第3話「怖い。怖い。怖い怖い怖い!」
学校について、僕は自分の席に座り勉強道具を広げる。もうすぐ定期考査が近いからだ。周りを見ると、すでに各々の席に座り黙々と勉強に取り組んでいる姿がちらほら。
だが、これで全員ではない。まだ来ていない生徒も何名かいるようだった。
周りのことを気にせず、僕は勉強に集中して取り組んでいく。
しばらくすると、教室のドアが開く音がした。朝早くで集中しきれない僕は、音の方向を向いた。
夢さんが教室へ入ってきたところだった。
夢さんは僕の列の最前線のため、僕の横を通り過ぎていく。
今日の夢のことを思い出し、思い切って僕は、挨拶をすることにする。
「ゆ、夢さん、おはよう」
「……? おはよう」
夢さんは少しばかり怪訝そうな顔をしたものの、すぐに教室に入ってきたとき同様、真顔で挨拶を返された。
夢で会話をしたときとはえらい違いだ。
まさか、夢の内容を覚えていない……?そんなはずがあるか?他でもない夢さんが「私との会話や、あなたが見たものは『現実』として夢から覚めても残り続ける」って言っていたんだぞ?
もしや……あれが全部夢で、そんな夢なんかなくて、ただただ僕の気持ちの悪い妄想?
いろいろな想像が頭の中に浮かんでは消えていく。
様々な可能性が頭をよぎる中、僕の中の不安感は増していく。
僕はあのとき、何を見て何を感じていたんだ?
あのとき会話したあの女の子は、夢さんじゃなかったら何なのか?
この記憶はなんだ?夢のように消えることはなく、本当に現実の出来事であったかのように、頭の中にあり続けようとしている。
怖い。
呼吸が荒くなってくる。怖い。怖い。怖い怖い怖い!
机の上で頭を抱えていた僕は、ショートホームルームの予鈴によって、ハッと現実に引き戻される。
これは結構重症な気がする……。現実に引き戻された今でも、気を抜けば軽く恐怖に飲み込まれそうだ。
このまま授業を受ける気にもなれなかった僕はショートホームルームが終わったあと先生に「気分が悪い」と伝え、保健室へと向かった。
向かっている間も、謎の焦燥感に襲われ、歩いているにも関わらず呼吸は乱れ、気を失いそうになったが、なんとか保健室へとたどり着いた。
「先生、ちょっと体調が悪くて……ベッド使わせてもらってもいいですか?」
「いいわよー……って、キミ、大丈夫!?とても呼吸が荒いみたいだけど」
保健室のドアを開けた僕のことを認識した先生は、僕の様子を見て驚いたようにそう言った。
「一応、大丈夫です。ベッド借りますね」
いうが早いか、僕はそそくさと保健室のベッドに寝転がる。
まぶたを閉じ、未だにいつもより早く鼓動を刻む心臓を無視し眠りにつこうとする。
目的は唯一つ。もう一度、「夢の女の子」に会うためだ。
根拠はなにもないものの、彼女に会えるという謎の確信だけはあった。
まぶたを閉じていると、次第に僕の意識は夢の中へと引きずり込まれていった。