表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/51

第七話 追放・ざまぁ・今さらもう遅い  4

「海へ……」

 ライリスはぼそっと呟いた。

「大海に沈められないかと考えました……」

「もしかして……クラーケンか?」

「さすが魔法庁局長ですね。わたしとおなじ考えだ」

「ああ、あのイカのバケモノは、倒すための有効な魔法もなければ、魔力に守られた表皮は剣や矢でも貫くのがむずかしい。一度あの触手に絡まれて、水底へ引きずりこまれたら、逃れる術はない——」

「ふつうはそうです。ですがデザストはすでに魚人を取り込んでいた。海底を引きずり回されながらも、機会をうかがって、とうとうクラーケンを喰った……」


 まだ変化していなかった残りふたつの頭のひとつが、変貌をとげていた。

 それはクラーケンの脚が顔中に貼り付いたような顔だった。

 顔中が吸盤のついた触手におおわれ、ぐにゅぐにゅと(うごめ)いている。目や耳などは退化してなくなり、わずかに白濁した窪みがその名残として見てとれるだけだ。顔を這い回る触手の真ん中には、縦に大きく開いた口。顎から額までが裂けるように、ゆっくりと開いていくと、いびつに生えた歯が見えてくる。

 彼は咽喉の奥にまで何列にも並ぶ、鋭く尖った歯をむきだしにして威嚇してきた。




「大賢者モースが申し出たのです」

 ライリスが両手で目をおおいながら言った。くちびるがふるえて、いまにも泣きだしそうに見える。

「追放に賛成した自分がけじめをつける、と……」


「大賢者モースが? この世界でも十指にはいる術の使い手だぞ。おまえのパーティーにいたのか?」

「はい。わたしの才を気に入っていただき、過分にもパーティーに加わっていただきました」

「モースがいながら、なぜここまでデザストをとめられなかったのだ?」

「モースの魔法をヤツが喰らったからです。どの魔法を使っても、同等の魔法で跳ね返されたんです」

「あのモースの秘中の魔法まで、複製したというのか」

「自分と戦っているようなもので、どうやっても攻略ができなかったのです」


「彼は…… モースは砂漠を選びました」

「サ、サンドワームだな」

 ライリスは弱々しく首を縦にふった。

「わたしはモースに激しく抗議しました。だが、聞き入れてもらえなかった」


「土の神と崇められているサンドワームの力を借りるのだから、自分の命を捧げなければならないと……」


 体長100メルトはある大きなイモムシのような怪物サンドワーム。口のまわりには針のような歯が無数に並んでいて、この大地に足を踏み入れる者を、だれかれ構わず飲み込み、かみ砕く。 

 モースは魔法の力で自分とデザストを結束したまま、そのままサンドワームの口に飛び込んだ。ふたりはその鋭い歯でからだを貫かれ、引き裂かれ、ぐちゃぐちゃに潰された。


 それでもデザストは死ななかった——


 四つの頭のうち、変化していない最後の頭が変貌した。

 それは若かりし頃のデザストの顔だった。

 出会った頃を思いださせる、すっと引き締まったデザストの顔——


 次の瞬間、ぶしゅっとなにかがはじける音がして、その顔のまんなかにおおきな穴があいた。その穴から、ぬるりとしたイモムシのような生物が顔をのぞかせる。その顔の部分には針のような歯が無数に並んでいた。

 まるでサンドワームの幼生のような生物だった。

 顔の裂け目のなかを、うねうねとワームが(うごめ)いているのがみえる。と、そのワームのからだをつきやぶって、別のワームの頭がつきだした。そしてその個体をつきやぶってさらに別のワームがでてくる。

 ワームが別のワームのからだを食い破ってでてくるたび、ぶしゅ、ぶしゅっと不快な音がして体液がしたたる。

 

「タクラモン砂漠での、モースの命懸けの賭けも実りませんでした」

「タクラモン…… ハメン王国とルードロン公国に隣接する砂漠ではないか!」

「ええ、わたしはそのふたつの国に逃げ込みました。ですが、パーティーの最後の生き残りであるわたしを、デザストは許さなかったのです」 

「そ、そんなバカな…… で、では、あの二国が全滅したのは、デザストのせいだと?」

「最大限の努力ははらいましたが……」


「嘘をつくでない!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ