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その36


…… し…… に……




田沼? 西澤?




パッと目が覚めた、だるい身体を起こす。 まだベッドから出たくないのは外が寒いからだろうか。




窓を開けると辺り一面真っ白で雪に覆われていた。 ふとガラスに映る自分の顔を見て頬をなぞった。




なんだか長い夢を見ていたみたいだ。




そう思ってまたベッドに横になる、それからまた少し眠ったみたいだ。 多分昨日筋トレを結構したから体が疲れてるんだ。




「あら、今朝は寝坊なのね」

「たまには寝坊くらいするだろ」

「ご飯食べる?」

「うん」




母さんが朝食を用意している間テレビをボーッと観ていると今日はホワイトクリスマスでめでたいなんて言ってる。




クリスマスか、五木にも毎年誘われてたけどいつも断ってたな。 




「クリスマス一緒に祝おうね」




断られ続けてるのに毎回同じこと言ってきやがる。 「加藤も呼ぶからさ」と言われても俺はクリスマスとか誰かと祝うとかしないんだ。 精々家族と祝うくらいか? いいや、思えば形だけだったな。




「今日は予定とかあるの?」

「さあ」




母さんにそう言われ曖昧に返して俺は部屋に戻るがまた戻って言った。




「やっぱ予定あるわ」




母さんはニコッと笑って「そう」と言った。




まだ雪降ってんだな、今日はちょっと積もりそうだな。




それからしばらくして外に出ると冷やっと来る風と共に雪が顔に当たる。 雪が降ってようと毎回やってたロードワークなので関係ない。




けれど鈍った身体と雪道のせいか意外と疲れやすく息が切れてきた。 なんとかここまで走ろうという距離を走り切り家に帰るとシャワーを浴びる。




その後着替えてまた外へ出た。




「メリークリスマス! 珍し過ぎてどうしたことかと思ったわ」




加藤が俺の背中をバシバシ叩いてきた。




「うるさい、だったら別に行かなくてもいいんだけどな」

「ここまで来てドタキャンとかお前最低以外の何者でもないだろ」

「最低野郎で結構」

「はいはい、でも前よりは良いとは思うな素を出してる感じで」

「あっそ」




別にクリスマスくらいでと思ったがまぁいつぶりかわからないくらいに久し振りだったからか…… いいや、きっとこれも広瀬と関わったからなんだろうな。




「メリークリスマス!!」

「呪文みたいに言うのやめてくれないか」

「せっかくのクリスマスなんだしいいじゃん」

「五木今日は滅茶苦茶張り切ってたもんな」

「だって… 当たり前じゃん!」




だからってサンタコスする程か? つーか毎年あんなの着てんのかあいつ? 




「じゃあ迎えに行ってくる」

「俺も行くか?」

「俺1人でいいよ」

「マジで呼ぶんだ…… はぁ〜」




五木は気持ちが乗らないようだが。 俺は行き慣れた道を歩るき玄関の前に立つとインターホンを鳴らした。









◇◇◇









「凄い田沼! 球技大会大活躍だったじゃん」

「意外よね、こいつが活躍するなんて」




田沼の身体でバスケは余裕だったがサッカーもリレーもかなり出来る様になっていた。 鍛えて俺の感覚とはいえもしかすると田沼も努力すれば結構運動は出来た方なのかもしれない。




今はこいつが行っていた一緒に弁当食べたいに柳原も来ていた。




「これで田沼の株もうなぎ上り! と思ったら校内に仕掛けたカメラもあってプラマイゼロどころかやっぱキモいで落ち着いたから可哀想に」




広瀬がよしよしと俺を撫でようとしたので腕を払った。




「ちょっとあかり、なんか最近田沼と距離近くない?」

「そんなつもりはないなぁ、元からこんなんだって」

「田沼! あかりに変なことしたらぶっ飛ばすからね」

「わッ!」




後ろで急にデカい声を出した柳原に広瀬がビックリして箸に持ってた卵焼きがポロリと落ちて俺は反射的にそれを拾おうとした。 広瀬も拾おうとした。




その動きが重なったせいか広瀬のおでこと俺のおでこがくっ付いた。




「げ…… こら田沼ッ!!」




柳原の言葉でパッと離れた広瀬はおでこを押さえながら後ろを向いた。




「や… ごめん田沼」

「? ああ」




反応が少しいつもと違った気がしたが気にしないことにした。 今になって思えば広瀬への負の感情を押し込めるようとしていたのかもしれない。





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