―コルグ―
コルグは王都の東の街でクリスタルがある街だ。
大きさはローランドより少し大きく、王都の近くだけあってかなり栄えている。
冒険者ギルドも賑わっており、赤の国の冒険者は多くがここを拠点にしているとか。
冒険者の多くは東の山脈、イーストロックへ向かい優良な素材となる魔物を狩っている。
各地を旅をしている冒険者もここへ集まるので、装備や道具の需要が多くなり、商人が店を開き、その店を目当てに人が集まっていく。そうして自然と大きくなっていった街だそうだ。
街の中は冒険者が多い。
装備も多種多様で、大きな斧、大きな剣、大きな盾、大きな胸・・じゃなくて杖を装備した冒険者パーティーも居る。
基本的にソロで動いてる冒険者は殆どいないらしい。
武器防具の店も繁盛していて、道具屋も品ぞろえが良い。
今は街の復興で普段とは違った賑わいを見せているが、1カ月もすれば元の賑わいを取り戻すだろうとレージェさんが言っていた。
「ここがこの街のクリスタル広場と呼ばれる場所です」
エルカに案内してもらい、クリスタルの開放に来た。
「中は広場になってるんですね」
入口の門は二重になっており、ここも普段は解放されているらしいが、ローランドと同じように、今は警戒中だそうだ。
ここは天井は無いが、四方を高い壁で囲まれている。
俺、ルーナ、セレーナはクリスタルに触れて移動地点を開放する。
これでローランドとコルグまでは一瞬で移動できるらしい。
「私は報告の為に~、一度ローランドに戻りますが~みなさんはどうされますか~?」
「俺達はレージェさんの所に用事がありますので、そちらに向かいます」
「ワン!」
「あとは冒険者ギルド等で情報を集めてからイーストロックへ向かう感じですかね。少しの間この街に滞在するかと思います。何かあればローランドにも行きます」
「わかりました~。また何かあれば宿かギルドに伝言を残しますね~」
「はい、こちらも連絡があればコルグかローランドのギルドに向かいます。あとこれをミハエルに渡して置いて貰えますか? 中に詳細を書いた手紙も入れて有りますので、詳しくはそちらを読んでと伝えて下さい」
「これはお金ですか? かなり入ってるみたいですが~」
「まあ、渡したら一緒に手紙を見て貰えれば分かると思います」
そうして魔導船で稼いだお金をエルカに渡し、彼女はクリスタルでローランドへと戻って行った。
「これでよし」
武天流格闘術道場へ移動する
「それじゃあセレーナのこと宜しくお願いします」
「ああ、任せておくれ」
「宜しくお願いします!」
「ワン!」
俺は本等に関しての情報収集、セレーナとルーナは道場で稽古を付けて貰う事になった。
ルーナは主に見学だが、避難民の子供達に人気があり、追いかけっこして遊んでいる。
ルーナと一緒なら子供達も安心だ。
俺は冒険者ギルドへと向かう。
ギルド内に入ると、何やら騒がしい。
冒険者達の話に聞き耳を立てた。
「まったく、冗談じゃない。イーストロックに竜騎士が現れたとは」
「竜騎士か、厄介だなぁ」
「それでこの辺にもあっちの魔物が流れて来てたのか。この辺でファイヤーロックやブルドを見たってのはデマじゃなかったんだな」
「ああ、そうらしい。わざわざあっちまで行かなくてもこの辺で狩れるようになるのは嬉しいが、生態系が大きく崩れるな」
「しばらくはイーストロック手前での探索をメインにしておくか」
「そうですね、イーストロックの殆どの魔物はあの辺りに逃げている筈ですから」
人の輪に入り辛い俺はギルドの受付嬢に話を聞いてみた。
「すいません、イーストロックで何かあったのですか?」
「はい、えっとイーストロックに竜騎士の方が現れて、山を封鎖したらしいです」
「竜騎士ですか? 山を封鎖というのは?」
「はい、竜騎士というのは西の大陸から来られた、特別な権限をお持ちの固有ジョブの冒険者の方です」
「特別な権限を持った冒険者ですか?」
「はい、主に龍の保護を目的として活動されている冒険者の方々です」
「龍の保護ですか」
そう言えばミハエルが西の大陸には龍がいるって言ってたっけ。
こっちの大陸にも居たから竜騎士が保護しに来たのかな?
「龍に関しては私たちも詳しくは聞かされてはおりません。ただ、3国協定では、龍への攻撃も討伐も龍が関連する情報および素材の取引も禁止されており、国であれ冒険者を含む個人であれ、違反すれば即座に違反国への攻撃、個人であれば指名手配され処刑されるといった内容があります。また竜騎士は表向きには冒険者ですが、どこの国にも属さずに、各国の状況の監視役とされております」
「なるほど。それで龍の現れたイーストロックは龍の保護の為に山を封鎖したという事ですね」
「はい、そうかと思われます」
「わかりました、ありがとうございます」
(この世界の龍という存在は保護対象になっているのか。後でアンダンテに聞いてみよう)
「しかし、イーストロックに入れないとなると予定を変更せざるを得ないな。竜騎士にも会ってみたいが、合うのが目的でわざわざ遠回りする必要があるかと言われれば無いんだが・・・さてどうしたものか」
受付を離れ、壁に張り出された依頼を見ながら考えていると、フード越しに隣から視線を感じた。
横を向くと見た事の有る顔があった。
「あ、やっぱりそうだった!」
「えーっとこんにちは。君は確か、王都で会った子だよね?」
「あ、すいません、こんにちは。はい、王都のギルドではご迷惑をおかけしました。自己紹介がまだでしたよね? 私はメリッサと言います。宜しくお願いします」
メリッサが握手を求めて来たので握手を交わした。
「王都での事はもう気にしなくて構いませんよ。メリッサさん、あれからギルドでは姿が見えなかったのですが、こっちに来ていらしたんですね。お一人ですか?」
「あ、ええ、あの襲撃で仲間と別れてしまって」
彼女の表情が曇る。
この言い回しは恐らく、死に別れたという意味なのだろうか。確か冒険者も2名程戦死者が出たはずだ。そのどちらか、もしくは両方が・・・。
「そうでしたか」
色々聞きたいが俺はこれ位しか言えない。
「あ、でももう大丈夫です。こう言うこともあるって覚悟はしていましたし。生きていれば幾らでもやり直せますから!」
彼女は明るく振舞っている様子だが、心の内は読めない。
「そうですね、生きていればまたやり直せます。所で今日は何か依頼を受けに?」
「あ、はい、一人でも可能な依頼でも受けようかと思って来ました。ソウイチロウ様も依頼を受けに来られたのですか?」
「はい、イーストロックが封鎖されてしまったので、どうしようか考えながら街の近くの依頼でも無いかと思って探していました」
するとそこへ一人の男が話に割り込んで来た。
「なあ、(アンタ、もしかしてソウイチロウ・オトナシ伯爵か?)」
男は近くに寄って小声で話してきた。
「え、あ、はい。そうだと思います」
「マジか!(あ、わりぃ。なあそっちの嬢ちゃんも一緒にあっちの席に行って話をしないか? 目立つのは嫌だろう?)」
確かに目立ちたくはない。メリッサにも同意を得て3人でギルドの奥のテーブルに付いた。
「まずは自己紹介だな。オレはダリア。ジョブはシーフだ。弓とボウガン、ナイフを使う」
「私はメリッサです。ジョブは魔導士です。回復が少しと攻撃魔法も少し使えます」
「ソウイチロウです。ジョブは特に名乗って居ません。剣と魔法を使います」
簡単な自己紹介を終えた。
「あ、すいません、ダリアさんて女性の方ですよね?」
メリッサがダリアに尋ねた。
「ああ、そうだ。何か変か?」
「あ、いえ、変では無いです。ちょっと気になったので、すいません」
俺は完全に男だと思っていたが、女性だったのか。
まあダリアって名前は女性の名前か。見た目は男にしか見えなかったが、良く見れば確かに防具は女性物で胸もある。彼女の一人称が「オレ」だったからメリッサも確認したのだろう。
「取り合えず1杯奢らせてくれ」
そう言ってダリアはウェイターに飲み物を注文した。
昼間なのでノンアルコールのフルーツジュースを3杯。
3人で乾杯した。
「いやあ、アンタの噂は聞いてるぜ。オレの弟が王都の兵士でな、王都でのこと全部聞いたんだ。東門でアンタに命を救われたって言っててな、弟にもしどこかで会ったらお礼を伝えておいてくれと言われたんだ。あとアンタは目立つのがあまり好きじゃないってのも聞いた。だからちょっと怪しい誘い方になったけど」
「東門か、あそこに居た部隊の生き残りの子達のだれかかな」
「ああ、そうだ、アンタと一緒に戦いたいと申し出てたが下がって増援を待てと言われたと言ってたな」
「あの時の子達か」
「弟を助けてくれてホントにありがとう。弟はたった一人の家族なんだ」
「そうか、それはまあ、気にしないでくれ。彼等だってあのゴーレム相手に頑張ったんだ。生き残ったのも実力さ」
「・・・アンタ良い奴だな!」
ダリアは笑顔でそう言った。
「そう言えばそっちの子、メリッサだったっけ、二人はパーティーメンバーか?」
「いえ、違います。先日王都のギルドでご迷惑をおかけしたままだったもので、先程偶然再会して、謝っていた所です」
「あーその事は本当にもう気にしないで良いですからね」
苦笑いで答えた。
「そうか、所で何か依頼を探していた様にも見えたんだが、良かったら三人で一緒に行かないか? オレは先日まで一緒に組んで居た奴らと別れて今は一人でさ、ソロで出来る依頼を探してたんだが、丁度アンタを見かけてさ、お礼もあったが、パーティーでもどうかなって。もちろん俺とアンタじゃ格が違うのも分かってるから取り分はアンタが多くて良いよ。メリッサも一緒にどうかな?」
「あ、私もソウイチロウ様さえ良ければ私も是非お願いしたいです」
「んー、連れが街の道場に居るので、そっちに確認を取ってからで良いですかね? 依頼内容によっては数日かかるものも有ると思うので、その辺りも含めてになりますが」
「オッケー、わかった!じゃあ取り合えずオレとメリッサはパーティって事で大丈夫だよな?」
「あ、はい、宜しくお願いします、ダリアさん」
「ダリアでいいぜ!」
「あ、はい、ダリアよろしくね!」
「取り合えず2人か3人で受けれそうな依頼を探しておいてくれないかな? 俺は道場に行って確認してくるよ。あと、取り分は均等で良いからね」
そう言い残してルーナとセレーナに確認しに行ったが、セーラはしばらく修行したいので、大丈夫ですと言ってくれた。
ルーナにも聞いてみたが、子供達と遊ぶのが楽しいらしく、大丈夫だと言ってくれたと思う。
なんかルーナがまた少し大きくなった気がする。
育ち盛りだな。
ギルドに戻る前に少しモフり【キューブ】から生肉を取り出してルーナに食べさせた。
「それじゃ頑張って路銀を稼いで来ようかな」
再びギルドへと戻った。
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