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その37


「じゃあまた明日田沼ッ」

「さっさと部活行けよ」

「そうだよこんな無愛想なのほっといてさっさと行くよ」

「つれないなぁ百合は。 もう百合も田沼のこと友達みたいに思ってるんでしょ」

「いだッ!」




余計なことを言うからな広瀬、バカな奴。




「本気でゲンコツしたな百合!」

「あんたのせいでしょ! これのどこが友達よアホ」

「そんなこと言ってぇ〜、あたしも百合も田沼に貸しひとつあるんだからさ」

「貸し?」

「レイカの時助けてもらったじゃん」

「ああ…… 田沼の変態行為がまさかの奇跡を起こしたあれ。 絶対偶然だから!」

「それでも田沼が庇ってくれなきゃどうなってたか」

「あのさ、どうでもいいから部活行けよ」

「…… 田沼」

「なんだ?」




広瀬が少し元気なさそうに俺に声を掛けた。




「あ…… うーん。 にひひ」

「は? なんだその不気味な笑いは?」




よくわからんがいちいち気にすることない、広瀬だから。




それにしても田沼か…… 最近姿を見せないがあいつは想像以上に危ない奴かもしれない、ブチギレたらヤバいかもな。 前に西澤(田沼)と喧嘩した時あいつがもし刃物なんか持ってたらやられていたのは俺だな。




でもあの時はあいつも西澤としてやっていくという枷があったからそこまでには及んではいない、広瀬にも執着していた。 




でも両方とも上手く行かなかった、あいつの心情を推し量るなんて無理だがもう普通ではないかもしれない。 




「よお、クズヤロー」

「清春…」




靴を履こうと思ったらバッタリ偶然会ってしまう。




「まだ本当の田沼には戻ってねぇようで何よりだな」

「ああ、まったくだ。 それでこの前のリベンジでもしたくて話し掛けてきたのか?」

「お前変わったよな、ちょっと前のお前は…… いや、今のが素なのか? やっぱクズヤローだな」




やれやれ、喧嘩する気分じゃないんだけどな。 こいつと会うとこうなると思った。




「だからなんだよ? クズヤローの身体で性格もクズヤローならピッタリでいいじゃねぇか」

「五木も広瀬もこんな奴のどこが良いんだかな」





そして夜になりいつものロードワークをする為に外に出てしばらく走っていると後ろの方に誰かの気配を感じた。 




ピタッと止まって後ろを振り向くとそこには西澤(田沼)が居た。 少しこいつのことを考えていたら現れやがった。




「今度はストーカーか? しかも俺の。 キツいだろ俺についてくるの」

「ククッ……」




相変わらず顔色が悪い、不規則な生活してるな。 異様にやつれた感もある。




「調子良さそうだな俺の身体」

「お前の? 元お前の身体だ、調子悪いから身体交換しようとか言うんじゃないだろうな?」

「まさか…… 返すわけないだろ」

「それを聞いて安心した、そんな身体返されても迷惑だ」




今更西澤に戻りたくもないしな。




「広瀬とは上手くやってるのか?」

「なんで?」

「答えろよ、上手くやってるのか?」




なんだこいつ? 




「お前に教える義理はねぇな」

「答えろッ!!」




バカかこいつ?! 近所迷惑だろ不審者野郎め。




「それなりにな、つーか夜にそんな大声出してたら通報されるぞお前」




俺がこの場から早く離れようと思い走り出すともう追ってくる気配はなかった。






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