだがこの母親に至ってはまだまともだ。 田沼があの状態じゃ厳しく接するしかなかったんだろうしな。




俺の本当の親は俺が田沼みたいな子供だったら愛してくれたんだろうか? という疑問がふと過るが田沼として生きると決めた俺にはもうどうでもいいことかと思った。 




「クソ田沼ッ!!」

「なんだよ? バカ共」




三馬鹿が絡んでくるがもう逃げるつもりもない。




「なんか言いたげだなぁ? あ、もしかして呼び止めたはいいがあのクソ田沼に返り討ちにされるかもしれないとか思ったか? 喧嘩腰で来た手前何もしないなんていう選択肢はないし困ったなぁ、てとこだろう?」




敢えて挑発する。 あの田沼にここまで言われたんならもう引き返せない。




「よくそこまで言えたなぁ、お?」




前田が拳を鳴らして俺に近付く…… 結果は俺の勝ちだった、元は西澤だしその感覚に身体も少しはついていけるようになった。 流石に何度か殴られたけどな。




「お、お前ホントに田沼なのか?」




片肘を付いて起き上がろうとした前田の肘を蹴り飛ばす。




「なあ、誰に見える? ちゃんと田沼に見えてないのかお前には」




こいつらにはお世話になったので俺からもキッチリお礼をする… なんてことはしない。 ある意味で感謝しているからだ、こいつらのいじめがしつこいからとっとと鍛えなきゃとも思ったとかもあるからな。




「た… たッ」

「なぁーんてな、今度はお前らも試してみる?」




残りの2人を見るともうそんな気力がないのか前田を連れて逃げていった。




「えー、また殴られたの?」

「そんなの田沼なんだから当たり前だろ」

「あはは、自虐ネタ好きだね。 田沼だからが板についてますなぁ」




そんな時廊下を見ると西澤(田沼)が見えたが俺はギョッとする、何故なら自分で言うのもあれだがあれだけあった華やかさがなくなっている。




1週間見てないと思ったら随分変わったなぁ、まるで田沼の精神が具現化したみたいだ。 まぁ俺は今は西澤じゃないしいいか。




「いやでも何があって田沼がここまで変わるの? 違う意味でキモいんだけど」




柳原は田沼がいくらマシになってもそこは変わらずだな。




「そういえばさ、あかりどうすんの?」

「何が?」

「好きでもない男バスの先輩に言い寄られててキツいって言ってたじゃん」

「あーん、思い出させないでよぉ」




なんだ色恋沙汰か、広瀬の見た目からしたら別にそんなことあっても不思議じゃないけどな。




「カレ居るとかで切り抜けるとかは?」

「いやぁ、それであたしに付き合わされる方も迷わ…」




広瀬は言いながら俺を見てピタッと硬まる、嫌な予感がした。




「えへへ、良さそうなの居たかも」




そんな広瀬に俺と柳原は言葉を失う。





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