―水源調査―
「この辺りが水源地で洞窟があるはず。
水源は山の洞窟の中で干上がった川をたどっていけば簡単に着くって言ってたな」
フルト村の村長に話を聞いた所、川の水が少なくなり始めたのは一週間くらい前との事。
4日前に完全に水が無くなりその翌日に村の自警団5人を水源の調査に出したが一人も戻ってこないという。
「日数を逆算するとタイミング的にはファフニールが現れた頃と大体一致するんだよな」
「イーストロックの魔物がここまで逃げてきて洞窟内に住み着いたという事でしょうか?」
メリッサが問う。
「あの山の洞窟内にいる魔物が中に居たらそう言う事だろうな」
スミレが答える。
彼女の影響でそうなってしまったのであれば問題を解決しなければいけない。
ファフニールであるスミレはすでに仲間だからな。
「洞窟です!」
「ワン!」
「中に入って調べるか」
「中にいるのがあの山の魔物なら自警団達は・・・」
先頭のダリアが呟く。
「ああ、恐らく助かってはいないだろう」
ダリアの後ろを歩く惣一郎が答える。
「ところで洞窟の魔物はどんなのが居るんですか?」
「えっと、マッドスライムとケイブタートル、タートルに寄生しているキノコとスパイダークラブ、ビッグテイルリザードかしら」
「名前は強そうじゃないけどイーストロックの魔物だからそれなりに強いのか?」
「どれもそれなりに強いと思うけど、ソウイチロウさんの相手にはならないと思うぜ。あと今ならオレとメリッサでも倒せると思う」
「この先に奴らが待ち構えてるようだがここはダリアとメリッサに任せて良いか?」
「ワン!」
敵を感知しスミレが朗らかな笑顔でみんなに伝える。
「え!?マジかよ」
「ダリア、やりましょう!」
「私も戦います!」
「ワン!」
洞窟を進んだ先の開けた場所を通路から覗く。
中に居るのはケイブタートルが4体とビックテイルリザード3体。
「本当に4人だけで戦うのか?」
「はい!大丈夫です!」
「ワン!」
「まあ見てなって」
「私達も結構頑張れるようになりましたから」
そう言って彼女達は戦闘態勢に入り、俺のホバーライトを合図に中へと飛びこむ準備を整える。
「よし、それじゃ5数えてホバーライトを撃ち込むぞ」
(5)(4)(3)(2)(1)「行け!!」
【ホバーライト】
バシュ!
4人は陣形を組みながら魔物へと突撃した。
「ワォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
まずはルーナのハウリングで敵の動きを鈍らせる。
スミレ曰く、ルーナのハウリングは反響する屋内ではかなり効果が上がるらしく、拡散、収束共に屋内戦闘向きだと言う。
「よっしゃー! トカゲは任せろ!」
ダリアが両手にダガーを握りビックテイルリザードに向かって飛ぶように走る。
ビックテイルリザードは巨大なワニのような魔物でその名の通り巨大で魚の尾ヒレのような形の長い尻尾を持っている。
頭から尻尾の先まで硬く棘のある鱗に覆われていて、動きは素早くないが鞭のように振り回してくる尻尾は、鋼鉄の盾でも一撃で形が変わるほど凄まじい威力を持つ。
「尻尾の動きが遅ければ怖くもなんともないぜ!」
ダリアは敵の正面から突っ込み、鱗の無い鼻に麻痺ダガーを刺し、顎が上がった所を下からもう片方の猛毒ダガーを刺した。
「動きが鈍ってる間に次行くぜ!」
ダリアが2体目のビックテイルリザードに向かう。
セレーナはケイブタートル1体を正面から顔を殴りつけて洞窟の壁まで吹き飛ばしている。
「セレーナさん甲羅は高く売れるので出来るだけ割らないで下さいね!」
「はい!分かりました!」
メリッサとセレーナが声を掛け合う。
「戦いの最中にお金の話って、かなり余裕あるんだな二人共・・・」
「頼もしい限りだな惣一郎」
呆れ顔の惣一郎に笑いながら話しかけるスミレ。
「アイスバインド!」
「ストーンアロー!」
メリッサはダリアとセレーナの攻撃の合間を見ながら敵に土と氷の魔法を撃ち込んでいる。
「2体目終わったぞ! 残り1!」
「こっちもあと1体です!」
「ワン!ワン!」
「お前たち、敵の増援がくるぞ」
ルーナとスミレが同時に敵の移動を感知する。
「これだけ派手に暴れてれば仕方ないよな・・」
「ルーナのハウリングもかなり反響するからのぅ」
ダリアの掛け声やセレーナの打撃による吹き飛ばしで壁に叩きつけられる敵の衝撃音に誘われて奥に居た他の個体が集まって来る。
「おい!メリッサ!敵が増えてるぞ!」
「奥から次々に来てます!」
「いっぱい来ました!」
「ワォォォォン!」
もはやモンスターハウスと化したので惣一郎とスミレも戦闘に参加して敵の殲滅をはかる。
「カニのようなクモと足の生えたキノコも居るぞ!?」
「どっちも見た目が苦手なのでソウイチロウ様よろしくお願いします!」
「お願いします!」
「ソウイチロウさん任せた!」
強いとはいえ3人はやはり女子だった。
「慕われているな惣一郎」
「コレは違うと思いますよ」
俺はボヤキながらもスパイダークラブとカエルのような足の生えたキノコの相手をする。
「このクモの糸は鋼鉄のワイヤーみたいな硬さじゃないか?」
巨大な蜘蛛の群れを黒鉄1号と折れ剣で捌きながら飛んでくるワイヤーのような糸を切る。
キノコはスミレが対応してくれている。
彼女は殆ど動くこと無く炎の矢を凄まじい勢いかつ正確に飛ばして集まって来るキノコたちを貫いて燃やす。
「あーやっと終わったぁ・・・」
「終わりましたね!」
座り込むダリアと何故かテンションの高いセレーナを見ながら惣一郎は水筒の水を飲む。
「まだ奥にデカいのがおるぞ」
「「え!?」」
ダリアとメリッサが驚く。
「ということはそいつが川の水を塞き止めている原因か」
「そうだろうな」
一息ついてさらに奥を目指す。
「ワン!ワン!ワン!」
「あ・・・」
奥へ向かう途中、先頭のルーナが気が付きダリアが人の物と思われる骨を発見する。
「これは恐らく村人のものだろうな・・・」
「そうですね・・・」
「やはり助からなかったんですね・・・」
セレーナとメリッサが肩を落とす。
「骨だけでも持ち帰ろう」
俺はキューブから大きな布袋を出すと彼等の骨を丁寧に袋へ移した。
キューブに布袋を仕舞い、再び奥へと歩き出す。
「この先に居るぞ」
スミレが敵までの距離を告げると、全員が武器に手をかける。
「ここか」
先程よりも広く天井の高い場所に出ると、そこには大きなスライムが数体、水源を塞き止めるかのように鎮座している。
「マッドスライムか」
「どれも水を吸収して巨大化してますね」
「どうやって倒すんだこれ?」
ダリアがスミレと惣一郎に問いかける
「惣一郎、折れ剣を貸せ」
「え、あ、はい、どうぞ」
惣一郎は鞘から抜いた折れ剣をスミレに渡す。
「こうやって倒せばよい」
スミレはスライムに近寄り、軽く剣を振ると一瞬でスライムが細かく切り刻まれ音を立てて蒸発していく。
「スミレ姉さん、凄すぎてまったく参考にならないぜ!」
ダリアが爽やかな顔で叫んだ。
「なるほど!細かく切れば倒せるんですね!」
(セレーナちゃん、そーゆーことじゃないと思うぞ)惣一郎は心の中でつぶやく。
「スライムは核を潰せば消滅する。小さければ簡単に潰せるが巨大化していた場合は探し当てるのが面倒だから細切れにしただけだ」
「大量の水を吸った場合、燃やすのも面倒だし狭い洞窟だと下手に爆発されても困るからな」
「なるほど!流石姉さん!」
ダリアのよいしょが洞窟に響き渡る。
そうしてスミレは全てのスライムを細切れにした。
塞がっていた水源部分が徐々に水を吹き、川となって洞窟から外へと流れていく。
「洞窟内に住み着いてた魔物も全部倒したし、村へ戻ろう」
元来た道を戻り、洞窟から出ると既に日が落ちていた。
「もう20時か。急いで帰ろう」
小走りで山を下り、村へと帰り村長に村人の遺骨を渡す。
集まっていた自警団の家族からお礼を言われたが、慰めの言葉しか返せるものはなかった。
俺達は宿へと戻り風呂に入ると1階の食堂に呼ばれたので全員で向かうと、テーブルに豪華な食事が用意されていた。
村の厚意を有難く受け取り、全員で食事を頂いた。
「砦の外側の村には兵士を派遣してくれないので、本当に助かりました」
宿屋の主人が出て来てお礼を言われたが、素直に喜べない複雑な心境だ。
「少ないですがお酒も無料で出しますので飲んで行って下さい」
「有難く頂こう」
スミレは酒瓶に手を伸ばし、みんなにお酒を注いだ。
「村の安全を願って」
「「「「村の安全を願って」」」」
「ワン!」
スミレの音頭で乾杯し、杯をあおる。
食事を終えてルーナと部屋に戻った。
明日の朝、ルーナに顔を舐め回されても俺は昼まで起きないだろう。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
9月も出来るだけ頑張って投稿したいと思います。
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少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。
これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。
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