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その26


「ちょッ?! 遅刻はまぁいいけどずぶ濡れじゃん!」

「ああ、ちょっとあってな」




結局学校に戻り待っていた、もうひとりぶっ潰さないといけない奴を。




「まだか」

「何が? 暇があれば外眺めてどうしたの?」

「広瀬、お前友達付き合い考え直した方がいいぞ」

「へ?」




俺は大雨が降る外を見て憂鬱な気分になった。









◇◇◇









「五木…… どうしたんだよ?!」

「加藤……? あたしッ」




要も来てない、五木も来てない。 どうしたんだ? 五木が田沼をつれてどこか行ったってのは聞いた。




田沼だけ戻ってきた? ずぶ濡れで??




「おい田沼、五木はどうしたんだ?」

「ああ、五木なら……」




「五木に会ったら聞くといい」…… 五木のことを聞いた俺は田沼に教えられた場所へ向かう、まだ移動してなければそこに居ると。 雨もかなり強くなったしもう帰っちまったかもしれない、そう思っても俺は向かった。




だが五木は居た。 コンビニの裏手、壁になっていて外から見えなかったけどまだここに居た。




「五木お前…」




傘も刺さずに雨に打たれてその場にへたり込んでいた、いつからそうしていたのだろう? 




「西澤に嫌われちゃった、ふふ、あはは……」

「五木しっかりしろよ! 何があったんだよ?!」

「……」

「五木に会ったら聞くといいって田沼も言ってた、教えてくれ五木…」

「田沼… が?」




それを聞くと五木は事の顛末を話してくれた。




「田沼が要?! そんな嘘みたいなこと…」

「嘘じゃない、今の田沼は西澤だよ」

「今までの要は田沼で… クソッ! 俺はあいつの幼馴染だってのに。 あいつもあいつだ、なんで相談のひとつもしてくれなかったんだよ」

「西澤は戻りたくないの」

「はあ?!」

「西澤は何もかも嫌になってた、あたしやあんたのことも。 田沼の方が楽なんだって」




いまだに信じられないが五木がそう言い田沼のあの意味ありげな態度を見れば本当にそうなのかもしれない。 だけど、ふざけたことを… 逃げてるだけじゃねぇか!!




「あたしはダメだった、もし西澤が苦しんでたんならあたしが助けてあげたかった、あたしにも分けて欲しかった」

「違う五木、あいつは結局俺達のこと」

「違くない! わかんないよ加藤には! 大好きな人に面と向かって要らないものを見るような目で嫌いって言われたことある?! あたしは西澤に負担しか掛けてなかったって。 気付かないでバカみたいに」




チラッと五木の袖に要からプレゼントされたウサギのピンが見えた。



「そんなの捨てちまえよ」

「イヤだ」

「あんな奴のことまだ好きなのか?」

「好きとか…… それだけじゃない」




五木はむくっと立ち上がり鞄の中からカッターを取り出した。




「お、お前、それどうするつもりだ?」




近付こうとするとカッターの刃を向けられ五木がフッと笑った。




「ありがとね、あたしは中学から西澤と加藤とよくつるんでたけど何も知らなかったあたしは3人で居て凄く楽しかった。 あんたもいろいろと助けてくれたよね、嬉しかったよ」

「おい?」




五木の首にカッターの刃が食い込む瞬間俺は五木からカッターを奪って遠くに投げた。 刃の方を触ってしまったので手のひらと指を切ったけど五木が首を切るよりは全然マシだ。




「バカ野郎!! お前そんなんで本当にいいのか?! それくらい出来るなら大したもんだよ、死ぬ気があるなら死ぬ気で西澤と向かい合えよ!」

「ううッ、うああ…… うわぁああああんッ」




五木はその場で大泣きした。 それはいじめられて苦しんでた時に要に助けられて「よく頑張ったな、辛かったろ」と頭を撫でられた時と同じようだった。 




この結果を見ればあの時要は心では何も思ってなかったのかもしれない、どうでもいいとも思ってたかもしれないけど五木は心底救われたんだと思う。




なのに…… その本人が五木に引導を渡して死にたくなるほど追い込んだ。




あの野郎ッ!!!





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