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その41


肌寒くなる季節のある日広瀬が学校を休んだ。 広瀬も人間だしたまには休むこともあるだろうと思いつつ過ごしていた。 




俺は最近の広瀬と関わることで次第に親密になっていくような妙な気分のせいで西澤(田沼)のことを失念していたことは迂闊という以外なかった。




「田沼! さっきあかりのスマホからこんなのが!! あんた何したの?!」




昼飯を食べて少し経ってから柳原が血相を変えて俺のところに来た。




「何がだよ?」




俺の胸ぐらを掴んでユサユサと揺さぶってスマホを見せた。




『広瀬あかりは預かった、無事に返してほしければ田沼誠司に来いと伝えろ。 警察を呼んだり余計なことをすれば広瀬あかりは確実に死ぬ』…… と。 




寝ているのか気絶しているのかわからない広瀬の姿も映っていた。




…… あいつとうとうやりやがった、思えば何か仕掛けようとしていた。 なのに俺は留意していたはずなのに後手に回ってしまった。




いろいろなことが頭を過ぎる、俺の両親はこんな事態に何をやってるんだ?




そもそも奴の目的はなんだ? 痩せ細って今にも倒れそうな西澤の姿が思い起こされる。 そして広瀬との関係も勘繰る。




そこから導き出される奴の目的……




やられた、あいつはギリギリの瀬戸際に俺と再び身体を交換する気だ、この作り上げた田沼の身体と俺の身体、そうなれば俺は田沼に勝てる可能性はないかも。 そして広瀬のことも根こそぎ持っていく、西澤は犯罪を犯した悪者。




ヤバいな、想像以上に。 俺の勝ちはこのまま何もせず広瀬を見捨てることか。 そんなこと容易い。 だが……




「…… それ本当なのか?」

「はあ?! この後に及んで何言ってんの? ここに写ってるのは間違いなくあかりでしょ! てか西澤がどうしてあかりを…… ってどこ行くのよ!!」

「アテがある」

「ちょっと待ってよ!!」




俺は清春のクラスに向かった。 そしてちょうどよく清春が居たので引っ張って連れて来る。




「急になんだ?」

「手伝って欲しいことがある」




俺ひとりで行けば確実に田沼にやられる。 俺の予想はこうだ、おそらく助けに行ったとして広瀬に刃物を突き立て俺をおびき寄せ範囲に入ったら身体の交換。 それは良しとしよう、だが問題はその後……




「断る」

「なんだと?」

「虫が良いんだよお前は。 散々好き勝手やって自分がピンチになったら助けろだ? ふざけんなよ!」




確かにな、本当に虫が良い話だ。 あれだけやっておきながらな、こいつに助けを求めるなんて筋違いもいいとこだ。




「よくわかんねぇけど大分焦ってるなお前。 そんな隠せないほど焦ってるなら昔のお前だったら俺はすぐ助けた、だが今は無理だ。 罰が下ったんじゃねぇの?」

「待ってよ、あたしからも頼むからお願い! 田沼と一緒に行ってやって!!」

「広瀬の友達か? 悪いな、こいつに力を貸す理由もないし助けてやるような資格もない」

「ッ!! あんたのせいだ…… 田沼ッ!」




柳原の声がデカいせいで人が集まってくる、ダメだ。 これ以上は……




俺はその場から2人を置いて駆け出した。




なんとかするしかない、なんで俺はそう思ってるんだ。 広瀬や田沼なんか放置しとけば西澤は勝手に自滅してくれる。




だけど奴の自滅はきっと広瀬を道連れにする、あいつなら絶対そうする。 ああ、クソッ! 俺の田沼ライフもこれで終わりかッ、結果は犯罪未遂とは。




認めるよ清春、俺は臆病者だ。 五木にしたことお前にしたこと、こんなやり方しか出来ない自分に後悔してる。 それになんとかしようと思うくらい広瀬、お前に惹かれてるって。 どうだ広瀬嬉しいか? なのに負け確だこれは。 クソ、田沼がスマホ持ってないのがこんなにもイラつくとは。




学校を飛び出して西澤の家に向かう、背景で場所が俺の家だとすぐにわかったからだ。 




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