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―10冊の本―

 

「私の命よ」


「話を聞かせてもらっても良いですか?」


「ええ、勿論。貴方には隠す必要は無いからね。でもこれから話す内容は二人だけの秘密にして頂戴ね。私の命にかかわる事だから」


「ええ、分かっています」


 そう約束した所で彼女が話始める。


「私は自分の書いた本に自分の魂を分けたの。理由は音無君の様な無属性の適正者を待つ為。本は全部で12冊あったのだけど、そのうち2冊は消滅した。でもそれは想定済みだった。でも予想してたより消滅した本の数が少なくて良かったわ。半分は無くなる事を想定してたから。でもまさか適正者を三千年待つとは思わなかったけどね。実の所、私も分けた魂がそこまで耐えられる確信は無かったし・・・、ちなみに魂を回収する前に本が燃えたりバラバラになったりして10冊全部消滅したら私は死ぬわ」


「現在、魂の残っている本は10冊、その本を見つけて私の魂を回収したいの。ある場所は概ね分かっているから、取り合えずその場所へ向かって、本を手にしてくれるだけで良いわ」


「音無君が触るだけで魂は回収出来るから、もしも高い値段がついていたとしても買ったりする必要は無いからね。禁書の類に指定されて居たらちょっと厳重な場所に保管されてるかもしれないけど、無属性魔法があればどうとでもなるわ」


「ちなみに今の私は、少しずつ音無君の魔力を頂いてアナタの中でこうして生きているわ。頂いてる魔力量は僅かだから心配しないで良いわよ」


「店子に光熱費と家賃取られてる状態なんですが・・・」


「や~ん、けち臭い事言わないでよ~。無属性魔法とその理解をあげたじゃな~い。それに~この天才美少女の知恵を毎晩提供してあげるから食費の代わりにはなるでしょ~?音無君の世界と違って~通信インフラの整っていないこの世界なら~、情報が貴重なのは異世界人の音無君なら分かるでしょ~?しかも大体過去三千年分位の情報ですからね。」


「アンダンテさん二千年間寝て過ごしてませんでした?」


「その分は旅の途中で徐々にアップデートしていくから問題無いわ~キラッ☆」


「二千年分のアップデートってかなり時間かかりません?」


「CPU(頭脳)が超高性能だから大丈夫よ~キラッ☆」


「三千年前のCPUって化石ってレベルじゃなく無いですか?」


「三千年前から殆どOS(世界)が変わっていないから問題無いわ~キラッ☆」


 いちいち決めポーズがうざい。多分気に入ってるんだなこれ。


「三千年間ほとんど文明が発展してないのも悲しいですね。日本だって建国から二千数百年で結構発展しましたよ。まあ、もっとも発展したのはここ百数十年程度の間ですけど」


「それは言わないで!ちょっと悲しくなるから!」


 アンダンテが決めポーズを解き、しなだれながらそう言った。効果は抜群だ!


「でも魔法文明?精神文明?って物質文明とは別の発展の仕方になるでしょうから、一概にどっちが良いとかは言えないですけどね」


 シクシクと声に出しての鳴きまねが煩いので、そんなフォローを入れつつ話を元に戻そうとした。


「それで、最初の1冊目は何処に行けばありますか?」


「うん、そうよね。そう、最初はこの国の王都「ルブルムナビス王国」に向かいましょう。この村からはかなり離れているから一度手前の街【ローランド】に寄ってから向かうのが良いわ。ここには冒険者ギルドがあるから、冒険者として登録してね。世界を旅する際に色々便利になるし、それにこの世界はステータスがあって、それを見るにはステータスプレートが必要になるの。プレートは登録時にギルドで作れるはずだから。あ、登録時にお金が必要になるから途中で魔物とか狩って魔石集めるわよ。今のレートは分からないけど、魔石はギルドで換金できるわ」


「ん-、えーっと・・・ちょっと情報が多いです。取り合えずそのローランドに行くにはどうしたら良いですか?」


「分からない所は後で聞き返して貰って良いわよ。でもってローランドまでだけど、地続きだから歩いて行っても良いけど、この村からだと徒歩で1週間、馬車で三日かしらね。隣村まで1日半、そこから1日半の所にローランドがあるわ。どの村も1ヶ月に1度は商人が馬車で回ってくると思うから、それに乗せて貰うのが最善かしらね。急ぐ旅では無いけれど、音無君は徒歩での旅慣れしてないでしょ?」


「馬車だと途中で魔物狩り出来なくないですか?」


「多分向こうから勝手にやって来るから大丈夫よ」


「やっぱり馬車は魔物に襲われるのか。定番やな」


「そうね、でもこの森じゃ弱い魔物しか出て来ないから、音無君なら簡単に倒せるわよ。サンシーカーが居なくなったとは言え、聖霊の守っていた土地ですからね。あと百年は強い魔物は住みつかないわ、特にここは森の中心部だから加護の力が強いし」


「なるほど、じゃあ馬車が来るまでこの村の周りで魔物討伐でもしながら過ごしておけば良いですかね」


「そうね。あと、さっきここに入る途中に見えたんだけど、鍛冶屋があったからそこで防具が作れるか聞いてみると良いかもね。村の鍛冶屋だからあまり期待は出来ないけど、剣と盾の看板だったから鍋や農具以外も作れると思うわ。それに自分でも分かってると思うけど、その服装は街では目立つから出来れば服も一緒に仕入れて着替えた方が良いわ。さっき取った魔石で代金は足りると思うし」


「ですよねー」

 メイドさんは兎も角、村長さんは明らかに俺とは違う服装だった。何故かまだ二人以外の村の住人は見ていないんだけど、多分俺の服は靴以外この世界じゃ浮いてる。靴も一部ゴム素材だから職人がしっかり見たら高値で買いたいとか言い出すと思う。


「よし、次の目的地は決まったな。自分のステータスも見てみたいし、まずは冒険者になりに行くか。」

 少しだけワクワクしてきた。


「本の事も忘れないでね」


「あ、はい、だいじょうぶですよアンダンテさん」


「・・・一瞬で忘れてたわね」


「さて、それじゃあ私は少し疲れたから休むわ、またこの場所で、夢の中で会いましょう」


「ええ、取り合えず村を見て回って森で魔法を試して、魔物でも探して狩ってみます」


「そうそう、音無君、あとで鏡を見てみると良いわよ」


 気が付くとベッドに倒れ込んだままの態勢で目が覚めた。

 鏡を見ろ?嫌味かジョークか?それにしても「夢の中で会いましょう」なんて、恋人同士か!

 軽く心の中でツッコミを入れた瞬間


頭の中にカシャカシャと音を立てながら1文字ずつ文字が浮かぶ。

「十冊の本を探せ」

あのタイトルコールだった。

「またこの演出か!」

また大き目の声を出してしまった。うーん、何かある度にこうなるのだろうか・・・。


 さてと、少しは休め・・・・た気がしないな。今は何時だろうか。

 まだ窓からは光がさしている。

 時間が分からないのは不便だな。この世界の人達はどうやって時間を見てるんだろう。

 そう思いながら背伸びをして気が付く。


「ルーナ?」


 姿が見えない。部屋を見渡すとドアが開いていた。



少し短めになりました。

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