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―迷宮8フロア―

 

 8フロア目へ続く階段を降りると、数十メートル先にひと際大きな扉が見える。


「今までのフロアに無い大きさと派手さがあるな」


「ソウイチロウ様、石碑があります」

「ワン!」


 セレーナとルーナが石碑まで走って内容を確認する。


 [ 勇気の有る者は進め ]


「これは恐らく最後の試練の部屋だと思います」

 メリッサが皆に告げる。


 全員が顔を見合わせ頷く。


「行きます」


「「はい!」」

「おう!」

「ワン!」


 全員に強化を掛け、大きな扉を開く。


 ゴゴゴゴゴ


 中は明るく、広い。


 真っ白な石造りの神殿だ。


 縦に長く、天井はアーチ状の作りになっていて、一番奥には扉が見える。


「何もないな・・・」


 全員武器を構えながら俺を先頭に陣形を組みながらゆっくりと進んで行く。


 中央まで進むと目の前に巨大な金属の塊が現れた。


「来たぞ!」


 全員が入り口方面へ下がりつつそれぞれの方向へ武器を向ける。


 正面に居るのは銀色の巨大な塊が一つ。


「これは・・・スライムか?」


 顔は無いがメタルな輝きを放つ巨大なスライムに見える。


 表面は鏡のように周りの景色を映し出している。


「今の所は敵はこの一体だけみたいだが、気は抜くなよ!」

 ダリアが声をかける。

「「はい!」」

「ワン!」


 メタルなスライムは扉の前から動かない。


「これを倒せば良いのか・・・?」


「そうだろうな。ソウイチロウさん、後ろは警戒しておく」


「わかった!」


 折れ剣を構えスライムへ刃を振る。


 シュパン!


「おお! あのデカいのが真っ二つだ!」

 ダリアが声を出す。


 スライムは斜めに両断され、上半分が滑り落ちる。


 ブニュン。


「元に戻った!?」


 両断されたメタルスライムは何事もなかったかのように元の一塊に戻った。


「こいつはどんな性質なんだ? 液体金属なのか?・・・・ダリア銃で撃ち抜いてみてくれ」


「おう!わかった!」


 敵はこの1体だけのようなのでルーナに警戒を任せて残りの全員でメタルなスライムの攻略に当たる事にした。


 全員にイヤーマフを付け、ルーナの耳はセレーナが塞いだ。


 パ――――ン!


 弾丸はメタルスライムを貫き大きな穴が開くが、すぐに塞がった。


「これは・・・・」


「私がやってみます!」

 セレーナが武器を構えてメタルスライムに殴りかかった。


 ガン!ガガガガン!ガン!


 セレーナの攻撃は全て当たるが表面は固く崩れる気配はない。金属を叩く音が虚しく部屋に響く。


 ガン!ガガン!ガガン!ガンガン!ガガガガン!ガン!


 スライムを5分程殴った辺りで俺が声をかける。


 セレーナ、一度戻って。


「はい!わかりました!」


「メリッサ、セレーナの治療を頼む」


「はい!」


 セレーナの手足は赤く腫れて所々血が滲んでいた。


 セレーナを下げ、取りあえず一通りの属性魔法の中級クラスを当ててみるが効果は無いように見える。



「今の所、反撃はしてこないようだがこれはどうした物か」


 部屋が広いとはいえ、威力の高い魔法を使えば全員に被害が出るのは確実だ。


 結界を使えるエルカが居れば古代魔法でも使って焼き尽くせるとは思うが、今は他の方法を考えるしかない。


「細かく刻んで少しずつ火で焼くか」


「そうですね、それが最善かもしれません」

 メリッサがセレーナの治療を終え、俺の考えに同意してくれる。


 とは言え、メリッサは火魔法の適性が無い。

 火魔法を使える事は使えるが、強化してあるとはいえ威力はそこまで強くはない。


 結果、俺が斬って俺が燃やすという自己完結型の作戦になった。


「よーし、頑張るか!」


「すいません、ソウイチロウ様。お役に立てなくて」

「悪いな、オレも魔法使えないから・・・」

「すいません」

「クゥゥゥン」


「いや、みんな気にする事は無いですよ。自分の出来る事をするだけです」

「一応少し離れてスライムの反撃と他の魔物が出て来ないかだけ注意していてください」


「わかった!」

「「はい!」」

「ワン!」


 そうして全力で剣を振り、スライムを細かく刻んでは上級魔法で焼くを繰り返す惣一郎。


 シュババババ! ボン!ボボン!ボン!

「うぉぉぉぉ!」


 10分後


 バババババ! ボボボン!ボンボン!

「まだまだぁ!」


「【アンプリファイア(過剰増幅)】!」


 1時間後

 バババババババ! ボボンボン!ボン!ボン!

「うぉぉぉぉ!」


 2時間後

 シュバババババ! ボン!ボン!ボン!

「・・・・・・・」



「はぁはぁはぁ、ふー・・すー・・・ 終わらない!!」


「なあ、なんか、スライムがあまり変化してない様に見えるのはオレだけか?」


「わたしもそう・・・思います・・・・」


「はい、ソウイチロウ様がかなり燃やしてる筈なのに、メタルなスライムは小さくなっていないと思います」


「クゥゥン・・・・」



「魔法などで回復してる様子は見えないのですが、このスライムは再生能力持ちなのでしょうか?」


 メリッサに問われ、惣一郎はちょっとまってと手の平で合図し、魔力草のお茶とマジックポーションを数本飲んで魔力と喉の渇きを回復させてから答える。


「ふう。迷宮の魔物だから通常の個体が持っていない能力を持っていてもおかしくは無いと思うけど、そうなると厄介だな。燃やすペースを上げる為に途中で、刻む大きさも様々変えて燃やし尽くせるギリギリの大きさで倒していたんだがここまでスライムの体積が減らないとは・・・。むう、室内だと巻き込まれるから古代魔法は使えないしなぁ。・・・・他に何か仕掛けがあるのか・・・?」


 ルーナ以外の全員が考えに耽り、その場に座り込む。


「ルーナ?」

「ルーナ様?」


 ルーナは一人スライムに向かい、敵にハウリングをぶつける。


「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!」


 パキ!パキパキパキ!

「ヒビ割れを起こしてる!?」


 ルーナはハウリングを続ける。

「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!」

 パキン! パキパキ! バキ! パキン!


 パ―――――――ン!

「「「あっ!?」」」

「スライムが砕けた!」


 大きな塊だったメタルスライムはルーナの集束ハウリングを受けて粉々に砕け散った。


「ワン」


 ルーナはその後も視線をスライムの居た方へ向けている。


「破片が!?」

「元に戻って行くぞ!?」


「そんな!?」


 細かく砕け散ったメタルスライムの破片が元の場所に戻り、融合して次第に先程と変わらぬ大きさへと戻って行く。



「・・・もしかしてこいつは倒せないのか?」

「どうしたら・・・」

 ダリアとメリッサの表情が曇る。


「ワン!」

 ルーナが惣一郎を見て元気に吠えた。


「うん? ルーナは何か分かったのか?」


「ワン!」

 ルーナは短く吠えるとまっすぐに歩き出した。


「ルーナ様、何を?」

「おい、ルーナ!」

 セレーナも惣一郎もルーナの目的が分からなかった。


 敵に向かって歩き出すルーナ。


「ワン!」

 メタルスライムの前まで歩き一旦止まって惣一郎の方に振り返り吠えると再度歩き出しスライムに顔から突っ込んでいく。


「ルーナ?!」


 どんどん進み、スライムの中に体をめり込ませていくルーナ。


「ルーナ様!?」

「ソウイチロウさん、どうなってるんだ!?」

「ルーナ様、何を!?」


 ルーナは尻尾の先まで全てスライムの中へと消えた。









いつもお読み頂き、ありがとうございます。


9月も出来るだけ頑張って毎日投稿したいと思います。


読みに来て頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!


少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。

これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると嬉しいです。


栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)


誤字報告なども頂ければ即対応させて頂きます。


更新時間は通常、朝8時に致します。

9月も頑張ります!

宜しくお願いします!

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