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その27


ちょうど休み時間に入った時だった、窓から外を見に行くと……




「あ、来たか」

「え?! 帰るの?」

「ああ、今日はもう早退した方がいいと思ってさ」

「どゆこと?」




しつこい広瀬が何々と呑気にうるさい。 俺は急いで支度して階段を降ると途中で清春に出くわした。




「よぉ加藤、思ったより遅かったな」

「なあ田沼、その軽薄な呼び方そろそろ改めたらどうだ? この臆病者」




臆病者だと?




「え? なんでそっちもびしょ濡れになってんの?」

「広瀬…… なんでお前はついて来るんだよ」

「だって田沼ただ事じゃなさそうな顔してたし」

「そうだな、だからもう関わるなよ? いい加減お前も煩わしいんだよ」

「おい、そうやって五木のことも蔑んだのか? あいつどうなったかお前わかってるのか?!」




何が何だかわからない広瀬は視線を俺と清春の間で行ったり来たりさせていた。




「ゆ、ゆいがどうかしたの?」

「自殺し掛けたんだよ」

「えッ?! ゆいが?」

「ああ、それをこいつがけしかけたんだよ!」

「た、田沼が??」




そうなるかもしれないと思った、だから清春を行かせた。 




「それで五木はどうした?」

「帰らせた、もう絶対そんなことはするなって言ったけどどうなるかわかんねぇ」

「でもどうにかなったんだろ? なら五木は大丈夫だ」




俺がそう言うと清春の目付きが更に鋭くなった、どの口が言ってるんだと言いたいんだろう。




「ねえ、わけがわかんないんだけど。 田沼、これってどういう事態なの?」

「広瀬、お前はもうこんなクズ野郎と関わるな。 来い、2人だけで話がある」

「いいだろう、聞いてやる」

「ちょッ、どこ行くの?!」




尚もついてこようとする広瀬の肩を掴んで力任せに押して廊下の壁の方に押した。 




「いッたぁッ!! 田沼、何」

「ついてくるなって言ったろクソが。 てめぇここまできて空気も読めずに呑気に友達気取りしてんじゃねぇぞ、俺の前から消えろよ」

「た…… ぬま?」




放心してる広瀬を後にして校舎裏に着いた。 人目にもつかないし大雨だしこれなら多少物音しても大丈夫そうだ。




「それで話ってなんだ? もうわかったんだろ俺が西澤だってこと」

「そうだな、もう俺も疑わないよ。 お前は要だ」

「よく広瀬にバラさなかったな」

「バラしてどうなる? そんなのすぐに信じるはずがないし仮に信じたとしてもそんなことより俺はお前に一刻も早くやりたいことがあった」




そう言った瞬間清春は俺を殴った。 




「お前を完膚なきまで叩きのめす、そんでもって五木に謝ってもらうからな」

「何勝った気してるんだ? 今のは五木のことを頼んだから1発殴られてやっただけだ」

「お前と喧嘩なんて初めてだよな、前も滅多に喧嘩なんてしなかったしそうなりそうになるといつもお前が引いてこうはならなかった」

「そうだろうな、自分の周囲には出来るだけ波風立てないように気を遣ってたからな。 けどもう終わりだそれも。 今はお前を返り討ちにしてやりたくてたまらない」




それにやらなくてもわかってた、清春如きが俺に勝てるわけない。




「とことんクズだなお前はッ!!」




清春は俺に更に殴り掛かるがなんてことなく俺は躱す。 田沼の身体だけど感覚は俺だ、俺の感覚について行けるくらいには田沼の身体も鍛えた。 そうなれば清春なんかに負けるはずがない。




「ぐがッ!」

「どうしたんだよ、1発貰っただけで俺に立ち向かう気力がなくなったのか?」




躱し様に打ったパンチが綺麗にみぞおちに入ったようで清春の体がくの字に折れた。




「ぐ…… お、俺はお前が」

「なんだ、まだ喋れるのか。 なっちゃいないな、身体は田沼でもセンスは俺だ」




清春の背中に肘を落とすとそのまま地面に倒れた。




「そんなんでどうやって俺を叩きのめすんだ?」

「なんでだ?」

「あ?」

「五木は昔お前のことヒーローみたいって言ってた、俺も強くてかっこよくて何にも動じないお前をそう思ったこともあった、なのになんでここまで……」




こいつらは…… 人にどんな理想描いてんだ? 俺にとってはお前らが勝手に思ってることと俺が思ってることが違っただけだ、ただそれだけ。




「悪いな、とことんお前らとはそりが合わないみたいだ」

「そうかよ!!」




俺の脚にしがみ付いた清春はそのまま俺の体勢を崩した、そして倒れ様に俺にパンチする。




馬乗りになり清春はこの時ばかりと拳を振り落とし俺も何発か喰らうが一瞬の隙を突いて手のひらを清春の顎先に向けて掠るように振り抜いた。




「なッ……」




多分軽い脳震盪を起こしたんだろう、力なく清春は俺に重なるように崩れ落ちる。




「おい、意識はあるか?」

「クソ野郎……」

「ちゃんと聴こえてるな。 清春のくせに俺に掛かってくるなんて10年早いんだよ、俺はお前らを裏切ったのかもしれないけどお前らが俺のことをわからなかっただけだ、わかったならもう俺に関わるな」

「だったら…… なんで五木を助けたり…… 俺にもずっと付き合ってたんだ? お前は本当はクズなのかもしれないけど優しいところだってあったのに! 俺や五木に本当のこと言ったら失望されるとでも思ってたのか? 見放される前に見放そうとでも思ったのか?!」




俺が立ち上がると待てと言わんばかりに脚を掴んだ。




「さっきだってそうだ、なんでわざわざ俺に五木のところに行くように促した? どうでもいいならあのまま五木を放っておけば良かったろ!」

「そうだな、だからこうなったのかもな」

「違うな! お前怖かったんだろ? あの後五木がどうなるかって。 それで俺に頼んだ。 なあ、五木がバカな真似するのがちょっとでも早かったらお前どうするつもりだった? 遅かったらどうするつもりだった!? この臆病者!!」




ああ、くそ、こいつよく喋りやがる。 気絶させとくべきだったわ。 




「待てよ、逃げるのかよ!?」

「バカ、どう見ても俺の勝ちだ」

「違う! そうやって田沼の身体に隠れてずっと逃げるのか?! 自分の人生投げ出して楽な方に逃げるのか!」

「……」




楽な方に逃げて何が悪い?




もう潮時だと思い清春を置いていく。 清春は脳震盪起こしたくらいだ、どっちかって言うと俺の方が殴られてる大丈夫だろう。




「田沼ッ!!」

「広瀬… お前」




あんなに突き放したはずの広瀬がここに来ていた。




どいつもこいつも。


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