―クロイツェル城下町・ワンダラー―
クロイツェル王国 城下町
「やっとクロイツェルの城下町に着いたな」
あれから数日かけて山を下り、麓の町チューバを経由して城下町へとたどり着いた。
町と言っても規模はかなり小さかった。
小国なので仕方ないのだろう。
「城下町はかなり栄えてるんだな」
「国の中枢っていう感じだね。チューバの町が閑散としていたからちょっと心配だったけど、商人ぽい馬車も結構通ってるし魔術書以外の本もかなり集まってるみたいだね」
ダリアとメリッサが話している。
城下町に入り、惣一郎班とスミレ班に分かれ、スミレの念話で連絡を取りながらアンダンテの本を探し
惣一郎班はルーナとセレーナ。
スミレ班はメリッサとダリア。
「本が多すぎて探すのが大変だ」
ダリアが本の多さに驚き唖然としている。
「数日かけて探す予定だから気長にやれば良い。我が目当ての本を見つけたら教える」
「歴史書とか古い本だと保存状態が心配ですね」
「魔導士が書いた古書の類には保存状態を保つ為の魔法がかけられている物が多い。意図的に燃やしたりしなければ数千年は持つ」
「す、数千年・・・凄いですね。今の本でそんな事出来る魔導士の方はいらっしゃるんでしょうか?」
メリッサが驚く。
「長老クラスのエルダーエルフなら出来るだろうな」
「姉さん、エルダーエルフってどの位生きてるんですかね?」
「2000年以上は生きておるだろうな」
「二千!? エルダーエルフ・・・なんかもう凄すぎて想像がつかない・・・」
「亜人ほど種類は多くないがエルフも色々おるからな。だがそこまで長く生きれるエルフもそう多くはない」
「なるほど。緑の国のエルフ族か・・・少し楽しみになって来ました」
何かがダリアの琴線に触れたのか、彼女はワクワクした表情になる。
「そこのおねーさん達! 本をお探しかい!?」
3人が露天の本を見ながら歩いていると一人の男が声をかけてきた。
声の方を振り向くと小柄でメガネをかけた線の細い男が手もみしながら近寄ってきた。
「おねーさんたち冒険者の方でしょう? そちらの杖を持ったお嬢さんにピッタリのいい魔術書がありますよ! 」
「ほう、どんな本だ?」
スミレが間髪入れずに聞き返す。
「よくぞ聞いてくれました! うちは今は失われた古代魔法を多く取り揃えている本屋なんですよ!」
「失われているのに取り揃えてあるのか?」
「ええ!どうやって手に入れたかは企業秘密ですが、古代魔法はもううち以外じゃ手に入らないと思いますぜ! 良かったら見て行って下さいな!」
男は終始営業スマイルで手もみをしながら話す。
(なんか気持ち悪い笑顔だなコイツ)
(ダリア、失礼だよ。でも古代魔法を取り扱っているなら探してる本もあるかもしれませんね)
「古代魔法以外の古書はあるか?」
スミレが小男に問いかける。
「古書をお探しですか? ええ、ありますよ! ありますとも!うちは古い本を専門に集めていますので、古文書やらなにやらがた~~~~くさん御座います!」
「そうか、なら見に行ってやろう。店は何処だ?」
「さすがお客様! 美人な方々は見る目も確かですね! 恐れ入ります! ささ、ご案内致します! こちらへどうぞ!」
小男は路地へと手を差し出し、時折振り返りつつ3人を店があるという場所へと案内する。
「なあ、こんな奥に店があるのか?」
「ええ、うちは知る人ぞ知る専門店なので、一流のお客様以外はご案内しておりませんから、一般のお客さんは来る事の出来ない場所に店を構えさせて頂いておりますので」
男は歩きつつ軽く振り返りながらダリアへ返答をする。
「ずいぶん面倒な場所に店構えてるんだな。通りに出した方が良いんじゃないか?」
「通りに出すと一見さんばかりになってしまいましてね。へへ。さ、着きました、こちらでございます」
男の手は地下への階段を差している。
「地下に店があるのか」
「ええ、地上は温度の管理が大変なので、地下に店を作って本の状態を維持しているのでございます」
「古い本だと温度管理も大変なんだな」
「ええ、古代魔法と言う位ですからね、古い物が多くて管理が多変なんですよ。ささ、どうぞ中へお進みください」
ダリアを先頭に地下への階段を下りた先の扉を開ける。
「もう少し先へ進んだ所にもう一つ扉がありますので、そちらが店となっております」
「ここか」
男の指示通り扉があったので中へと入る。
「暗いな。何も見えないぞ」
「目が慣れるまでしばらくお待ちくださいませ」
バタン!
勢いよく扉の閉まる音がして後ろを振り返ると部屋に薄明かりが灯る。
「ハーッハッハッハ! ようこそバカなお嬢さんたち!」
「今日の商品は上玉が3人か! でかしたぞ!」
「コイツ等ならたっぷり楽しんでからでも高値で売れるなぁ!」
中は天井が高く広い倉庫のようだが荷物は無く、小汚い恰好をした盗賊のような男たちが20人程でスミレたちを取り囲んでいる。
「はぁ、やっぱりそうか」
「そうみたいですね」
「・・・・」
3人は特に驚く事も無く、平然としている。
「お嬢ちゃん達どうしたぁ? 人さらいは初めてかぁ?怖くておしっこ漏れそうかぁ? あっはっは!」
「いいぜぇ。ここでいっぱい漏らしても構わねぇぞ。オジサンたちが可愛がってやるからよ」
男たちはいやらしい笑い声と言葉を浴びせながらニヤついている。
「俺はこの一番の上玉を貰うから、お前たちはそっちの二人と遊んでやれ」
人さらい集団のボスと思われる男がスミレの前に歩み寄り彼女の肩に触れようとした瞬間、スミレが男達に向かって殺気を放つ。
(!?なんだ・・・体が・・・動かねぇ)
(息が・・・くるしい・・)
(なんだ・・・これ・・・こ、怖ええ・・・)
男たちは恐怖で震える身体を認識しながらも、身動きが取れず呼吸も浅くなり立っているのか地面に倒れているのかさえも分からないような錯覚に陥り、涙を流しながら嗚咽している。
「それで、ここには古文書は無いのか?」
スミレが近くまできた男に問いかける。
(ヒュー・・ヒュー・・)
男は油汗を垂らし、涙を流しながら必死で酸素を吸おうと呼吸しながら首を縦に振った。
「そうか、なら探してこい」
そう言うとスミレは指を慣らし、男たちに何かの魔法をかけた。
「「「ぶはぁ! はぁっ!はぁっ!はぁっ!」」」
動けなかった男たちが一斉に地面へとへたり込み、肩で息をする。
「汚い息を吐くな」
「はいぃぃ! スイマセン!すいません!」
スミレの言葉にただ土下座で平謝りする男たち。
「死にたくなければこの城下町にある古文書や古い文献を探して買ってこい」
「もし逃げたら・・・」
パチン!
スミレが指を慣らすと案内役の男がうめき声をあげる。
「うぐぐぐぐ!」
男の肌が見る見るうちにどす黒い紫へと変化し、口から泡を吹き始める。
「「「ヒィ!」」」
近くに居た男たちが案内役の男の様子を見て慌てて離れる。
パチン!
スミレはもう一度指を慣らすと男の肌色が元に戻るが男は意識を失ってその場に倒れ込んだ。
「死にたくなければ早く行け」
「「「「はいぃぃぃぃ! 行ってまいります!!!」」」」
人さらい達は慌てて転んだり躓きながら、我先にと外を目指して扉を潜り抜けて行った。
「姉さん、これを狙ってたんですね」
「スミレ様、流石です」
「さて、我らはここで少し休むとするか」
そう言ってスミレはキューブから椅子とテーブル、お茶などを出し3人でくつろぎ始めた。
その頃、惣一郎達は城下町で不思議な少女(?)と出会っていた。
「ねえお兄さんって ワンダラーっしょ?」
「「ワンダラー?」」
「ワン?」
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
9月も出来るだけ頑張って投稿したいと思います。
読みに来て頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!
少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。
これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。
読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると嬉しいです。
栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)
更新時間は通常、朝8時に致します。
9月も頑張ります!
宜しくお願いします!




