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―ハウリング―

 俺の手にはしっかりと遺物の地図が乗っている。


「凄い、私以外で触れる人が居たなんて・・・」


「ソウイチロウ様凄いです! どうやったんですか?!」


「多分これを作った古代人がそう言う仕様にしたんだろうな」

 俺は少し答えをはぐらかす。


「そうだな、これは恐らく古代人、アンダンテ・アニマートが作ったアーティファクトだ」


「アンダンテ・アニマートって?」

 ダリアが質問してきた。


「それは王都で見せて頂いた本の中に書かれていた古代人の方ですね」

 セレーナが補足してくれた。


「そう、いくつかのアーティファクトを作った古代の賢人の一人だ」


「その方がこの遺物を作ったんですか?」

 メリッサの表情は明るく、興味深々のようだ。


「ああ、アンダンテは女性なんだが、彼女はいくつかのアーティファクトの製作に関わってると記してあった」


「それがソウイチロウさんがマップを触れるのと何が関係あるんだ?」


「良い質問ですね、ダリアさん」

 ダリアは褒められた理由は良く分かって無いと思うが少し嬉しそうだった。


「彼女と私に共通点があるんです」


「「共通点?」」


「ええ、私と彼女は無属性魔法という魔法が使えます」


「「無属性魔法?」」


 俺は今まで彼女達に見せて来た魔法について説明した。


「あれは無属性の魔法だったんだな。光属性かと思ってたぜ」

「そうですね、私も光属性かと思っていました。しかし無属性というのは聞いた事がありませんが、これもアーティファクト(遺物)級の魔法という事でしょうか?」

 メリッサの意見が的を得ていた。


アーティファクト(遺物)級か。現代では失われた属性という意味では確かにそうかもしれないな」


「なんかカッコいい呼び方ですね!ソウイチロウ様!」

「ワン!」


「話が反れるけど、この魔法の事はあまり口外しない方が良いので他言無用でお願いします」


「この話が何か問題あるのか?」


「はい、私は恐らくゴーレムをけしかけて来た奴等に目をつけられています。そして奴らは恐らく無属性魔法の事を知ってると思われます。ですので、この話題を話してる所を見つかったり、他人経由でも話が伝われば、私の関係者としてお二人が狙われる可能性があります」


「ゴーレムって魔族の兵器って弟が言っていたが・・・ソウイチロウさんは魔族に狙われてるって事か?」


「はい、今はまだ表立って仕掛けられては居ませんが、王都の奇襲を殲滅した事で、魔族達には私がゴーレム達を簡単に破壊出来る脅威としての認識は持たれたと思います」


「そ、そうなのか?」


「間違いないかと思いますので、申し訳ありませんが、無属性魔法に関しての話題は気を付けて下さい」


「ああ、わかった。気を付けるよ」

「はい、わかりました」

 ダリアとメリッサは神妙な面持ちでそう答えた。


「話を戻しますが、これも今の話と被る内容になりますが、私も特殊スキルがあります」


「まった!」

 ダリアが割って入る。


「それも話のネタにしない方が良い内容か?」


「そうですね、ギルドのスキルブックには新しく記録される事になったスキルですが、まだ公にはされていないと思いますのであまり話題にしない方が良いかと思います」


「そ、そうか。じゃあスキル名は伏せて貰って良いか? 聞かなければ名前を出す心配は無いからな」

 ダリアは以外にもかなり慎重派らしい。だがそれは正しいと思う。

 相手があのゴーレムをけしかけてくる得体のしれない奴等なら慎重になるのは当たり前だ。

 メリッサも隣で何度も首を縦に振っている。


「わかりました。安全のために二人にはスキル名に関しては伏せておくつもりでしたので大丈夫です」


「そのスキルは先程の賢人に関係すると思われるスキルなのですが、それが私がこの地図を触れる要因です」


「古代の賢人に関係するスキルって・・・」

「なんかもう凄すぎて訳が分からないなソウイチロウさん・・・」

 メリッサもダリアも情報過多で若干引き気味の様子だ。


「まあ色々ありますが、良い事もあります。見てて下さい」

 そう言ってアーティファクトにアンダンテの魔力を込める。


「地図が光ってる・・・」

 メリッサが呟く。


「はい、これで地図の能力の更新が終わりました。地図はメリッサさんにお返しします」

 地図をメリッサへと返した。


「え?地図の能力の更新ですか?」


「ええ、複数の地図情報を切り替える事が出来るようにしましたのでメリッサさんが今までこの地図に記録させた場所が全て見れるようになります。試しにコルグを思い出して見て下さい」


「コルグ・・・・」

 メリッサは地図を持ったまま目を閉じると地図が光り、内容が切り替わっていく。


「あ、コルグの地図に変わりました!」


「ダンジョン以外も記録されるのか!?」


「ええ、この地図はそういった能力が付与されていたみたいですね。最も製作者が色々と制限をかけていたみたいですが。いずれにしても、入る度に中の構造が切り替わる迷宮では地図を何枚も持たずに済むので重宝しますね」


 メリッサの過去の話と遺物のアップデート等を交えた休憩も終わり、先へと進む為に、目の前の扉を開ける。


「皆さん、これがこのフロア最後の部屋です!」

 メリッサがみんなに告げた。

 

「フロアボスが居るか、他の仕掛けがあるかは分からないが、何か仕掛けがあるはずだから皆気を付けろよ!」

 ダリアが注意を促す。

「ええ」

「「はい」」

「ワン!」


 俺は全員に強化と迷彩を掛け、石造りの重厚な扉を開けた。


 中は広間のようだが暗く、先が見えない。

 奥に進みながら複数のホバーライトで明かりを点けていく。


「広い空間だな。仕掛けは無さそうだけど、次へ続く扉も階段も無いな」

 部屋の中心まで進み周りを見渡すも何も起こらない。


「取り合えず俺だけでも迷彩を解いてみるか、みんなはそのままで」

 俺一人迷彩を解くと仕掛けが作動した。


 部屋の入口が閉じて、四方の壁際から大量の魔物が現れる。

「モンスターハウスか! みんな気をつけろ」

「「はい!」」

「おう!」

「ワン!」


 再度自分に迷彩を掛けながら杖を構えた。

 敵の数は百かそれ以上。種類も獣系から半獣人系、スケルトン等のアンデッドや魔法生物、爬虫類から巨大な昆虫系と多種多様だ。

 殆どの魔物達は迷彩効果で俺達の位置はつかめていない。

 アンデッドや魔法生物の魔物達は多少は感知できるのか、ヨロヨロと近づいてくる。

「俺は扉側の敵を一掃する! 各自離れ過ぎないように戦ってくれ! メリッサは回復サポートを頼む!」

「「「了解!」」」

「ワン!」


 敵の数を大きく減らす為に、魔法を放つ。

「部屋の中で撃つなら安全なのは物理系の魔法か」


「我放つ、氷結の流弾(りゅうだん)

 ババババババババッ!

 杖を魔物達へ向け、扇状に無数の氷の散弾を撃ち込む。


 惣一郎の正面に居た無数の魔物達に無数の氷弾が撃ち込まれ、絶命し消えていく。

「よし、後は少しずつ潰していくか」


 魔物達は姿の見えない俺達に戸惑いながらむやみに武器を振り回したりしているが、避ける事は容易く、こちらは一方的に攻撃をして殲滅していった。


 そうしてしばらく戦っていたが、魔物が減る様子が無い。


「ソウイチロウさん!倒しても倒しても湧いてくるぞ!」


「殆ど一方的に攻撃出来るのは良いが、次から次へと湧いてくるな。この無限湧きは何か仕掛けがあるんだろうな」

 何かしらの仕掛けがある事は容易に想像がつく。


「この仕掛けは見たことがあります。多分核となる魔物が居るはずです!」

 メリッサが過去の経験から仕掛けの解き方を意見してくれた。


「なるほどな。良くあるやつか」


「全員で目を凝らしてスタートからずっと生き残ってる魔物を探すしかない」


 結界魔法を使える魔法使いが居ないので、広いとはいえ壁も天井もある箱の中では威力の高い範囲魔法は使えない。


 するとセレーナの近くで戦って居たルーナが部屋の中央に戻り、大きく息を吸い、遠吠えを始めた。


「ワォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」


 長い遠吠えに皆が驚くも、周りを見ると魔物の動きが明らかに遅くなっていた。

 ルーナは部屋の中央で遠吠えを続けている。


「ソウイチロウ様!今です!」

 セレーナが気が付き、俺の名前を呼んだ。


「そうか!」

「みんな!ルーナが敵の動きを止めてくれてる間に全力で叩くぞ!」


「「「了解!」」」


 俺は味方に当たらない様に前に出て、壁に向かって様々な角度へ広範囲の氷の流弾を撃ち込み敵を殲滅していく。

 ルーナの遠吠えの効果により、敵の再出現(リポップ)も遅くなっている。


 ダリアは両手にナイフを持ち、走りながら敵の急所を切っていく。


 メリッサは俺と同じように広範囲の魔法を撃ち続け、セレーナはさらに加速して拳を繰り出し、次々と敵を壁へと吹き飛ばし叩きつけて消していく。


 たちどころに敵が消えていく。すると、1体だけ不自然な動きで他の魔物の後ろに隠れて逃げている影を見つけた。


 瞬間、ルーナがその影に食らいついた。


「ガウッ!」


「ピギュ!」


 ルーナはその魔物の喉に食らいつき、絶命させた。


 部屋の魔物が全て消えていく。


「オークメイジか」


 王国の図鑑で見た事のある魔物だった。魔法を使う魔獣人族の魔法使いで幻術系の魔法を得意とするらしい。


 このオークメイジは迷宮の作った魔物らしく、他の魔物と同じように消えて行った。


 ゴゴゴゴゴ。


 大きな音と共に部屋の奥に下へと続く大きな階段が現れた。



「ふう、これでこのフロアはクリアですね!」

 セレーナが武器を腰に戻しつつ、部屋の中央へと駆け寄って来た。

 他のみんなも中央へと集まって来る。


「ルーナ様、凄かったです!大活躍ですね!」

「ワン!」


 セレーナはルーナに抱きつき、ルーナはセレーナの顔を舐める。

 いつもの微笑ましい光景だ。

 見て癒されよう。


「みんなすごいな」

「そうですね」

 ダリアとメリッサが周りを見ながら声を合わせる。


「全員で頑張って乗り越えたんですよ」

 俺はみんなに労いの言葉をかける。


「取り合えず再度装備の点検をしてから次のフロアへ移動ですね」

「「はい!」」

「おう!」

「ワン!」





いつもお読み頂き、ありがとうございます。



読みに来て頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!


少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。

これからも頑張って続けて参りますので、良かったら評価等応援の方宜しくお願い致します。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると励みになります。


栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)

ぜひよろしくお願い致します。


更新時間は通常、朝8時に致します。

8月も頑張ります!

宜しくお願いします!

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