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その24


「んん〜ッ……」

「どうしたんあかり? 鏡なんか眺めて」

「いや、なんていうか…… あたし髪もうすこし伸ばした方がいいかなぁ?」

「なんで? そのショートボブ可愛いじゃん」

「女の可愛いは当てにならんッ」

「あんたも女でしょ」




田沼に言われたことは意外とあたしに堪えていた。 いや別に絶望的に好みが合わないからあたしの誠意が伝わらないのかなと一瞬考えたけど田沼は別にそんなことどうでもよさそうだもんね!




「あたしってやっぱ言われるほど可愛くない?」

「それ嫌味じゃん、顔は良いしスタイルも抜群だし人当たりは良いし後は何がいるわけ?」

「だってさ、あたしってそう言われ出したの最近だししっくりこないんだよなぁ」

「あー、確かにあんた昔は野生児みたいだったもんね、よく男子に混じって遊んでたし」

「でしょ〜、なんか手のひら返しみたいに可愛い言われてもなんだかなぁって感じだし」

「というより何故にそんな話題? え?! もしかして」

「そんなんじゃないって、ブスに言われるより可愛い子に言われる方が何かと説得力あるのかな? ってこと」

「ブスってあかり?」

「そう」

「どこのどいつだそんなこと言うバカは?!」




隣に居るんだけどねー、拗れるから言わないけど。




おっと、田沼戻ってきた。 




「田沼おかえり!」




あ、またスルー。 声量高く言うと田沼はスルー。 ふふッ、うちの近所のイヤイヤ期の子供みたい。




「バーブゥー」

「おちょくってんのか?」

「あ、やっば、つい口に出ちゃった」




田沼を観察してるのは最初から結構楽しかった、様変わりしていく様子を近くで見ていた。




こういう現象について調べてみるとまさかの……




「中二病……」




遅めの高校デビューでデビューしても周りは戸惑うだけ、そして逆に触れ難くなる。 やっちゃいましたぁ的なノリが出来るならそこから昇華出来るけど田沼のキャラじゃ無理。 え? え?!




ぷぷぷッ、可愛い。 ほら、女子の可愛いなんて当てになんない。 可愛げがないのが可愛いとこでもあるんだけど。









◇◇◇









「なんだその薄気味悪い顔は?」

「え? そんな顔してた?」




変だ、やっぱり俺はこいつの何かを焚き付けてしまったみたいだ。




「薄気味悪くて結構、不細工で結構、不快で結構生まれつきそんな顔だからさー!」

「いや何もそこまで…… 言ったっけ?」

「いやいや! 言ったでしょーが。 ふふ、見た目が宜しくもない女に絡まれてさぞ迷惑だよねぇ?!」

「ガッツリ引き摺ってんなそれ」

「年頃になってそれ言われるとこんなに堪えると思わなかっただけだし!」

「なんだよ、昔はよく言われてたのか?」

「まぁねぇ、猿とかゴリラとかそこまで酷いか?! って今思い出すと軽くその頃の男子捻り潰したくなるわぁー」

「おいゴリラ女、そんなこと言うもんじゃないぞ」

「あはー、辛辣」




広瀬との話はよく弾む、こいつが元から喋りまくる奴だったってのもあったけど良い部分も嫌な部分もこいつは大して顔色変えずに受け流すから。 




「ところでなんでお前は俺の弁当の邪魔してんだ?」

「邪魔じゃなくて一緒に食べてるだけだけど?」

「柳原は?」

「千華のとこ行ってるよー」

「よく柳原が承諾したな?」

「友達だからねぇ。 だからさ、あとでみんなで食べてみない?」

「お前友達認定してる奴女子しかいなくね? バカじゃねそんなとこに田沼呼ぶなんて場違いも良いとこだ」

「だったら田沼も…… あー、あれだね! だからあたしでちょうどいいね」

「男友達居ないだろって言いたいんだろ」








◇◇◇







「ねぇ、サボるのはいいんだけどカラオケなんて滅多に行かないのになんで?」

「いいんだ、どうせ俺は……」

「西澤…… 悩みがあるなら何でも言って! あたし西澤ならどんな悩みだって」

「俺が西澤じゃないって言ったらどうするんだ?」

「…… え?!」


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