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その13


「あ! 遅いよ田沼ぁ〜、30分以上待たせるなんてどういうこと? それに携帯持ってないなんて不便だし」

「行くかどうか迷った面倒だし、でも確かに断るにも携帯あった方が言いやすいしな」

「何断る前提で来ましたみたいになってんだよ感じ悪いなぁ、しかも面倒って。 まぁ田沼だしそこら辺はなんとなく察しはつくけど」




せっかく休みの日なのになんで広瀬なんかと会わなきゃいけないんだ。




なんでもこの前の先輩の事のお礼をしたいみたいだ。 「あー、そういうのパス」と言って断ったつもりだったんだけど広瀬は待ち合わせ場所と時間だけ言って逃げるように帰って行った。 多分そうすれば断れないと思って俺が行くと思ってたんだろう(実際来ちゃったけど)




広瀬が俺をジーッと見る。




「…… 闇に染まりし者なの?」

「あ? これか、まぁ田沼はこういうのしか持ってなかったし買う金もなかったからな」

「田沼はあんたでしょ! またしょーもないこと言っちゃって。 まぁ別にそこまで気にしないからいーよッ!」




黒いTシャツに黒パンツ、これでも一番マシなの選んだんだけどやっぱりな。 黒一色って如何にもオタクっぽいしやるにしてもセンス問われるからなぁ、けど田沼はやっぱりって感じだがろくなのがなかった。




「ちなみにあたしはどーよ!?」




ドヤ顔で自分への感想を訊く広瀬… 白いブラウスにチノパンの簡素なコーデだけど女の子っぽいと思った。 




「それが着たかったんならいいんじゃない?」

「そう? ってなんつー言い方よ。 あたしじゃなかったら超怒られてっからね?!」



そりゃまぁ、どこまで言ったら怒るかなとこっちは試してるし。



素っ気ない俺の態度に広瀬はグイと覗き込むように俺の目を見てくる。




「なんだよ?」

「田沼、この前は無理なお願い聞いてくれてありがとね」

「今更か」

「百合が居るとお礼なんかいいからとかうるさいからさぁ〜」

「じゃあうるさくされるネタを増やしたな」

「あはは、秘密にしてるから大丈夫」




昼が近いからとどこかで昼食となった。 「そこのファミレスでいい?」と訊いてきたが別にどこだっていい。




「じゃあ好きなもの頼んで、あたしが奢っちゃうから」

「はいはい」




そういえば誰かとファミレスなんて久しぶりだな、最後に行ったのいつだっけ? あー、西澤時代の友達の清春と行ったのが最後か。 あいつは西澤(田沼)の方とは仲良くやってるんだろうか? などとどうでもいいことを考えていると料理がやってきたので食べる。




「ん?」




向かい合った広瀬がまたもジーッと見てくる。




「お前も食べれば? 人のことジロジロ見てんなよ」

「田沼って本当に変わったなって思って」

「そうか?」

「憶えてる? 最初の頃なんてあたしが目を合わせてもサッとすぐそらされたし話し掛けるなってオーラが凄かったんだから」

「そうだったっけ?」




多分それは入れ替わる前のことだな、田沼らしいといえばそうだけど俺ってこうして田沼として生活してるけどあいつのことほとんど知らないんだよなぁ。




「ねえ田沼、あたしと友達になろっか?」

「え? ならない」

「酷ッ!! 慣れたからそこまでじゃないけどそこは普通に「うん」って快く了承してくれてもいい場面でしょーに」

「お前と友達になったらまた厄介な頼み事されそうだからな」

「あれは極々稀だから、近くに居たからって田沼にお願いしたのは悪いと思ってるって、ごめんね」

「要するに誰でも良かったってのが更にタチが悪いな」

「もう! そういう捻くれ者なところはやっぱり田沼だよねぇ」

「それにしてもお前よく食うな」

「今日は田沼へのお礼だからチートデイにした」




そうして奢られてやったのでもうお礼は済んだだろうと思いファミレスを出て帰ろうとすると広瀬に腕を掴まれた。




「どこ行く気?」

「帰るんじゃないの?」

「どんだけ帰りたいの? あたし的にはまだもっと遊ぶつもりだったんだけど」

「俺的には来たくもなかったけど」

「あたしじゃなきゃそれ言われたらショック受けてるからね多分。 うーん、じゃあ田沼の好きそうなとこ行こう」




俺の好きそうなとこ? それってどこだ? と自分で考えてしまう。 そして連れてこられたところが公園だった。




けれどその公園にはバスケゴールがあり広瀬を見ると不敵な笑みをされる。




「にひひ、あたしと勝負してもらおうか」

「なんで?」

「田沼ってさ、体動かすこと好きなのかなって思って。 この前体育館に来てた時も羨ましそうに見てたしさ、だったらなんでパソコン部に入ってたのか謎なんだけどさ」

「俺ってパソコン部だったのか、なんでお前知ってんの?」

「あんた何部か聞いたからに決まってんでしょ。 行ってなかったからってのもあったんだろうけどもうボケ始まってるの?」




ボールをカゴから取り出した広瀬はボールを弾ませ俺に近寄る。 




「あたしからボールが取れるかな?」




これは完全におちょくられてるな。 なら古典的な手だが……




広瀬の顔の前で手を勢いよくパンと叩く。 そんなことするとは思ってなかった広瀬は「わッ」と驚いていたうちに俺はボールをひったくった。




「ず、ずるッ!! 思えば先輩の時もそっこーかましてたり最後は遠投したり、とにかくずるい!」

「こんな間抜けな手に引っかかる方が悪いんだ、勝負と言うからには自分の出せる手段は全部出すし何をしても卑怯なんてないね。 引っかかる相手が悪い」

「そこまで?! 田沼の勝負観ガチ過ぎて怖い…… な!」

「おっと」




後ろを向いて俺の気を抜かせたかったのかいきなり振り向いてボールを掻っ攫おうとしたみたいだけどそんなの見え見えだったので俺はすぐに躱した。




「くぅ〜ッ!! 悔しいッ!!!」




最初は俺に惑わされていてバスケ部でも広瀬はあの先輩ほどじゃないみたいだったが今の俺とはなかなかいい勝負をした。




「あー、疲れた。 動きやすい服装にしてきて良かった」

「もうこんな時間か、随分遊んでたんだな」

「楽しかった?」

「え?」

「あっという間だったでしょ? 楽しかった?」




しつこいなこいつは。 楽しかったと言わなきゃ言い方変えてずっと訊いてきそうだ。




「楽しかった」

「あはッ、そっかそっか! それが聞けてあたしも満足」

「そうかよ」




帰り際……




「また遊ぼうね」

「いや、いい」

「言うと思った、けど誘うからね!」




強引な奴だな。


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