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最終話


クリスマスも過ぎた頃だった。




「なんで……」

「えへへ」




テヘッと笑う広瀬だがいきなり来られたので怪訝な目をして睨んでやった。




「今度はそっちに遊びに行きたいって言ってたし… ダメ?」

「ダメ、ばいばい」

「ちょッ?!」




バタンと玄関を閉めるとドンドンとドアを叩くのでもう1度開けた。




「あ、良かったぁ。 やっぱ可愛さが足りないのかなぁ、ゆい見てるから」

「五木でも同じだから」

「お、そっか! なら良かった」

「何が良いんだか……」

「お邪魔してもいい?」

「アポ無しで来たくせに今更だなそれ」




来てしまったものは仕方ない、両親も仕事なので広瀬を家にあげた。 こいつは相変わらず警戒心というものが欠如しているな。




「ここが西澤の家かぁー」

「おい、お前1度連れ込まれてるだろ」

「そうだった、まぁあの時はあの時。 それに前もって西澤に連絡入れたら居留守使われそうだし」

「かもな」




ん? 緊張してるな広瀬の奴。 




「顔赤いぞ」

「え?!」

「だ、だって! か……」

「か?」

「…… かっこいいから西澤」




消え入りそうな声だがしっかり聴こえて自分で言ってしまったことに悶絶したのか手で触ってもどうにもならないのに広瀬は顔をペタペタと触って確かめている。




「あ! 化粧してたのに触らせないでったら」

「あ、そう、別に触る気ないし」

「うぐぐ…… それにクリスマスの時も思ったけど格好が闇の使徒じゃない」

「そりゃ田沼のセンスだろ、あいつは元からろくな私服持ってなかった」

「そう… だよね」




やっぱ変にモジモジしてるな、いつもと違うからか意地悪して広瀬の慌てる顔を見ているのが楽しかった。




「あ! そもそも化粧してんだから赤くなってもよくわかんないでしょ!」

「そうだな、広瀬からしてみたらただの図星だっただけだもんな」

「今日の西澤いつにも増して意地悪だ」




ツーンと広瀬がそっぽを向いたので俺はコーヒーを淹れてくる。




「まさかの放置?!」

「ほら、お前のコーヒー」

「あ、どうも……」




納得がいかないのか広瀬はコーヒーを飲みながら脚をジタバタとさせている。 




「行儀悪いぞ」

「あんたのせいでね!」

「なんか久し振りな気がしてな、広瀬とこんな風に話するのは」

「うん… 結局西澤は別のクラスだもんね。 あたしちょっと寂しかった、西澤はそうでもないみたいだけど」

「俺はもともと誰かに居て欲しいとか思う人間じゃなかったしな」

「…… だよね」




バカだな広瀬は、わかってるくせに自分から傷付くようなこと訊いて。 でも広瀬に言ったのは少し前の俺のことだ。




「今は違うけどな」

「だよね…… え?」

「お前と居ると楽しいよ」

「た、楽しい?」

「ああ、楽しい」

「なんなの、下げて上げてまた下げるんでしょ?」




意地悪し過ぎて流石の広瀬もむくれている。




「違うって」

「あたしね、今までちゃんと言えなくてずっとモヤモヤしてたことあるの。 今日はそれ言いに来たんだ」

「何?」

「…… 言っても嫌いにならない?」




不安そうな顔で広瀬が俺に訊いた。




「ああ」

「じゃあ言うね…… 西澤が好き」

「俺も広瀬のこと好きだよ」

「ぶあッ!!! な、なんなのその不意打ち?!」

「あの時、田沼が広瀬を拉致った時俺は本気でお前のこと心配したんだ、その時…… いやもっと前からからだったかもしれない、でも気づいたんだ、好きってことに」

「あ、あの…… いきなりそんなこと言われたから照れる。 それにいいの、ゆいは?」

「実は五木にはもう言ってあるんだ」

「へ?」

「クリスマスの時にな」

「へ、へぇ〜…… それで?」

「奪い返すからいいってさ」

「知らない間にそんな事に…… だから当たりが前より強かったんだ。 そ、それにしてもそっかぁ、あたしが好き、ねぇ……」




広瀬は俺を見て何かして欲しいような顔をした。 だから腰に手を回した、ビックリしたのかジタバタと動くがキスをする。




「きょ、極端過ぎる西澤…… 抱きしめるだけかと思ってたのに」

「そうしようと思ったんだけど今みたいな広瀬の顔が見たくてな」




「もう!」と怒ったんだか喜んでんだかわからない顔をしていたが俺は田沼と入れ替われて良かった、じゃなきゃこいつを他の男に取られてたかもしれない、そう思うほど俺の心は広瀬に奪われていた。




「にしてもさ、変だと思ってたくせに結局最後まで俺のこと訊かなかったよな」

「ああ…… まあ訊いたとしてもあたしの気持ちは変わらなかったと思うし、なら訊かなくてもいいやって」

「だろうな、広瀬だもんな」

「なんかバカにしてるように聞こえる〜。 ホント捻くれてるんだから」

「ところで友達には超甘い広瀬は彼氏にはどうなるんだ?」




訊くと広瀬は「もうこれ以上いじめないでよぉ〜」と言って自分から俺の胸に飛び込んできた。















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― 新着の感想 ―
[一言] 先が気になり一気に読めました。面白かったです。 田沼が色々とやらかして、被害を受けた女生徒等もいたのかなと思うと、元に戻った後その辺りのフォローどうしたのか気になりました。 田沼に対して…
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