願7
「もーっ、最低!
『ピーッ』を隠してた手で、頭撫でてくるとか……!!」
皐月は街を歩きながらマジ切れしていた。
そりゃそうだ。
俺も迂闊だった。
「だいたい、女の子の髪の毛勝手に触ってくるとか、マジ無神経……」
言われつつ、半分聞き流していた。
「なあ、皐月」
「なによ」
「クレープ、何味がいい?」
「え? ストロベリープリン味……」
「じゃあ待ってな」
目の前にあるクレープ屋へ走る。
昔から、明日架もクレープの名前を出すと、機嫌が治っていた。
「ほらよ」
クレープを手渡す。
「……ありがとう」
もふもふと食べ始める。
一瞬また頭を撫でそうになるが我慢。
「……実はね、うちシングルファーザーだったんだけど、最近、父さんもいなくなって。
親戚の家に、引き取られたんだけど、実は家出中なの」
「そうか」
「それで、学校のみんなにいじめられるようになって、
図書館でお兄さんの短冊にイタズラするように、言われて……ごめんね」
「別に気にしとらんさ」
「お兄さんは、何で神になりたいの?」
「アダムとイヴを作るため……かな」
「アダムとイヴ……」
「ひとりじゃ寂しいってことだ」
そう、俺も天涯孤独の身の上なのだ。
「じゃあ、私とアダムイヴ作る?」
「……なに馬鹿言ってる。
だいたいお前は、リンゴ食って羞恥心が芽生えたイヴのほうがお似合いだ」
ぶうと頬を膨らませる皐月。
……こんな時間もいいものだな。