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その6


コソコソと教室に行く、理由は昨日の三馬鹿から逃げた事だった。 




よし、会わないで済んだ。 




だが教室に居る奴が俺を一度見てまた見る。 なんだ? と思いながら席まで行くと「髪切ってる」と聴こえた。




なんだ、そんなことか。




「あれ、イメチェン? ちょっとマシになったじゃん」




広瀬が覗き込むように見て言ってきた。




「前が見え辛かったから」

「そりゃあ目隠してたらね」

「あかり〜、またそんなのに構って」

「いいじゃん、ちょっと触れてやらないと田沼も髪切った甲斐がないじゃんと思ってさ」




どうも広瀬という奴は俺を面白がって絡んでくるみたいだ。




「うわぁ、目付きキモい。 髪切ったからって田沼は田沼なんだし陰キャのオーラ隠せてないし」

「そお? ちょっとマシになってない??」

「ん、んん〜? 1ミリが2ミリになったくらい」

「なんかその表現だと増えてるじゃん、良いと思ってるんだ、あははッ」

「うるさい! てかこんな奴より西澤のとこ行こうよ、なんか西澤今まで素っ気なかったのに女子ともよく話してるみたいだよ?」

「西澤が?」




…… 野郎、いやでも今は俺じゃないか。




「あかりだって西澤ちょっといいかもって言ってたじゃん」

「んー、まぁね」



なんだ、こいつも節穴だな。 



やめとけ、今の西澤は俺じゃないぞ。 なんて言ってもまた面倒な展開にしかならないなとは思うが俺の身体でどうでもいい女を食い物にするのも元は自分の身体だったので気が引ける。 だからつい口に出てしまった言葉が……




「どこがいいんだ?」

「「は?」」




まるで予想外のところからツッコミを入れられた2人は俺を凝視する。 




言いたいことはわかる、俺みたいなのが西澤に意を唱えるなんて何様だと言いたいんだろう、鏡で自分の顔をよく見てから発言しろといったありとあらゆる批判の意見が頭に飛び交う。




「あんた自分を鏡で見てからものを言えば?」

「でも内面とか最低かもしれないだろ?」




広瀬の友人は俺の発言にやはりイラッとしたようだ。 だが広瀬は口を手で押さえて笑おうとするのを堪えている。




「見た目も内面もクソな奴があろうことか西澤をディスろうとしているなんて。 ねぇあかり、あんたも身の程知らずなこいつに…… え?」

「あ、いやごめん、ぶふッ、ダメだッ」




広瀬は机に伏せって身体をプルプルとさせている。 俺の発言が多分広瀬のツボにハマったみたいだ。




「ちょっと〜、あかり」

「ごめんごめん。 いやぁー、笑った笑った」

「こいつの発言不快感しか憶えないんだけど何爆笑してんのよ」

「だって田沼が内面とかって言い出すから」

「ねぇー、外見も内面も最悪なこいつが言ってもねぇ」




そうも言われるだろうとは思ってた、改めて田沼誠司の落ちぶれ振りを確認した。




「何々? 俺らも混ぜてくんね?」

「えー?」




広瀬がニコニコしていると他の男子が広瀬に話し掛ける、すぐにわかったことなのだが広瀬はこのクラスで結構人気だ、多分それは明るくて田沼のような奴にも普通に話せる優しさというか懐の深さというか… それと見た目も関係してるかな。 




健康そうな肌の色にパチッとした元気いっぱいが漲る目にスッと綺麗な鼻筋にいわゆる容姿が整ってる部類、だから自然と誰かしら集まってくる。




「つーかなんで昨日からこいつと話してるんだ? 今まで隣でも話してなかったじゃん」

「最初はよろしくねって話し掛けたんだよ、でも話し掛けるなって雰囲気が出てて遠慮してたんだけどさ、昨日また話してみたら案外普通でさ、ねぇー?」




広瀬は俺に知ってるよねという感じで言ってくるがそれは田沼だったんだから俺が知るところじゃない。




「ほら、めっちゃイヤな感じゃん」

「あれぇ? 人見知りなのかな田沼って」

「だとしても全然可愛くもねぇけどな」

「言えてる、もしかして広瀬を意識してんじゃね? 田沼の癖に」

「え〜、そうなの田沼?」



広瀬が俺の顔を覗き込んできた。 これは絶対に揶揄ってるなとわかる。 だがそんな時不意に肩をポンと叩かれる。




「楽しそうだなぁ田沼」




三馬鹿の前田だった。 いつかは捕まると思ってたけどな。




「ちょいこっち来いや」

「まーたやってるよ前田は」

「広瀬! 昨日俺らに嘘教えたろ?!」

「え? なんのことー? わかんなーい」




白々しく広瀬は言った。 




「てめぇ…」

「ちょっといいか?」




そしたら今度は意外にも西澤…… きっと田沼なんだろうが。 なんか今日の朝は目まぐるしいな。




「に、西澤」

「あ、お前に用はねぇから。 俺が用があるのはそこのそいつ」




西澤は俺に指差す。 ちょうど良かった、俺もこいつと話したかったんだ。






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