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その5


「親御さん呼んだから」

「ありがとうございます」




ウザったそうにする先生にぺこりと頭を下げお礼を言った、結局田沼の親を呼び付けた方が早いと思ったからだ。 具合悪くてという理由は田沼だから通りやすかった。




三馬鹿は俺を追うのにもう飽きたのか居ないみたいだし職員室の待合室に篭って待っていた。




それにしても新鮮な1日だったなぁ、ボコられキモいと罵られ周囲から冷ややかな視線を浴びる、西澤要の時とはえらい違いだ。




感慨に浸っていると迎えに来たみたいで田沼の母親のところへ連れて行かれる。 




「すみません、うちの誠司がご迷惑お掛けして」




俺が近付くと頭を掴まれ下げさせられる、その手には力が籠っていた。




車の中へ入ると田沼母から盛大な溜め息が漏れる、それから俺をジロリと睨むと……




「あんたって子は! 私に恥ばっかりかかせて!! この前だって不審者扱いされてご近所さんにご迷惑お掛けしたばっかりなのにあんたは!!」




不審者って…… 何したんだ田沼は。 まぁ田沼なら居るだけで不審者っぽいが。




それからあーだこーだ言われ田沼の家に着くと田沼母はまた仕事に行ってくるということで家には俺がひとり。 




田沼の家を散策してみる、別に今は俺の家なんだし特に遠慮することもないし。 パッと見てから田沼の部屋だろうと思わしき部屋に入る。 




結構散らかってるし…… 本棚にはなんか猟奇殺人系の映画のDVDに似たような趣向の本、それとベッドにも物がごちゃごちゃ。




「とりあえず片付けるか、田沼には悪いがどうせ戻れるかもわかんねぇんだし」




というか入れ替わりに関して何かこの部屋にヒントはないだろうか? そう思い机の上にあったパソコンを起動させる。 何か検索履歴でも見れぱこの現象の要因がわかるかもと思った。




「まぁ消してるよなぁ普通」



入れ替わろうとしていたなら手掛かりになるものは残すはずないか。



調べてもそれらしき形跡は見つからない。 携帯も持っていないようだしネットか何かで知識を集めたんだろうが…




「やーめたッ」




事態を把握するために要因がわかればと思ったがわからなければそれでいい、俺は特別自分の身体に執着がなかった。 これまで暮らしてきた親子とかの別れなど悲しむべきことは沢山あるはずなのに一般的なそういう感情が俺には欠如しているのかあまり湧いてこない。 俺にとって親なんてどうでもいいしな。




それよりも新しい人生を手に入れた方の充実が何か得体の知れないやる気をくれた。




「ヤバいな、マジでこの状況に満足してるのかも俺」




部屋を片付けて洗面所に行き鏡を見て自分の顔を触る。 




「マジで田沼だ」




隠れがちな目の前髪を上げる。 髪を上げてみたらイケメンというテンプレ的なことも起こらない、やはり田沼は田沼だった。 この一重で目付きの悪さも印象を悪くさせるだろうな。




「邪魔だな、切っちまうか。 どうせ今は俺の身体だ」




ハサミを探し出してモサッとした前髪をすかしながら切り視界が良くなる。 




よし! よくこんな前髪で生活してたなあいつ、食い物食う時絶対邪魔だったろ。 それにしても不健康そうな顔してるなぁ、目の下のクマも酷いし。 あ、身体も見てみよう。




上半身裸になるとそこにはヒョロガリで貧相な体付きがあった、なのに腹はぽっこり。 これはないなと思い今日から西澤の身体ではいつもやっていた筋トレをすることにした。




しばらくすると田沼母が帰ってきた。




「あんた何やってんの?」

「ああ、部屋が散らかってたから片付けとか。 要らなそうな物とか一旦ここにおかしてもらってもらっていいかな?」

「え? あ、ああ、いいけど…… それ」




怪訝な目で俺の頭を見る田沼母。




「その髪は?」

「さっき切った」

「具合は?」

「なんだか治ったっぽくて。 だったら部屋の片付けくらいはしておこうかなって」

「…… そう」




夕飯を食べてからも掃除をして大分綺麗になった、埃とかも尋常じゃなかったからな。 結構綺麗好きなのかもしれない俺は。




如何わしいものは特になかったのは少し残念だったが特にネタになるような友達も居ないし今となっては俺のことだしな。




てか田沼の父さん見てないな、もう21時なのに仕事遅いのかな? 




結局その日は田沼の父さんと顔を合わせることはなかった、次の日の朝も田沼の父さんは姿を見せない。 ここでまさか母子家庭なのでは? と思った。 それならそれでいいし。




「母さんを呼び出すくらい具合悪くなるんなら学校は休みなさい」

「うん、でも大丈夫そうだから今日も行くよ」

「…… 前々から思ってたんだけどあんた、いえ、やっぱりいいわ」




何か言いかけてやめる、なんだよ気になるしと思ったが俺は学校に向かった。







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