表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/48

その29


あった、広瀬を失望させる手段が。 俺は今までこんな奴に会ったことがない。 こいつはいつもいつも俺に揺さぶりをかける。




だったら俺はこいつとはとことん逆を行ってやる、泣かしてやる。 変なところで広瀬は覚悟が決まってる。 普通突き飛ばされたり口汚く罵れば大抵の女子は離れて行くのにこいつはビクともしない。




「た、田沼……」




広瀬の両手は頭の上で俺の片手にガッチリ抑えられ広瀬の腰を脚で抑え上に乗り俺もう片方のの片手はフリーだ。




「あの……」




戸惑っている、所詮は女子だ。 こいつの女子の部分を責めれば良かっただけのことだった、しかもこの田沼だ。




「お前は友達だからと何の気なしに俺を招いたんだろうがそれが大きな仇になったな」

「そうだね、冗談言えるくらいに元気になったじゃん」

「なんだと?」




この後に及んでこれを冗談と言い放つ広瀬に動揺して腕を押さえてる手が片方抜け広瀬の手が頬に触れる。




「田沼震えてる」

「バカか、俺が震えてるんじゃなくてお前がッ?!」




気付けば確かに俺が震えていた。 




なんでだ? 広瀬を傷付けたくないとか思ってんのか俺は? 思っていることと行動が共合わないなんて…




「田沼は肝心な時に優しさが出るよね? 甘ちゃんなんだね田沼も」

「は? 俺が甘ちゃんだと?!」

「うん。 だから何度でも言うよ、田沼は優しい」




五木をあんなに追い込んで清春をボコった俺が……




「好みじゃないタイプのあたしに無理なくていいからさ、洗濯物が乾くまで寛いでなよ」




どこまでこいつに調子を狂わせられるんだ俺は? なんでこいつだけ思ったようにならないんだ?




「お腹空いてない? なんか作ってこようか?」

「じゃあピザで」

「ピザって… 鍛えてるくせに。 あー、田沼もチートデイだ」

「一緒にすんな」




「待ってて」と言って広瀬が部屋を出て行った。 ピザなんてあいつが作れるんだろうか? と思いながら待つこと15分「出来たよー」と言いながら部屋に戻って来た。




「ピザは流石に無理だからピザトーストにしてみた、これならピザっぽいよねぇ」

「ああ…… まぁ」




食べ終わると食器を下に戻して広瀬は俺の正面に座ると「ふあ〜」と大きな口を開けて欠伸をした。




「なんか食べたら眠くなったよねぇ」




ああ、俺もとにかく今日は疲れた。 ほんの数時間だけだったけどいろいろあって疲れた。




疲れていてベッドを背もたれにしていたせいか俺は少しそこから意識が飛んでいたということは寝てしまったということだ。




そうして起きると毛布が掛けられていて隣には広瀬がくるまって寝ていた。 俺は何も思うことなくまだ眠かったのでそのままボーッとしていると下の方からピーッと音が聴こえて広瀬が目を覚ます。




「ん…… あ、洗濯物」




そう呟いたのを聴いて俺は気付かれないように薄く目を開けて広瀬が俺を起こさないようにそっと立ち上がり俺の顔を覗き込んだので俺は目を閉じた。




「ふはッ、寝顔は可愛い」




目を開けていたのを気付かれたと思ったがどうやら広瀬の小さな独り言だったみたいだ。 部屋を出て行き数分後にコーヒーの匂いと共に戻って来た広瀬はマグカップをふたつテーブルに置いた。




テーブルに寝そべり顔を俺に向けてこちらを見ていた。




「田沼……」




小さく広瀬は言った、俺は寝たフリをしているので無反応。




「まだ寝てるの? …… 反応なし」




独り言は尚も続く。




「またお昼ご飯一緒に食べよう」「遊びにも行きたいなぁ」「今度は百合も誘ってみる?」「頭良いなら勉強教えて」「あたし持久走は苦手なんだよね」「部活また見に来てもいいよ」

「服もあたしがコーディネートしてあげようか?」「あ、そういえば今の髪型似合ってるよ」「次は田沼の家にも行きたいな」




人が寝ててもこいつはずっとどうでもいいこと喋ってんだなと思い知る。




「起きてるのわかってるよ」




そう言われて目を開けてしまった。




「やっぱ起きてるし〜」

「ムカつくなお前って」

「はい、コーヒー。 制服は畳んでそこに置いといたからね」

「見てたからわかる」

「うわぁー、どこから寝たフリしてたの〜?」




綺麗だこいつは。 外見だけじゃない、俺みたいなドス黒い奴とは大違いだ。 そんな奴が俺のような人間を……




「お前ってダメ男が好きなのか?」

「へ? いきなり恋バナ?? 田沼がそんなこと言うなんて予想外だなぁ、しかもダメ男好きって、あははッ。 でもあたしは例え周りからダメってレッテル貼られてる人だったとしてもあたしはそうは思わない」

「そうか、なら結局ダメ男が好きなんだな」

「へ? うーん、まぁそういうことならそうかもね。 田沼こそどんな子がタイプ?」

「考えたこともねぇな」








◇◇◇








「聞いたぁ〜? 田沼が加藤のことボコったんだって」

「西澤の幼馴染でしょ、あいつ少しマシになったからって最近ちょっと調子こいてるよね」

「きっとあかりが仲良くしてるから勘違いしてんのかもねぇ」

「つーかあかりってあんな陰キャがタイプだったとかありえねぇ、そういえば先輩から告られたのも断ってたじゃん、どっちも調子こいてるよね」

「ねえ、わからせてあげようよ、田沼は所詮陰キャだしあかりには田沼並みに堕ちてもらうことにしない?」

「それ面白そうッ!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ