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その8


「部活行くよー百合」

「ちょっと待ってよあかり!」




掃除が終わると広瀬と柳原は部活に向かった、どうやら2人はバスケ部みたいだ。




部活か、そういえば田沼は何部に入っていたんだ? 特に行ってなくても何も言われないと考えると大方文化系のサボりやすい部活なんだろうけど。 西澤時代の俺も同じ理由でそうだったしな。




「田沼は真っ直ぐ帰ってるみたいだけど何部?」

「何部だっけ?」




訊いてきた広瀬にそう返すとポカンとして「またそのネタ〜?」と呆れられた。




んー、まぁ冷やかしと思われるだろうがちょっとはいろんな部を見て回ろうかな。




とりあえず見やすいスポーツ系の部活を見て回る、野球部なんかはそうそうお邪魔するには厳しそうだし本当に見るだけだ。 




前だったらまぁよくやってるなぁと感じただけだがこの身体になってみると自分は何がどれくらい出来るんだろう? と気になってくるから不思議だ。




サッカーは結構得意だったな、西澤の時の話だが、テニスも面白そうだ。




そうしているうちに体育館に行きバレーボール部とバスケ部、バトミントン部や卓球部の見学をしていた。




「田沼何してんの??」




そう声がしたので振り向くと広瀬だった。 




「いや、ちょっと見学…… てか何部かよくわかんないからさ」

「は? それネタじゃなかったの?」

「ネタじゃねぇよ、つーか俺なんかに構ってないで部活戻れよ暇なのか?」

「暇なわけないっしょ、あんたがポツンとしておろおろしてるからクラスメイトのよしみで来てあげたのに」

「クラスメイトのよしみねぇ、最近ちょっと話しただけだろ」

「田沼こそ最近のそのオラオラ口調ウケるんですけど」



あ、確かに。 しまったな、田沼の口調とかよくわかんねぇし今更だし。



「僕はこれで帰るので」

「ぶッ!!? いやそれは露骨過ぎるし、あははッ!!」



その時広瀬に向かってタオルが飛んできて広瀬の頭に当たった、投げたのは柳原だった。




「あかり〜、そんなんと話してると勘違いされるよ」

「何を勘違いするの?」

「あんたと田沼が良い感じなんじゃないかって」

「え、良い感じなんじゃないの?」




広瀬が俺の肩に手を置き柳原に向かってピースしてみせた。




「は?!」

「あはは、すぐそうなる〜、普通にお隣の友達って意味でしょーに」

「いや友達なわけこれが?! ばっちぃから触んな!」




汗だくなお前らよりはいくらか綺麗だが?




「はいはい、百合を揶揄うのは楽しいなぁ」




「じゃあ田沼、視姦されてると勘違いされないように見学しててね」と柳原を連れて広瀬はバスケ部の方に戻って行った。




変な奴と思いながら俺はボーッと体育館の部活の様子を見ていたら筋トレをしたくなってきたので家に帰ろうとした。




「待って待って!」




広瀬の声が聴こえて今度はなんだよ? と思って振り向くがただ単にボールを追い掛けているだけだった、その広瀬がなんだか生き生きしているように見えて少しイラッとしていた自分がいた。




学校から出ようとした時昇降口の方から聞き慣れた声が聴こえてきたので俺は陰に隠れてそっと覗き見る。




西澤(田沼)だ、隣に女子も居る。




隣の女子は五木 ゆいといって俺と田沼が入れ替わった時もその場にいた女だ。




「なんか評判悪くなってるよ西澤」

「ああ、だからなんだよ?」

「女遊び激しいって…… 少し自重した方が」

「お前なんなの? 俺の彼女か何かか?」

「え… そ、それは」




なんつー傍若無人さ、そりゃ噂も立つわ。 こういうの面倒だから女子と極力距離を置いてたってのに。 そのうち刺されるぞお前。




「ウゼェんだよ、消えろよ」

「酷い…」

「そういうとこがまたウザいんだわ」




いい加減気付けよ、俺は冷血人間だったけど正面切ってそういうこと言う奴じゃなかっただろ。




五木はその場で声を殺して泣いているが西澤はそれを放っておいてさっさと帰ってしまった。 そして俺は思う、出て行き辛いじゃんと。




俺も早く帰りたいんだけどいつまで泣いてんだ? あんな冷たい奴なんてどうでもいいだろう? でも待ってても動きそうにないな。




なので俺は知らんぷりして帰ることにした、バッタリと出くわしてしまうがもういいや田沼だし俺は。




何気なく今来ましたよな感じで通り過ぎようとすると五木の視線が俺に向く、だが田沼なのですぐに目をそらしてゴシゴシと涙を拭いていた。




「クソ田沼」




何故かそう言われたが知らんぷりを決め込んだ。 だが……




「お前のせいだ!」

「なんだよ? 訳分からん」

「嘘つくな! 西澤はあの時からおかしくなった! お前と倒れてから」




んだよ、ちょっとはわかってんじゃねぇか。 だけどそれは田沼のせいだし。 って今は俺が田沼か、そう考えるとあながち間違いじゃないがお前がクソと言ってる俺が元・西澤なんだ。 信じるわけないと思うけど。




「変な言い掛かりはよせよ、あいつが元からそういう奴なんじゃねぇの? 倒れて枷が外れたんだろ」




すると頬に痛みが走った、ビンタされていたのだ。




これだから女は… すぐにヒス起こすんだよなぁ、お前西澤のなんなんだ? 彼女か? あ、ヤベ、これ田沼と同じじゃん。 でもよく考えたら立場こそ違うが俺とあいつ似た者同士だったりして。 んなわけないな。




「最ッ低ッ!!」




五木は俺にビンタをくらわせて行ってしまった。




「うわ、修羅場」




何故か広瀬がその光景を目撃していた。



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