表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/48

その11


こいつ…… どういうつもりだ? 偽装彼氏を選ぶにしても凡夫以下の田沼じゃダメだろ、人選もっと考えろよ。




「あかり頭大丈夫?」

「ちょっと、先入観にとらわれないでよ。 ちょっと前の田沼ならあれだけど今の田沼見なよ」




そう言うと柳原は俺を値踏みするように睨む。




「陰キャっぽい髪型もしなくなった、顔付きも前より良くなった、それになんかこう身体付きも男っぽくなった、果たして最初見た田沼がこれだったら百合はどんな印象を持つ?」

「あ、うーん… はッ!! あかり、あんた良くなったって言わせようとしてる? やめてよ、あのキモい田沼はちょっとマシになったからって拭い去れるものじゃない」

「でも今それならまぁ的な顔してたのに惜しい!」

「マシになったのは認めるけどさ、陰キャな性格はどうしても直らないよ、現に泥沼みたいにこいつの性格クソでしょ、そんな田沼に彼氏っぽいこと出来ると思う?」

「甘いなぁ百合は。 別に彼氏じゃないしあたしが気になる人っていう設定なら田沼が変にぎこちなくても納得するでしょ?」




おいおい、2人だけで話が勝手に進んでるよ。 あ、性格がクソなのは概ね合ってると思うぞ。




「いや甘いのはあんただって。 先輩の前に田沼なんか連れてってみなよ、あんたが田沼を気になってるって設定みんなに広まるけど?」

「まぁそうなるよね、でもそれならそう思わせときゃいいじゃん」

「はあ?! い、いいの? 田沼だよ?」

「だってちょっかい出されるの面倒だしそれなら田沼が気になるんだって思わせておけば余計なことにならないよね?」




俺を利用して告白をされないようにしようとする魂胆を惜しげもなく俺の前で展開させる広瀬だが果たして田沼でストッパーになるだろうか?




「田沼がありなら俺でもいけるかもなんてことにならない?」

「あ、そういう見方もあるのか。 うーん…… それは置いといて今の田沼を先入観なしで見なって」

「また余計なこと言わせようとしてるでしょ!」

「あはは、なんだ百合も案外、いたッ!!」




柳原が広瀬にゲンコツをした。




「あんたの選択肢に田沼が居たことが驚き」

「あくまで気になる人って設定だからね、それとこれとは違う」



けれどここまでの話柳原の方に一理あるな。



「黙って聞いてれば人の許可なしに随分言ってくれるよな」

「いやいやいや、意義でもあるの? あかりから嘘でも気になってる人っていう認定受けたんだよ、田沼のくせにだよ? だったらありがたく地面に額擦り付けてよろしくお願いしますだよね?!」




おい、さっきは広瀬の言うことに意を唱えてたくせに俺のターンになったと思ったら手のひら返しかよ。 柳原も性格大分悪いぞ。




広瀬が誰にでも気さくで容姿も良くて人気なのは認めるが俺はそんな下らない色恋沙汰に巻き込まれるなんて真っ平ごめんなんだが。




「田沼お願い! なんだったらあたしが地面に額擦り付けて頼むからどうか引き受けて!!」




柳原の声が大きいからここに居るクラスのみんなは大体事情を把握して柳原と同じような感想を匂わせてる中、広瀬がどうしてもと言う感じに俺にお願いされる俺にはこれを断ると更に面倒なことになりそうなので仕方なく……




「はあ、わかった。 けど後で後悔するなよ」



まぁこいつが額擦り付けて田沼な俺に頼み込む姿を見てみたくもない気もしないが。




「え? あ、うん! 田沼ありがとう、お礼に後でなんか奢ったげるね」

「田沼が調子に乗るからそれはやめときなよあかり」




どっちにしても面倒だ、西澤の時はこんなことスルーしていただろうな。




「ところでそんなイヤそうにしてるってことはあたしって田沼の好みにかすりもしない感じ?」

「まあな」

「こ、このッ…… あかりこいつシメとこうよ」

「あはッ、よしなって。 なかなか言うねぇ田沼って」







◇◇◇







「というわけであたしには気になってる人が居るんです」

「あかりに気になる人? そういうの興味なさそうに見えたけど」

「でも本当に居るんです」




俺と柳原は昼時の静かな体育館でその様子を見守っていた。




ほうら、経緯を聞いた限りでは恋愛なんて興味ない奴が慌てて告白を断るために咄嗟に浮かんだ気になる人がいるって設定を用意したのがもうバレかけてないか?




「田沼、あんたこれに乗じてあかりの気になる設定を飛び越えて彼氏ヅラしたらぶっ殺すわよ」

「そんなことまずない、俺だって広瀬に興味ないしこんな茶番今すぐ放り投げてどっか行きたい」

「はあ?! あんた自分が底辺だって」

「バカ、静かにしろよ、お前がこの状況を台無しにする気か?」




言うと柳原は黙った。 はぁ、心配だからついてくと言ってたが別に気になる人が居るって伝えるんなら俺と柳原はいらなかったな。




「あかりが気になる人ってそんなに素敵な人なのかい?」

「え? あ、はい……」

「そういうのに興味がないって言うあかりが気になるくらいだもんな」

「う…… うん」




うわぁー、もうバレてないかこれ? 気になる人のハードルがどんどん上がってくわ。




「田沼が素敵な人〜? んなことあるわけないし!」

「だから静かにしてろって」




でもバレてるならそれはそれでそこまでして先輩との関係は望んでないって示しにもなるよな、もしかしたら意外と悪くないのかとも思ったがこの流れで出て来そうなパターンは……




「なら俺もあかりが気になる人と会ってみたいな」

「へ?! 会うんですか?」

「一目見たら納得して諦められるかもしれないし」




ああ、やっぱこのパターンか。 




「この場のどこかで見てるんだよね多分」

「あッ、あ…… すみません先輩」




勘の鋭い先輩は俺達が盗み見しているのも想定内だったようだ、それにもう広瀬がそれを認めてるし。




「うわ最悪、田沼見たら引き下がるわけないじゃん!」

「もうどうしようもないな、俺が出てけば終わるしちゃっちゃと用を済ましてくるか」




隠れていたカーテンから出て広瀬の隣に立った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ