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―油断―

 胸部に刺さった刃物を見る。


「あぁ・・・」


 侍女は俺から離れ、月明りの中でニヤッと笑っていた。

 次の瞬間、俺は目の前の侍女を掴み【キューブ】に押し込んだ。


 俺は自分の胸部に刺さっている刃物を掴み、引き抜く形の仕草を取ると、刃物は刃先が無くなっていた。

 それを近くのサイドチェストの引き出しに入れた。


 今日は寝る前に防具を外していた。

 無傷で無事だったのは【オーバードライブ(過剰強化)】と【メタル(過剰装甲)】のお陰で

 今回は特にメタルの方の 一撃死を防ぐ という効果だろう。


 俺は人に会う時などは無意識に強化をかけるのが癖になっている。

 扉を開ける前に無意識に魔法をかけていたのだ。


 そう、俺は人一倍のチキンハートを持つ男、音無惣一郎だ。


 ・・・ちがうな、これじゃタダのヘタレではないか。


「油断しない男」と修正しておこう。



「ふう、危なかった」


「さて、この侍女(?)が最初に感じた視線の主だったのかな? 俺への刺客か。咄嗟に【キューブ】にぶち込んだのは自分でもナイスな判断だったが、もう一回出すのは怖いな。死んではいないし。後で牢屋でも借りるか?まさか出した途端に自爆とかしないよな?」


 ルーナが反応しなかったという事は魔族ではないのだろう。人かそれ以外の人種か。だが俺はそこまで怨みを買うような事はしていない筈。魔族以外には。


 刺客は自力ではキューブの中からは出られないから、取り敢えず後回しにして寝るか。

 二人目は居ないよね?


「しかし、【メタル】の効果は偉大だな。うん。これからも忘れないようにしよう」


 念の為、部屋に鍵をかけてからベッドに入った。




「こんばんは。音無君」


「こんばんは、アンダンテちゃん」


「あら、今日は可愛く呼んでくれるの? 嬉しいわ」


「ええ、さっきはアンちゃんとダンテちゃんでしたからね。一つになったからアンダンテちゃんですよ」


「そっか。ありがとう」

 アンダンテが微笑む


「何か雰囲気が少し変わりましたかね?」


「そうかしら。でもそうかもしれないわね。私も少しアップデートしたからね」


「なるほど。それで調子はどうですか? どこか悪い所とか無いですか?」


「んー、そうねちょっと胸が苦しいかも。見てくれるかしら?」


「どこですか?」

 アンダンテに近寄り、彼女を見る。



「ここよ。胸の辺り」

 そう言って胸を指さすと俺の手を取り、胸を掴ませた。


「いやーん、音無君のえっち~」


 彼女は通常運転だった。

 なんかめんどくさかったので、そのまま少しだけ揉んであげた。


「アン☆音無君たら今日は積極的なのね☆」


「まあ、今日はこれ位のサービスはしておきますよ」

 そう言って胸から手を離した。

「はい、終わりです。ご利用ありがとうございました」


「ちょっと、なんで終始無表情で言葉に感情が籠って無いのよ!」


「所でアンダンテちゃん」

 合いの手を無視して話しかける。


「なあに?音無君」

「先程刺客に暗殺されかけました」


「そうね、大変だったわね。何事も無かったのは幸いだわ。流石私の音無君」

「でも多分【キューブ】に閉じ込めても閉じ込めなくても、あの刺客は死ぬわよ」


「え!どうしてですか?」

「経験から言うと、ああいった刺客の場合、使い捨てなのよ。秘匿や支配の契約が結ばれていて、成功しても失敗しても、その場で死ぬようにされてるのよ」


「ああ、そうか。そうですよね。じゃあ中では生きていても、外に出した途端に死ぬって事ですかね?」

「もしくは【キューブ】に入れる前に既に死んでいるか。ね」


「はあ、憂鬱だ」

「命を狙われた貴方が気にする相手じゃないわ」

「確かにそうなんですけどね」


「誰もは助けられないわよ。人は常に選択を迫られるのだから」

「ですよね」


「でも、刺客を送り付けた奴は見つけ出して報いを受けさせる事が出来るわ。音無君はそっちを考えれば良いのよ。

 自分を責めたり、何か良い手が無かったかを考えてたら、アナタの心が擦り減っていくだけよ。送り込んで来た奴はそれも狙ってるのだから」


「そうですね、そうします。報いを受けさせますよ」

「ええ、その意気よ。二人で()ってやりましょう」


「・・・」


「何? 私何か変な事言った?」


「いえ、なんか凄い物騒な事を言いながら生き生きしてるなぁと」


「兵器の件はともかく、暗殺の件は敵がハッキリわかったからね」


「そうなんですか?どこの誰ですか?」


「魔族よ」


「それってもしかして」


「ええ、体験談ね。同じ方法で刺客送り込まれた事あるから」


「なるほど。ならこっちの件は間違いなさそうですね。でもこの城に着いた時には既に俺の事が知れてたって事ですよね?」


「あのアホ共はこーゆー情報掴むのは早いのよ。そして無属性魔法の事を知ってる奴が居る。勿論私の事もね。現代の私の存在までは分かってないと思うけどね。この魔法が脅威になる事は分かっているでしょうから、音無君を消しに来たのよ」


「この国に魔族に通じてる奴が居るって事ですかね?」


「どこの国にも居るわ。昔からそんなものよ」


「どこの国にもって・・・」


「そうね、分かり易く言えば【死の商人】って所かしら」


「ああ、そう言う事か。うーん、一番得をする奴は・・・・武器商人?だけど・・・大本は・・商業ギルド?でも・・・武器その物を作る素材、鉱石。じゃあ黄の国ですかね?」


「んー、その辺りで絡んでる奴は居るでしょうけど、国全体が絡んでる事は無いと思う。採掘量とか流通量を見てみないと何とも言えないわね。その辺りは国の文官とか諜報員にでも任せておけば良いわ。私達はまず、あの兵器を無力化するのよ」


「ですね」


 そうしてアンダンテ指導の、ゴーレム無力化作戦のメインである武器制作。

 勿論俺がやるのだが、内容は魔石を使った魔道具武器の作製だ。


 使うのはハープーンガンをモデルにした魔導ハープーンガンとでも言えばいいだろうか。 

 魔石を火薬代わりに使った銃で、射出するのは銛ではなく杭状の弾丸。

 弾の大きさは長さ80ミリ、最大直径18ミリ。大体人差し指位の長さと太さ。


 銃のバレルやフレーム等主要部分は黒鉄に銀を混ぜた素材で作り、ストックやフォアグリップなどを木材で作る。

 弾が大きいので威力と直進性を高めるために銃身にはライフリングを施す。

 勿論、大型の旋盤などは無いので、鍛冶と魔法の力で切削加工を行う。


 杭は鉛と銀鋼鉄を使い、硬芯徹甲弾のように作り、火薬代わりの魔石は形を・厚さ5ミリ・直径18ミリの同一形状に加工して交換式にする。銀黒鉄でも弾を作り、銀鉄鋼で貫通力が足りなければそっちを使う。

 加工した1個の魔石で撃てる弾数は2発。アンダンテによると雷管のように撃発式が可能で、見た目は単発装填式のライフルと同じに感じなる。弾が杭なのでこちらの方が少し重厚になるけど。

 仕組み的に言うと雷管がそのまま発射薬代わりになるが、魔石その物が爆発するわけではないので安全だ。


 取り敢えずだが、銃の全長はストックを合わせて70㎝程度。1人で扱える程度の反動と、重さと取り回しの良さ、あとは作り易さを考えた結果だ。あとは実際に出来上がってから必要に応じて調整し、量産すれば良い。


 試作品は既に軍務大臣(ミリター)とガボットに依頼してある。どっちが先でも問題は無い。

 出来上がったら最終的にアンダンテに教えて貰った術式を俺が書いて仕上げる。

 銃弾となる硬芯徹甲弾(仮)はミリターがこの国の鍛冶屋に作らせている。試作品が出来次第、俺の所に持ってくる手筈になってる。


 貫通力テストは、先日の襲撃の際の柱式の転送装置を回収した上黒鉄で行う為、そちらのを加工した単純な板でテストする。炉で溶かして板厚を変えた物を数枚作るだけなので、朝一で鍛冶場に行き、溶かしやすいように柱を切り刻んでくる。


 これが完成すればあのゴーレムは、魔法を使えない農民でも倒せる程度の脅威になり下がる。

 まあ、倒すともれなく自爆するから危ないのは危ないし被害も出るんだけどさ。

 この銃が行きわたれば人の戦争にも使える物になってしまうが、そこは無限の叡智様。


「私がそんな事させると思う? 劣化した術式しか使えない現代人じゃ分からないように安全装置を仕込んであるから大丈夫よ!」との事。


 対人無効化という術式を組み込んであるらしい。エーテルサーキュレーションデバイス、通称クリスタルを作った時にも、戦争利用出来ないようにそういった安全装置を組み込んだのだと。あれは意図的だったらしい。

 さすが、古代の賢人様達だぜ! 俺達に出来ない事を平然とやってのけるッ。


 先程、王子にはその辺りの警告はしたし、人に対して使う事は無いと思うが、今後の状況や、世代が変わればその限りでは無いからな。安全装置については誰にも教えてないが、万が一そうなっても発動しないようにしっかり対策は取らせてもらう。



「そう、それと色々思い出したことがあるの。正確には欠如していた記憶が戻ったって所ね」

アンダンテが融合後の事を話始めた。


「それは融合した魂との話ですかね?」


「ええ、そうよ。私も初めて使った術だから、分からなかったのだけど、魂を均等に分けた時、記憶も全て均等に分かれると思っていたのだけど、どうやらそれが均等では無かったらしくてね。一部の記憶は他の魂へとくっついて分かれてしまってたみたい」


「それがさっきの融合で判明したという事ですね」


「うん。さっきの魔道具の製作も、その一部ね。クリスタルの安全装置の記憶に関してもあっちの魂に入ってたから」



「なら本が消えたら一部の記憶も消えてしまうって事ですか? まずくないですか? 本は2つ消えてますよね?」


「そうね、でも無くなったものは仕方ないわ。嘆いて戻ってくる物でも無いし、無ければ他で補うから良いわよ。体験に関しては無理だけど、思考に関しては、生きていればそのうち同じ事考えるでしょうから」


 彼女らしい答えだ。


 とりあえずは銃本体の完成を待つ。早ければ今日、遅くても明日には出来上がるだろう。

 それまでゴーレムの襲撃が来ない事を祈ろう。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


無理やり話を進めるのが苦手で、話の展開は遅いかと思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。


お読み頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!

見てくれる方が増え、嬉しい限りです。

これからも頑張って続けて参りますので、良かったら応援の方宜しくお願い致します。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると励みになります。


栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)

ぜひよろしくお願い致します。


更新時間は通常、朝8時に致します。

8月も頑張ります!

宜しくお願いします!

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